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068:頭のネジ

 俺はフラフラしながらルバート将軍と、戦場とは何なのかについて話していた。

 しかし互いに意見が違いすぎて話にならない。

 こうなったら対話は意味をなさない。

 俺は体に鞭打って剣をスッと、ルバート将軍の方に向けるのである。

 そして今世紀最大の作り笑顔をした。



「ここからは剣で決着をつけましょうや」


「えぇ私も同じ事を考えていたよ、君とは根本的に話が合わないみたいだ。部下にできなかったのは残念だが、十二分に楽しめたとも言えるよ」


「そんな事を言えるのは今だけだ、ぶった斬ってやるから覚悟しろや!」



 ここだけは互いに意見が合致した。

 俺は冷や汗ダラダラになりながら、ルバート将軍に向かって剣を構える。

 向こうから仕掛けられたら、どうしても向こうのペースになりかねない。

 そうなったら不利なので俺から動く。

 すると血を多く失っているので動けないかと思った。

 しかし想定外なほど速い速度で、ルバート将軍に斬りかかる事ができたのである。

 どうなっているのかと自分自身も困惑するほどだ。

 ルバート将軍はどうなのかと思っていると、鍔迫り合いになった時に表情が見えた。

 ルバート将軍も驚いていたのだ。



「ど どうしてまだこんなに動ける!? 致命傷とは言えずとも、それなりに傷を与えたはずだぞ!」


「俺も正直に言えば驚いてる。だがよ、これだけはハッキリと分かってる……テメェに負けたまま死ねねぇって事なんだよ!」


「ふざけるな! そんな理屈で納得できるわけないだろうが!」


「戦争ってのはな、どれだけ美化しようが人と人の殺し合いである事は変わりねぇ! それでも戦わなきゃいけないなら、俺は仲間や家族の為に全力で目の前の敵を斬る……理解して貰おうなんて思っちゃいねぇよ! 意見が違うからテメェと俺は敵同士なんだよ!」



 とてつもなく理解できない状況だが、俺はルバート将軍に負けたくないから動けるのだと納得させた。

 しかしその理屈はルバート将軍からしたら理解できずに、俺に向かって叫ぶのである。

 俺はルバート将軍と敵同士だ。

 確かに同じ国の人間だ。

 それでも意見が違うから、こうやって向かい合って敵同士で斬り合っている。

 俺は自分自身が正しいと思うから剣を振るえる。

 そしてルバート将軍の剣も受けて立つ。


 俺は鍔迫り合いからルバート将軍を後ろに押す。

 理解できない力に負けるのは絶対に嫌だと、ルバート将軍はグッと柄を握りしめる。

 上に弾かれた剣をピタッと空中で止めた。

 そのまま俺に向かって一気に剣を振り下ろす。

 ルバート将軍にタイミングを合わせて、俺も下から剣を振り上げる。

 2本の剣は中間で衝突する。

 その瞬間、バチッと火花が出るのである。

 勢いよくぶつかった事で、俺とルバート将軍の剣はまた弾けてしまう。


 しかし俺はグッと腕に力を込め、剣を引き戻すとルバート将軍に向かって切りつける。

 これにルバート将軍は防戦一方となる。

 体勢が不利なまま攻められているので、ルバート将軍は手を返せずにいる。

 ここをチャンスと見た俺は手数を増やす。

 不思議と、いつもより頭が冴えているように感じる。

 さっきまで余裕を醸し出していたルバート将軍の顔が青ざめていっている。

 これじゃあ時間の問題だとルバート将軍は悟る。

 そして覚悟を決め、俺の懐に飛び込んできた。



「つ 捕まえたぞ! これじゃあ剣は振れないだろ、君の攻撃は封じさせて貰ったぞ」


「これで俺を封じた? それって何かの冗談か?」


「なに? この状況から何ができる!」



 ルバート将軍は俺の胸に肩を付け、剣を持ちながら俺の両腕を脇に抱える。

 これにより攻撃を封じた事になる。

 どうだ!と言わんばかりに強がりの笑いをする。

 しかし俺としては、こんなので封じたと思われるのは癪だと不敵に口角を上げた。

 そしてスーッと息を吸いながら顔を上げる。

 そのまま一気にルバート将軍の後頭部に、ドンッと頭突きをカマしたのである。

 喰らったルバート将軍は「うっ!?」と蹌踉めきながら俺から離れる。

 俺は不思議と笑いが込み上げて来た。



「ははははは!!!!! これを教えてくれたのは、さっきのアンタだろ? これを予知できていないなんて、テメェは本当に追い詰められてたんだなぁ」



 俺は下を向きながら笑っていたが、一気に顔を上げ髪の毛をかきあげながらルバート将軍の方を見る。

 額からはツーッと額が切れて血が流れている。

 額が切れた事に気がついた俺は、片手で顔を覆うようにして血が出ているのを確認した。

 しかし掌には既に、さっきの胸を斬られた時の血が付いていたので、顔にベットリと血がついてしまった。

 この血まみれなのに合わせて笑みが加わる。

 すると最強の化け物が誕生した。



「化け物が……君は私の事を化け物だと言っていたが、今は明らかに君の方が化け物に見えるぞ」


「そうかぁ? 別に俺は変わっていないと思うんだけどなぁ……まぁ確かに今のテメェは普通の人間に見える。安心したなぁ、化け物なら勝てねぇけど、人間なら俺にも勝ち目はある」


「ふざけるな、君がどれだけ化け物にみたいになろうが私の勝ちだけは変わらない」


「減らず口は変わらないみたいだなぁ……じゃあ証明して貰おうか!」



 ルバート将軍は俺の事を化け物であると称した。

 こんな事を言われても自分からは見れないので、特にそう言った感じには思えなかった。

 だがこれだけは言える。

 今のルバート将軍は、ただの人間に見える。

 安心した。

 化け物なら勝ち目は無いが、ただの人間だというのならば勝ち目は大いにある。

 これをルバート将軍は認めない。


 俺は認めないルバート将軍に向かって、一気に斬りかかって行く。

 やはりさっきよりも遥かに体が動く。

 この状態を何と言うのかは分からないが、動くのだから別に問題は無い。

 最初の一撃目を、ルバート将軍は受け止めた。

 しかし無理だと思ったのか、それとも勝手に体が反応してしまったのか。

 分からないが重心を後ろに変えて、ただ防ぐという方向にシフトして来た。



「どうした! さっきまでの威勢は!」


「少し調子が良いからって図に乗るな!」


「図には乗ってないが、調子には乗ってるぞ!」



 ひたすらに俺は攻撃の手を緩めない。

 ルバート将軍は冷や汗を垂らしながら、俺の攻撃を何とかギリギリで防いでいる。

 俺は手数が減った事を指摘する。

 しかし指摘されたルバート将軍は、図に乗るなと少しだけ攻撃を強める。

 それだけイラッとしたのだ。

 ルバート将軍に言われた事に対し、俺は図に乗っていないが調子には乗っていると笑みを溢しながら言う。

 またまたルバート将軍はイラッとする。


 それでも俺の優勢は覆らない。

 狭く人がひしめき合っている、この戦場に俺とルバート将軍は上手く避けながら戦っている。

 どれだけ押していても俺にも体力の限界がある。

 仕留め切れないと思って、俺は優位に立っているうちにピタッと動きを止めて息を整える。

 敵なら普通は、こんな好機を見逃さない。

 しかしルバート将軍は、俺の動きをジッと見て動こうとしていないのである。

 ルバート将軍の動きに俺は笑えてくる。

 まさかこんなにも小者だったなんて。

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