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033:足掛かり

 ボドハント州のローランド尊極大名は、ディルス尊極大名がホールトング州を平定した事を聞いて、自分も動き出そうと考えたのである。

 攻めるのは、もちろんレオンのボロック州だ。

 その前にボドハント州を離反したヒリスを討ち取ろうと考えている。

 まずはザラン州にあるヒリスの家臣の城を攻め落とす事が決定したのである。

 今日は、その作戦の総大将が呼ばれている。



「ローランドさま、この度は総大将に(わたくし)を選んでいただき恐悦至極にございます」


「今回の戦いは、お主が向いていると思ってな。必ず成功すると信じているぞ」


「ローランドさまに、そこまで言って貰えるなんて光栄の極み……ローランドさまの期待に応えるよう、作戦を絶対に成功させて見せます!」



 今回の作戦に選ばれたのは、シトロン家の分家でありグスタフ家の重臣の1人である《ワレン=サッセン=シトロン》という人物だ。

 ワレンはローランド尊極大名からの名指しの指示なので、自分を選んで貰った事を感謝する。

 それだけじゃなく成功する事を信じていると言われ、とてつもなく嬉しくなる。

 なんせローランド尊極大名は、ディルス尊極大名に匹敵するだけの力を持っている人間だからだ。


 頭を下げたワレンは部屋を後にする。

 絶対に成功してやるという気持ちがあるからなのか、早歩きで外に出てきた。

 ワレンに着いてきている配下の人間たちは、どうして早歩きで出て来たのかを疑問に思う。

 険しい顔をしていないので、内容は説教では無く良い事だったのだろうと思った。

 じゃあ何で早歩きで来たのかと困惑した。

 何なんだろうと思っていると、ワレンの方から話す。



「ローランドさまが、わざわざ俺を名指しで総大将に選んで貰った! これは我らが宗家のシトロン家を超えるチャンスであり、さらに重臣の中でも筆頭になる事が可能だと俺は思ってる!」


「それは素晴らしいですね! そんなにも重要な作戦なのでしたら、5人集を動員しますか?」


「あぁ絶対に失敗するわけにはいかないからな」



 ワレンが嬉しそうに話しているのを聞いた家臣も、分家として日の目を見るのが少ないサッセン=シトロン家の人間からしたら、これ以上ないチャンスである。

 このチャンスを確実なものにする為に、家来はワレンに上奏する。

 何を上奏したのかというと、ワレンの重臣は周りから5人集と呼ばれるだけの武力を持っているので、その5人集を動員するのはどうかという事だ。

 この申し出をワレンは了承した。



「このチャンスを絶対に逃すわけにはいかん……直ぐに5人集に召集令を出せ! 直ぐにでもボドハント州の裏切り者を討ち取ってやろうぞ!」



 ワレンは直ぐに5人集を召集し、今回の作戦について全てを伝えるのである。

 そして出立の準備を進め、ディルス尊極大名がホールトング州を平定してから10日後に行動を起こす。

 ワレン軍はヒリスの重臣の1人であるユーリッヒが城主のチュプライ城を攻撃した。



「誰一人として逃すな! この者たちは裏切り者だ!」


「裏切り者には天誅を下せ!」



 ヒリスたちはボドハント州を裏切った者たちだから、天誅を下してやれと指揮官たちは言うのだ。

 それに反応するように兵士たちも、5人集を筆頭に鬼人と化してユーリッヒ軍を掃討し始める。

 戦いは2日にして決着がつく。

 現場を目にした人間は、その惨劇さに言葉を失う。

 まさしく地獄絵図を体現したように、血の池ができたりと、あまりにも酷いものだった。


 チュプライ城を落としたワレン軍は、ヒリスの居城・ロシャー城の隣にあるトラフスク郷の海岸に砂の丘がある事を調べて知っていた。

 ここに砦を作ってロシャー=ギュアボルク家を滅ぼそうと決まったのである。

 ワレン軍は1000人を動員し砦の建設を始めた。

 ヒリスの目の前で、トラフスク砦の建設が行なわれていて焦りを感じる。



「ワレンの野郎ぉ……」


「ヒリスさま、こんな事を許しても良いんですか! ユーリッヒ殿を殺した相手が、ノコノコ目の前で砦を作っているんですよ!」


「それは俺も同じ事を思ってる! だけどな、こっちは300人に対して向こうは1000人だぞ!? このまま戦っても俺たちに、一切の勝算は無い!」



 ヒリスは怒りを発散させる為、白の柱を拳を握った側面でドンッと殴る。

 他の家来たちもイライラしている。

 それもそうだろう。

 自分の主人を馬鹿にしているかつ、兄貴分のような重臣のユーリッヒを殺されているのだから。

 今直ぐに殺してやろうと家来は言う。

 しかし戦力差がありすぎるのだ。



「そうなれば、俺たちが取るべき手段は1つか……直ちに早馬をレオンさまのところに向かわせろ!」


「そ それはつまり!」


「あぁレオンさまに援軍を頼む……援軍が来ればワレンなんぞは敵にならん!」



 ヒリスは自分たちで戦えず、取る手段が無いという事になったのならば、取る手段は1つしかないという。

 その手段とはレオンのところに早馬で、ワレン軍と戦うだけの援軍を求める事である。

 ここにレオンの援軍が来ればワレン軍なんて敵では無いと確信している。

 ヒリスの指示通りに早馬がモルフェイ城に送られた。


 モルフェイ城に早馬が到着したのは、俺とワイツとアイゼルが昼食をとってから自主練をしている時だった。

 門に焦っている兵士がやってくるのを発見する。

 アレは何かあったと俺たちは思って、自主練を中断して城の方に戻る。



「何かあったのかな? あの家紋、どこかで見た事がああるような感じがするんだよなぁ……」


「アレはロシャー=ギュアボルク家の家紋だよ。つまりヒリス殿からの早馬だろうな」


「ヒリス殿? 確かヒリスさまの重臣の1人、ユーリッヒさまが討たれたばかりだったはず……じゃあそれに関係してるのかな?」


「まぁ内容の予測は難しいけど、きっとボドハント州との事が関係してるはずだ」



 俺は早馬に付いている家紋が目に入り、どこかで見た事があるように感じた。

 するとワイツが説明をしてくれる。

 家紋の持ち主はロシャー=ギュアボルク家だと。

 それを聞いたアイゼルは、数日前にユーリッヒが討たれたばかりである事を思い出す。

 なら、それに関係しているのかという答えを出した。

 ワイツも内容を予測するのは難しいが、きっとボドハント州とほ小競り合いが関係していると言うのだ。


 入り口で張っていると、早馬に乗っていた兵士が険しい顔をしながら城の外に出る。

 俺たちは無言で顔を見合う。

 するとそこに「ここで何をしてるんだ?」とルシエンが声をかけて来た。

 いきなり声をかけられた俺たちはドキッとする。

 別に盗み聞きをしていたわけではないので、ピシッとした良い姿勢で「何かありましたか?」と聞く。



「お前たち、まだ幹部じゃないのに危機察知能力がズバ抜けてるな……まぁ隠していても仕方ないしな、話してやっても良いぞ。だが周りに話す事はダメだぞ?」



 俺たちの危機察知能力に、ルシエンは呆れに近い驚きで困り汗を出しながら「はぁ……」と溜息を吐く。

 諦めたルシエンは俺たちだから良いかと言って、他に頼んしない事を条件に教えてくれたのである。

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