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080:主人殺し

080:主人殺し

 俺はレオンから数日の休暇を提案された。

 しかしエドマンズさんのところで、嫌というほどの休みを貰っていたので休暇を辞退した。

 断られたレオンは、少し固まってからフッと鼻で笑って「分かったよ、じゃあ仕事に戻って」と言う。

 俺は「はい!」と返事をする。

 そんな俺にレオンは、うんうんと頷いている。



「それにしたって休みが貰えるなら、貰っておいて良かったんじゃないか?」


「いやいや、こんな俺に休んでる暇なんてありませんよ。リキャルドには手も足も出ませんでした……こんなところで休んでいるわけにはいかないんです」


「フェリックスって馬鹿そうに見えるのに、そういうところは真面目だよなぁ」


「ははは、馬鹿そうって何ですかぁ〜」



 俺は門番の仕事を承った。

 この日はミサキちゃんの父親であるアントニーノさんと共に見張りをする事になった。

 そんなアントニーノさんは、俺の事を馬鹿であるとした上で、変なところで真面目だと笑うのだ。

 何とも言えずに、俺は笑って答えるのである。



「それにしても本当に、よく生き残ったよなぁ……俺はフェリックスを誇りに思うよ」


「そんな事ないですよ、たまたま本当に運が良かっただけなんです……あっ! あとはコレのおかげですね、ミサキちゃんが作ってくれたお守りです」



 少し落ち着いたところでアントニーノさんは、俺が本当によく生き残ったと、しみじみに言って来るのである。

 それは俺も感じている。

 運があるという事しか、俺的には言えない。

 あと可能性としてあるのは、ミサキちゃんが作ってくれた手作りのお守りのおかげだろうな。

 このおかげだというとアントニーノさんは、安心した表情を浮かべて「そうか」と呟くのである。


 そんな感じで色々と雑談しながら見張っていると、交代の兵士たちがやって来て俺たちの当番が終わる。

 アントニーノさんは、これから仕事があるみたいで、門の前で解散するのである。

 ここからどうしたものかと、スイッチを入れ直して鍛錬に行くのも良いが、どうにもそういう心の切り替えができない日のような気がする。

 そんな事を考えているとワイツとアイゼルが、手を振りながら走ってやってくる。



「見張りの当番終わったのか?」


「あぁ今、終わったばっかりだよ」


「それにしても良く休みもなく当番に入るよなぁ。そんな事できないから尊敬するわぁ」


「いやいや、別に凄い事じゃないよ。ちょっとリキャルドに負けて色々と感じる事があったんだよ」



 ワイツとアイゼルは、俺が帰還したばかりなのに働くのは凄いと引きながら褒めてくれる。

 俺としてはアントニーノさんに話したように、色々と感じる事があったから働いているだけで、別に自分を凄いとは全くもって思っていない。



「それで2人は、これから飲みにでも行くの? いや、さすがに昼間っから酒盛りは無いか」


「そうだよ、さすがの俺たちだって昼間っから酒盛りするわけ無いだろぉ?」


「さすがのってアイゼルと一緒にすんなよ」



 俺は話を戻して、2人はどこに行くのかと聞いた。

 もしかしたら昼間っから酒盛りをするんじゃないかと思って聞いてみる。

 そうしたらさすがに2人とも酒盛りはしないと答えた。

 アイゼルが「さすがに」と答えたので、ワイツはアイゼルと「一緒にするな」と笑いながら突っ込む。

 じゃあ何をするのかと俺は続けて聞いた。

 するとワイツとアイゼルは互いの顔を見合ってから、俺の方をパッと見る。



「これはフェリックスが居ない時の話なんだけどな、モルフェイ城とサムス城の間に〈ウスタ城〉があるだろ?」


「ウスタ城? あぁレオンさまとミケルさまの弟君で御あせられる《ジェイル》さまが城主の城だったか?」


「そうだ、そのウスタ城に行くんだよ」


「へぇレオンさまに、お使いでも頼まれてるのか?」


「それがよ、フェリックスが居ない間にジェイルさま……重臣の1人に暗殺されたんだよ」



 俺は驚いた。

 ウスタ城の城主であるジェイルは、レオンとミケルの弟でありソロー=ジルキナ家の中ではトップレベルで優秀な人材として有名である。

 俺も知っているくらいだから相当な人物だ。

 しかしそんなジェイルが、重臣の1人に殺されてしまったというのだ。

 それを聞いて俺は「え!?」と声を出すほど驚く。



「ジェイルさまは殺されたのか……それでその重臣っていうのは、どうなったんだ? もちろん捕まえたのちに、打首になったんだよな?」


「それがな、今もウスタ城に家臣たちと籠城してるんだ。その説得や処分を話しに、今から行くところなんだよ」


「それで2人とも、一緒に居たのか」


「2人で行こうと思ってたが……フェリックスも来るか?」


「え? 良いのか?」


「もちろんだ、お前が着いてくるならレオンさまも文句は言わないはずだぞ」



 もう処分されたと思っていたが、今もウスタ城にて籠城していると言われた。

 その人間たちのところに説得と処分を言い渡す為、2人は向かうところだったらしい。

 2人のこれからを理解した俺は納得した。

 するとワイツは俺も着いてくるかと聞いて来た。

 もちろん行きたいので「良いの?」と聞いてみると、2人的には俺ならレオンも納得するとの事だ。

 それなら是非とも着いていく事に決める。


 俺たちは早速、ウスタ城に向かって出発する。

 タールド城からは少し離れているので、馬を使って夕方までに到着するにした。

 こういう時に馬が乗れて良かったと安堵する。

 普通の農民上がりなら馬には乗れないが、俺は運が良く周りに恵まれて馬に乗る機会が多かった。

 それで2人に遅れをとる事なく着いていけた。

 そして想定よりも早くウスタ城に到着するのである。



「レオン=ソロー=ジルキナが家臣《ワイツ=ポゼッティ》と申します! 城主代行に御目通りしていただきたく御取次していただけないでしょうか!」



 ワイツはジェイルを討ち取った上で、現在は城主代行を務めている《メッサー=パウジーニ》に御目通りしたいと大きな声で門に向かって叫ぶのである。

 これは無視されるかと俺たちは思った。

 しかし数分後、俺たちは帰ろうかと門に背を向けたところでギギギッと門の扉が開いた。

 俺たちはバッと門の方を振り返る。

 そこには腰に剣を付けている男が立っていた。



「メッサー=パウジーニの家来をしている者です。我が主人は、皆さまに会うと申しております」


「本当ですか! ありがとうございます」


「どうぞ、こちらへ」


「あの! 今はこういう状況ですので、剣は腰に付けたままでも良いでしょうか?」


「あぁそうですね、それで構いません」



 どうやらメッサーは会ってくれるみたいだ。

 そのままメッサーの家来という男が、スッと城の方に手を向けて中に案内するのである。

 城の中に入る前に、ワイツは状況も状況なので城の中に剣を持って行っても良いかと聞く。

 家来は少し考える動作をする。

 それから状況を鑑みて、仕方ないから剣は持ったままで良いと認めてくれた。

 腰に剣を付けたまま俺たちは城の中に入る。

 通された部屋は、普段から城主が過ごしている部屋であり現在はメッサーの代理の政務室になっていた。

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