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【気になるアイツ②】

 ヒップのアップの次は、横向きになったバストのアップ。

 中年のエロジジイらしいテシューブの性格が、モロに画像に反映されている。

 ようやく最後に肝心の顔がズームされた。

 キリっとした大きめの瞳には、珍しい青と緑のオッドアイ。

 一見子供っぽくも見えるが、無表情を纏った仮面の奥に見え隠れする神秘的な影を感じる。

 彼女には神が宿っているに違いないと、一目見て思った。

 だがそれは僕たちが助けを乞うような良い神様ではない。

 暗い影を曳いた死の使い。

 死神グリムリーパー

 平穏な外人部隊に、とんでもない奴が現れたと思い、カメラを事務所の物に切り替えた。

 守衛が事務所に何か届けると、事務長のテシューブが電話を取って何かを話していた。

 僕はその画像をスキャンしてAIに解析させると、テシューブがハンスに事務所まで来るように伝えているのが分かった。


 早速自作の監視カメラ追跡システムに「ハンス・シュナイザー中尉」と打ち込むと、1台のカメラが反応しハンスの姿を画面に映し出した。

 部下と一緒に訓練をしていたハンスの元に伝令が走り寄り、用件を伝えるとハンスは走り出してカメラの画角から消えた。

 消えると直ぐに違うカメラがハンスを捉える。

 外廊下を走っているハンス。

 そのカメラの画角から消えると、また次のカメラがハンスを捉え、最後に事務所のカメラの前まで行った。


 嫌な予感がした。

 何故だか分からないが、この女にハンスを奪われそうな不安が僕の胸に過った。

 あるはずもない事。

 何故なら、フランス外人部隊は女性兵士を入退させないから。

 彼女がどんなに優れていても、それを覆すことは出来ないだろう。

 しかしそんな鉄壁な規則さえも神の前では通用しそうにないという不安に襲われた。


 “あの女の前では、きっと人間が作った規則など無意味だ”


「さあ、ミッションLのミーティングを始めるぞ! 担当者は第2会議室に集まってくれ!」

 室内に上司の声が響く。

 ミッションLとは、現在フランス外人部隊で計画中の、特殊部隊設立に向けた情報支援システムに関するもの。

 これは僕が入隊した頃から秘密裏に計画が進められていて、この計画には僕も非常に興味があった。

 秘密計画と言う特異性に好奇心を抱いたのは確かだが、それよりも僕が一番関心を持ったのは、この計画にハンスが絡んでいるのではないかと言う疑いを持ったから。


 なにしろハンスは元ドイツ連邦陸軍特殊作戦師団隷下の旅団級特殊部隊KSKの出身であり、そのハンスは中尉に昇進した今でも中隊長どころか小隊長にもならず分隊長のまま。

 そして彼の指揮する分隊は隊内で「hooligan(ウリガヌ[英語ではフーリガン])分隊」と呼ばれている他の小隊長では手に負えない「ならず者」たちを集めた分隊。

 ならず者たちと言っても、能力が無い訳ではない。

 中には爆発物の専門家も居れば元アメリカンフットボールの有名な選手だったヤツも居るし、キックボクシングの世界チャンピオン候補だったヤツも居る。

 もっとも中には歓楽街の用心棒という本職のならず者も居れば、ロシアやベラルーシ出身というだけで他の部隊からはじかれた者も居る。


 うわべだけを見れば、確かに他の部隊では手に余る「ならず者」の寄せ集めだが、これを手懐けてしまえば元々運動神経などに秀でた奴が多い分隊なので特殊部隊には向いている。

 それにこの「ならず者」たちは意外と思えるほど結束力が強いから、他所の部隊からエリートを寄せ集めるよりもチームとしての育成期間を省けるという強みも持っている。


 そして僕がこのミッションLに参加したのはそう言った興味だけではない。

 実は特殊部隊の創立に当たっては、部隊付きの技術士官も付属するという特典も付いている。

 つまり歩兵のように戦闘には不向きな僕でも、技術士官としてハンスの傍に居ることが出来るチャンスが有るっていう事だ。

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