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046:パルヒ教会の会盟

 パルヒ教会にディルス尊極大名・ローランド尊極大名・アンヘリノ尊極大名の顔役が3人集まっていた。

 この3人を集めたのは、グスタフ家の家老であるマーロンだ。

 かなり色んなところに駆け回って集めた。

 何の為に集めたのか。

 それはここにサッストンズ帝国で1番の三国同盟を締結させる為である。



「我らが、この同盟で求めるものは明白であろう?」


「ディルス殿の言う通りだ。俺とディルス殿は、共同でキルトッサのエクセルムを討伐する事である」



 ディルス尊極大名とアンヘリノ尊極大名が、この同盟に求めているものは共同戦線である。

 去年から始まったヘブラン川の戦いでディルス尊極大名は、エクセルム尊極大名と小競り合いを始め、アンヘリノ尊極大名も少し前からエクセルム尊極大名と小競り合いを始めていた。

 そこで互いに兵士を出し合って、エクセルム尊極大名の討伐を目指すと言うものだ。



「私はエクセルムとは関係は無いが、これからボロック州に焦点を当てて戦いたい。しかし貴殿らは、あまりにも脅威となり得る。そこで相互不可侵協定を結びたいと言うのが、我らの求めるものだ」



 エクセルム尊極大名と戦っていないローランド尊極大名は、ボロック州を攻略する為に侵攻したいが、背後にいる2つの州が、あまりにも危険するのだ。

 だからこそ気にせずに戦いたいので、この2つの国と同盟関係になりたい。


 これらの意見が互いに合致した為、ここに集まって同盟の最終段階へと移行しているのだ。

 ここでは同盟を前提として、細かいところに関する条件提示などを行なうのである。

 そして全ての条件が出揃った。



「それでは皆さま、本日の同盟にて攻守軍事協定・相互不可侵協定・領土協定・婚姻協定の4つの条件を持って同盟締結とさせていただきます」



 司会進行を務めているマーロンは、全ての条件を提示し納得したところで同盟締結を宣言する。

 宣言されたところで、3人全員が立ち上がる。

 そして三国同盟の締結を祝して拍手をしてから、3人とも握手をして礼儀を尽くす。

 マーロンも安心したような表情をしていて、これにどれだけの人生を賭けて来たのかが分かる。


 この同盟はサッストンズ帝国中に激震が走る。

 東国の情勢が大きく変わったというのに合わせ、3つの大国が手を取り合ったのは予想もできない事だった。

 これには周辺諸国が、身構える事態となったのだ。


 この同盟で三国が得た利益として、まずディルス尊極大名が得たものは、ホールトング州の覇権を得る為にエクセルム尊極大名と戦うが手強い。

 そこでアンヘリノ尊極大名と交互に兵を出し合いながら、場合によってはローランド尊極大名からも援軍を頼めるという利益を得た。

 しかしそれに対し不利益な点としては、海岸沿いの国を支配しなければ直接海に出れず貿易ができない。


 アンヘリノ尊極大名が得た利益は、ディルス尊極大名と共通の敵を持ち共同で戦うという事で背後への憂いが全て取り除かれたのである。

 あとは東国北部の支配権を推し進める事ができる。

 これらに対し不利益な点としては、帝都に上洛する道をボドハント州とラセントレイス州に阻まれている事であるが、情報によれば上洛する意思は無いとの事だ。


 ローランド尊極大名が得た利益は、新たに支配力を高めようとしていたザラン州への支配体制を確立する事ができる点である。

 あとは戦略面として戦う相手が、ソロー=ジルキナ家のみに絞る事ができた。

 ディルス尊極大名は東側の海への進出が事実上不可能であり、アンヘリノ尊極大名が上洛を計画しても陸路では難しい事を考慮すると、この同盟で最も得をしたのはローランド尊極大名と言えるだろう。



「マーロンっ! 此度は良くぞ、やってくれた! やはりお主は、この家で1番の家来だ!」


「いえいえ私にできるのは、ここまでです……これからは下の者にも活躍して貰わなければなりません」


「謙遜をするな、この活躍に見合う褒美を渡す!」



 ローランド尊極大名は、マーロンを大いに褒める。

 話をまとめたのはマーロンだからだ。

 この活躍によりマーロンは大量の金銀や土地、そして家老という地位に復帰する事なった。

 しかしこの大役をやり切った事に満足したのか、マーロンは半年後に病気で息を引き取った。


 サッストンズ帝国中がピリつく中、2月と3月は冬季の為に力を内に向ける時期だ。

 ソロー=ジルキナ家も、この2ヶ月は戦いが無い。

 しかし4月を迎えた途端、ポロック州内で動きを見せる人間たちがいた。

 それはギルツ=ジルキナ家である。



「さっさとレオンを殺すべきだ! ボドハント州との戦いに勝って、レオン共は調子に乗っている!」


「マインケさまの言う通りです! このまま勢いに乗せれば、奴らとは言えども手がつけられなくなる!」



 マインケは、レオンを殺すべきだと家臣団に話す。

 このマインケの意見にラシャドは、その通りであると同意した上で勢いに乗るのは目に見えているとも付け足し、討伐の重要性を問うのである。



「マインケさま! ここは私に任せていただけないでしょうか!」


「イタコス、お主が志願するとは珍しいな」


「は! ヒビオンが討ち死にしてから、次は私が行かなければいけないと思っていました! 必ずや、レオン軍を打ち破って見せます!」



 マインケの家来であるイタコスが、自分に総大将を任せて欲しいと志願した。

 普段は影が薄いイタコスが自ら志願した事に、マインケは珍しいと驚くのである。

 志願したのには理由があった。

 ヒビオンが前の戦いで討ち死した時、次は自分が行かなければいけないと思ったらしい。

 それを聞いたマインケは小さく何度も頷いている。

 イタコスの覚悟に、ジーンッときているのだ。



「そこまで意気込みがあるのならば任せよう! しかし向こうは弱小の家柄とは言えども、今は勢いに乗っている。危険だと思ったら戦線を離脱しろ!」


「そんな事が起きない事を願うばかりですが、もしもの時は栄誉ある死を望みたいところです」


「ダメだ! この状況でイタコスも居なくなれば、このギルツ=ジルキナ家は破滅に向かってしまう。何があっても絶対に生きて帰って来い!」


「マインケさま……承知いたしました! 必ずや、生きて帰って来ます。その時は是非とも私と、盃を交わしていただけないでしょうか」


「当たり前だ、勝利の美酒で酔おうでは無いか! 大いに期待しているからな、頑張って来い!」



 マインケはイタコスに、もしも危険だと思ったら戦線を離脱するように伝える。

 しかしイタコスの覚悟では、自分の命すらも投げ出して戦うつもりだと返した。

 ヒビオンを亡くした上に、イタコスも失えばギルツ=ジルキナ家としての戦力が大いに下がってしまう。

 その為、必ず帰ってくるように説得する。

 これにはイタコスも生きて帰る事を約束した。


 この日から2日後にイタコスは1200人の兵士を連れ、レオンの居城であるモルフェイ城に向かって行軍を開始するのである。

 それを知らされたレオンは、アルバートを総大将に900の兵士を向かわせた。

 そしてモルフェイ城とタールド城の中間地点で、今年初めての戦争が始まる。

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