【今日、僕たち兄弟に妹が出来た】
モニター越しに見ていたアイツの目は、氷の様に冷たかったけれど、実際に合ってみると冷たいと言うより眼自体が大きくて、そのうえ白目がとても白く潤っているせいでそう見えるだけだと分かった。
冷たいと言うよりは、クールと言う表現の方がより当てはまる。
そして体つきも実際合ってみるとチャンと出る所は出ていて女性らしい体型で、華奢と言うよりは棒高跳びや走高跳びの選手の様に締まっていて運動と美的センスの高い、まさにパーフェクトな体系だと思った。
そして既に彼女に敗れたモンタナとブラームそれにお調子者のトーニの3人は、早くもアイツに首ったけみたいだ。
美人でスタイルも良く、しかも強い……んー、そう言えば認めたくはないが、あの3人よりもハンスの方がメロメロのような気がしてならないのは僕の嫉妬心からではないだろう。
かく言う僕自身も、あれだけ嫌っていたのに、こんなに早くアイツを受け入れてしまうなんてまるで魔法に掛けられたみたいで不思議だ。
けれども僕はアイツと争うつもりはない。
何故なら女性に対して全く関心の無かったハンスの心を惹き、人前で笑うこともなく冷徹と言っても過言でもなかった彼の心をたった1日で変えてしまった彼女に敬意さえ感じる。
いま思えば、ハンスの目こそ、冷たく刃物のような目だったと思う。
数年前にハンスは中東のイラクで、同じKSKの上官だったお兄さんを敵であるザリバンの狙撃手によって殺された。
ドイツ政府はイラク戦争に反対の立場を示したから参戦はしていない。
イラク戦争後ザリバンの強力な狙撃手に悩まされていたアメリカは、狙撃の名手として名高かったハンスの兄ローランド・シュナイザーにザリバンの狙撃手の掃討作戦に加わるように依頼し、その作戦中にハンスのお兄さんはザリバンの狙撃手に撃たれて命を失った。
ハンスは、お兄さんのサポートをする通信兵として同行していたから、自分の目の前でお兄さんを殺されたことになる。
おそらくハンスは、その復讐のために危険な任務に出動する機会の多い外人部隊に来たのだと思う。
そう言えば、ハンスのお兄さんを殺害したとされるザリバンの狙撃手は、多国籍軍から死神と呼ばれていたはず……。
もしかしてアイツが?
いやいや、それはない。
だって死神と言うのは、僕がアイツに付けただけの仇名なのだから。
それにアイツが本当に死神であったとしてもthe Deathのほうかも知れないし、現在18歳の彼女がいかに射撃の腕がいいからと言ってもそれは今のこと。
3年前だと彼女はまだ15歳。
そのような子供に、世界レベルの狙撃手を倒すなんてことなど出来るはずもない。
考えるだけ無駄な話。
ちまたではBLと言う分野の小説や漫画が流行っていると言うが、僕はまだその手の小説や漫画を読んだことが無い。
たしかに僕はハンスが好きだ。
そしていつも一緒に居たいと思っている。
触れてみたいし、触れられたいとも思っているし、抱かれてみたい願望も有るにはある。
けれども僕が想像する彼との交わりは、決して男女間に行われる性的な意味を持つ交渉とは違うし、その行為を同性間で行おうとする目的でもない。
ただ僕はハンスの事が好きで、一緒に居たいと思っているに過ぎなく、純粋に彼を独り占めしたいと思っていただけのこと。
まるで幼い子供が大好きなママに対してそう思うように。
でも、いいんだ。
ハンスが喜んでいるのなら。
それで僕も嬉しい。
「こら!ニルス‼起きろ!交代だぞ!」
「……う、うん……もうちょっと……」
「何がもうチョットだ! また人のベッドで寝やがって!」
「だって、温かかったんだもん」
「子供かっ‼ ほらサッサと起きろ!」
今日、僕たち兄弟に妹が出来た。
FIN




