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054:ノール島

 ガルマと和睦をしたクレインは、セスタンリ州を後にし自領であるネストラ州へと帰城した。

 そんなクレインに訃報が届いたのは、帰城してから3日が経った時だった。

 顔を真っ青にした伝令兵が、クレインのところまでやってくるのである。



「報告します。ルテラキさまが……お討死しました」


「なに? ルテラキが死んだだと?」



 ルテラキの討死を聞いたクレインは、信じられなくて目を細めて聞き間違いでは無いかと確認をする。

 これに伝令兵は静かに、コクッと頷いたのである。

 死んだというのを理解したクレインは、椅子から立ち上がると椅子の周りをウロウロしている。

 それだけ困惑しているのだ。



「どうしてルテラキが死んだ! どれだけレゴラスが強くても、ルテラキは武功を重ねた名将だぞ!」


「それがガルマ軍、ヘイデン軍が加勢して来た事により包囲され戦線が崩壊したと……最終的にはレゴラスの子であるヘイデンに討ち取られたと」


「もう引き返せないところまで足を突っ込んだみたいだぞ……レゴラスを討伐する!」



 クレインは座っていた椅子を蹴り飛ばし、ルテラキは武功を重ねた名将なんだと死を受け入れられない。

 伝令兵は包囲されて討たれたと伝えた。

 これにクレインは、もう引き下がれないところまでレゴラスが足を突っ込んだとブチギレている。

 そしてレゴラス討伐に、クレインは本腰を入れる。


 クレインはネストラ州とモーマ州から兵を集めた。

 その数2万余であり、クレインはネストラ州を9月21日出陣した。

 クレイン軍が目指す場所は、レゴラスが自軍の拠点を置こうとしているノール島だ。


 クレイン軍はネストラ州の港を500隻で出港した。

 そしてその日はノール湾の沖合で停泊する事になるのだが、クレインが重臣たちを船に呼ぶ。

 明日の上陸作戦についての軍議を開く為だ。

 もう失敗する事ができない。



「明日の早朝は、ここからノール島に上陸します。そしてスティポリ殿とモリッツ殿が先陣を切り、ノール城を見下ろせる、この山に本陣を置きます」


「うむ、問題ないだろう」



 キチンと重臣たちに、今回の作戦について頭に叩き込ませる。

 伊達に強いわけでは無い。

 しっかりと確認作業を怠らないのである。

 そして翌日22日早朝、昨日の軍議通りにノール島への上陸に成功した。

 本陣は山の上に登り陣を張る。

 スティポリとモリッツの2名が、先頭で陣頭指揮を取るのである。



「広く布陣し、ノール城の兵士を逃すな! そして直ちに陸路を使って城の水の手を止めろ!」



 クレインはノール城の兵士を逃さないように、大量の兵士たちを幅広く布陣させた。

 続けて陸路を使って、ノール城に入る飲み水の水源を断つように指示を出した。

 これにより籠城したくとも持たないようにする。

 クレイン軍が先手を打った事で、勝率がグンッとクレイン軍の方に傾くのである。


 クレイン軍が布陣した事を知った翌日に、レゴラス軍は準備を整える。

 そして24日の早朝に居城を出発し、水軍の拠点となっているホックレ城にレゴラスは嫡男アルヴィスと共に着陣した。

 レゴラス・アルヴィス率いる軍には、ガルマの軍勢とプトレー州の国衆が加わった。

 さらに水軍を持っているヘイデンも合流する。



「父上、ただいま到着いたしました!」


「おぉヘイデン、良くぞ来てくれた」


「はは! 父上に言われた通り、我が水軍を130隻を連れて参りました!」


「そうか、130隻か……」


「どうかいたしましたか?」



 ヘイデンはレゴラスに言われた通り、ノール島に渡る為の軍船を130隻も引き連れて来た。

 しかしクレイン軍の500隻に比べれば、とてつもなく少ない数である。

 落ち込んでいる父親にヘイデンは不思議がる。

 どうしたのかと聞いた。

 向こうの数が500隻もあると聞いて、ヘイデンは驚き「そうですか……」と言葉を失う。

 するとヘイデンは下を向きながら笑い出した。



「ただいま、ディベイラ水軍に援軍を求めているところにございます!」


「な なんと!? あのディベイラ水軍に援軍を求めておるのか! なんと策士よ!」



 ディベイラ水軍とは、ノール島より西に数キロ行ったところにある小さな島の集まりを縄張りとしている、いわゆるところの海賊である。

 そこに援軍を頼んでいるというのだ。

 かなり強力な水軍なので、援軍として迎えられれば凄まじい戦力となるのは必須。

 ヘイデンの計らいにレゴラスは大喜びする。



「ディベイラ水軍の到着まで、しばしお辛抱を!」


「おぉ! 待とうでは無いか!」



 ディベイラ水軍とは交渉中なので、到着まで待って欲しいとヘイデンは頼む。

 もちろん来ると信じているのでレゴラスは承認した。

 いつ来るだろうとレゴラスは楽しみにする。

 しかしただ待っているだけでは、ノール城が潰れかねないので26日にレゴラスは国衆の1人を呼んだ。



「お呼びでしょうか?」


「このままではノール城が陥落する可能性もある、そこで貴殿には60隻の船を与える。それでノール城に援軍として向かって欲しい」


「はは! 承知いたしました!」



 国衆の1人に60隻を渡し、援軍として向かわせた。

 この日の夜にレゴラスは、ディベイラ水軍との交渉を行なっているヘイデンを呼んだ。



「到着の兆しが無いが、どれくらいで到着するのだ?」


「それが未だに不明でありまして……」


「そんな事があるか! ディベイラ水軍に急がせるように伝える使者を送れ!」



 レゴラスはディベイラ水軍に催促する使者を送るようヘイデンに指示を出した。

 この事から戦いを焦っているのが分かる。

 そして翌日の27日になると、ノール城の堀が埋められ水源が立たれてしまった。

 これにレゴラスの焦りは頂点に登る。



「これ以上は待てん! 我らの水軍だけで、ノール城へと出陣する!」


「父上、お待ち下さい! このまま戦っても勝機はありません!」


「その前に日柄が良くありません! もしもの事がありますし、明日まで待ちましょう!」



 レゴラスは自分たちだけで出陣しようと、ヘイデンたちに指示を出す。

 これをヘイデンやアルヴィスが必死に止める。

 今のまま戦っても勝ち目は薄い。

 今日は吉日で無いので、どうにか明日まで待とうと必死になって説得する。

 全身全霊の説得にレゴラスは納得して踏みとどまる。


 しかし夜が明け、レゴラスは痺れを切らし全軍でホックレ城を出発し港へと行軍した。

 ノール島へと向かう為の準備を行う。

 するとズッコケながらレゴラスのところにやってくる伝令兵がいた。



「ほ 報告っ! ディベイラ水軍から300隻の援軍がやって来ました!」


「なんと! 遂にやって来たのか……渡航の時間を、今から18の刻に変更する!」



 遂にディベイラ水軍の援軍が到着した。

 その数なんと300隻にのぼる。

 これを受けてレゴラスは、今から渡航しようとしていたが、時間を夕方6時に変更するのである。

 夕方6時に変更となれば、それまでに作戦の復習する事ができる。

 ギリギリになって追い風がやって来た。

 これは勝てるかもしれないとレゴラスたちは思った。


 しかし渡航する2時間前に、ノール湾に激しい風と豪雨が降り始めたのである。

 これにレゴラス軍の兵士たちは愕然とした。

 やはり自分たちには運が無いのかと。

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