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NoVeiL  作者: 天窪 雪路
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パーティー

ジョーズはよく勉強した。僕が僕と同じように大学新入生の歓迎パーティーに誘われた何人かとジョーズを誘った時だって、いつも決まって勉強中だと答えた。苦しかった大学受験を終え、これからいよいよ青春を謳歌しようというのにどうしてそんなに勉強に身が入るのかと尋ねたことがあったが、ジョーズは「僕らは学生なんだから勉強することが本業だろう?それに、僕は人よりも努力をしなきゃならないタイプだから」と至極当然であり、誠に正しい回答をするのだった。

そんな真面目なジョーズを一度だけパーティーに誘うことができたことがあった。そのパーティーはテニスサークルの勧誘パーティーで、「スポーツの汗を流すことも学生のあるべき姿だよ」という僕たちの誘い文句にその時だけはジョーズもすんなりと納得したのだった。「確かにそれには一理あるね。そうだね、何事も経験だものね」と、まるでいつもの生真面目なジョーズの代わりに歯列矯正器がしゃべりでもしたのかと疑いたくなるほど従順だった。

その種の歓迎パーティーに参加する多くの学生たちの目当ては、第一に食事にありつくことであり、第二には女の子と知り合うことであった。僕らは、ジョーズも含めて、同じ理工学部の学生であり、昔からのこの大学の伝統である「理系学部内では彼女はつくれない」という根拠のないジンクスを、理工学部の授業に参加している学生を見渡す限り、信じざるを得なかった。入学して間もなくジョーズの他に仲の良くなった順という男にとっては特に第二の目的が重要であるようで、毎回何十人もの女の子の連絡先を持ち帰っていた。僕はジョーズに対してどうして勉強するのかと聞いてみたのと同様に、順に対してもそんなに女の子の連絡先を集めてどうするのかと聞いてみた。順は呆れたような顔をして答えた。

「どうするって、俺たちは五体満足、健康な若い男なんだぜ?かわいい女の子たちと一人でも多く知り合いになって楽しみたいっていうのは極めて自然な欲求だろう?」

順はそういうタイプの男だった。それを聞いて、僕は順がやはりそういうタイプの男であることを確認することができ、安心し、そしてなぜだかより彼を信用するようになった。

順は女の子たちと今時の会話をしながら器用に連絡先を聞き出し、ジョーズはまるで新しい酒の披露会にでも招かれたように、次から次へと定量ずつ、様々な酒を試飲して楽しんでいるようだった。

僕は僕で、先輩たちに勧められるがままに酒を飲み、適度に酔っぱらって順やジョーズのそういう行動を見て楽しんでいた。

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