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  作者: のえるん
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「おぉ、スズソウ元気か」車の窓から片腕を出してこちらに向かって叫ばれた。

一気に高校生に戻った感覚になるが片手をヒラヒラさせてアイドルのような笑顔と振りまいている渡辺を周りの人がチラチラ見ている。周囲の視線に恥ずかしくなりながら車の後部座席に失礼しますと言いながら滑り込んだ。

「お久しぶりです。お迎えありがとうございます。」なんて言ってみると。

「おいおいー。スズソウの口からそんな言葉がきけるとはなぁー。」渡辺がしんみりと答えた。

「僕ももう社会人ですら。」スズソウという懐かしい単語に高校時代に引き戻されそうになりながらも辛うじて社会人の自分を保つ。

スズソウとは渡辺がつけた自分のあだ名だ。


鈴木家の長男として生まれた時、両親は考え抜いて命名してくれただろう。しかし毎年発表される「人気お名前ランキング」にここ数年上位に君臨する名前だった。

公立中学校に進学したらソウタという名前が1クラスに3人いた。それくらい人気だった。クラスメイトが自分ではないソウタを呼んで自分が振り向いてしまう典型的なことも何度もあったし、家族で出かけたショッピングモールのフードコートで両親が自分を呼んだら隣にいた男の子が振り向いた。なんてこともあった。

高校に進学したら自分以外にソウタはいなかった、安心したが渡辺は自分にあだ名をつけたのだ。

鈴木蒼汰略してスズソウ。まるで運送会社みたいなあだ名にクラスメイトも面白がっていたが、運送会社みたいと会話している生徒の囁きを聞きつけた渡辺が学内の運送屋として授業資料の運搬、ひいては渡辺の助手としてこき使われるようになっていった。


車がゆっくりと動き出した。

たわいもない話をしながらルームミラー越しに恩師の顔を見る。相変わらずシャープな顔立ちに爽やかさを纏っている。芸能人と言っても遜色ない人を惹きつけてしまう人懐っこい笑顔は昔と変わらずカッコイイ。変わったところといえば、目尻には小ジワがでて、髪の分け目に白髪が見え隠れしていた。それはそうか、蒼汰と渡辺が出会ったのは15年前の話だ。お互いそれなりに歳を重ねているのだ。

「老けただろ?」渡辺がニャッと笑って言った。ずっと見ていたのがバレたのだろうか、蒼汰は慌てて目を逸らす。

「いっ、いえ、、」蒼汰の歯切れの悪い返事に渡辺は笑った。

「おまえ、嘘が下手だなぁ。相変わらず。これでもまだまだモテるんだよ。俺は」

渡辺は自虐的に言ったが蒼汰は納得してしまった。

蒼汰もかつては大人可愛い顔をしている彼の顔に惹かれ、所作に目が離せなくなり、親しげに話しかけられると惹き付けられてしまう。そんな不思議な魅力のある渡辺に蒼汰も虜になった1人だ。

渡辺がブツブツ言っているが、蒼汰はコッソリ窓の外に目を移す。かつて自分が自転車で通学していた道だ。ロータリーを抜け商店街に差し掛かった。実家からはそんなに遠くはないが卒業して以降、ほとんど来なくなっていた。懐かしい蒼汰は高校時代を思い出していた。

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