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029:早馬の苦労

 オズボルドからの会見の話を、レオンは即決で了承する事を決めたのである。

 まだ義父であるオズボルドと会った事が無いというのも関係していたんじゃ無いだろうか。

 心なしか、レオンは楽しみにしているみたいだ。

 きっとコスタス前代官とは、実際の親子ながらに関係が薄くて父親というのに憧れているんじゃないか。

 とりあえず会見を楽しみにしよう。



「ん? 使者は返したんだよな?」


「はい、レオンさまが帰って来る時が分からないので、待たせるのも可哀想だと思いまして」


「そうか、今直ぐに返事をした方が良さそうだが。どこかに早馬として行ってくれる人間はいないか……」



 わざとらしい感じでレオンもルシエンも、俺の方をチラチラと見て来る。

 これを察せられないほど、俺は鈍感では無い。

 溜息を吐きたいところだが、そこはグッと耐えてニカッと満面の作り笑いをする。



「わ 私が行きますよ」


「そうか! 緊急だから今から急いで行ってくれ」


「わ 分かりましたぁ……」



 レオンは俺の両肩に手を、ポンッと置いて「まぁファイトだ!」と言って来る。

 ハハハッと作り笑いをするしか無い。

 今から行ったら、確実に帰って来る頃には真っ暗だ。

 明日も早くから練兵があるから、今日は早くに寝たかったが仕方ない。

 少しでもレオンの評価を上げる為だ。



「これは地図だ、あと何かあった時の為の金もレオンさまが支給して下さった」


「あ ありがとうございます……」



 俺が馬に乗って向かおうとしたところに、ルシエンがやって来て緊急用資金と地図に、会見の日時の要望を書いた紙を俺に渡して来た。

 それを受け取った俺は、何とも言えないような作り笑いをして出発しようとする。

 俺の気持ちが分かっているだろうルシエンは、プッと笑い出しそうになっている。

 突っ込みたいが、そんな事をしてる暇は無い。

 ここで遅れれば帰りも遅れてしまう。

 とにかく俺は馬を走らせる。


 地図を確認しながら急いで、グルトレール州の〈ネールヴィ城〉に向かう。

 モルフェイ城からネールヴィ城は、どれだけ馬を全力で走らせても片道4時間半もかかる。

 馬に跨ったままでは、股間が擦れて痛くなる。

 しかし休むわけにもいかないので、ひたすらに馬を走らせて3時手前くらいで到着した。



「何者だ! 身元と用件を話せ!」


「ボロック州、ソロー=ジルキナ家が当主《レオン=ソロー=ジルキナ》の早馬で来た者です! オズボルドさまと、レオンさまの会見に関しての返答で参りました」


「そうか! オズボルドさまに、確認をとって来る故、ここでしばし待たれよ!」



 身分と用件を門番に伝える。

 それを聞いた門番は、オズボルド尊極大名に確認をとって来るから待つように言われた。

 その指示通りに俺は門の前で待機する。

 5分後くらいに門番が帰って来た。



「オズボルドさまは、御目通りを許可なさった」



 門番はオズボルド尊極大名が、御目通りを許可したから中に入るように伝えてくれた。

 その指示通りに俺は門番の後ろを着いていく。

 オズボルド尊極大名の政務室の扉が開き、俺は部屋に入る前にペコッと頭を下げてから部屋に入る。

 そしてオズボルド尊極大名の前で、またペコッと頭を下げて挨拶をする。



「モンシュ教会での会見の返答を伝えに来たんだな?」


「はい! レオンさまは、直ちにオズボルドさまに伝えた方が良いという事でしたので、このように返事をお伝えに参りました!」


「そうか、ならば伝えてみよ」


「レオンさまからの書面を読ませて頂きます」



 俺はレオンが書いた返事の書面を開く。

 そしてその書面を読む。

 書面にはモンシュ教会での会見を容認し、その日時をレオンは3月20日の昼からを要求した。



「以上がレオンさまからの伝言となります」


「快諾してくれて良かったよ。聞いているとは思うが、まだワシはレオン君に会っていない……楽しみだと本人に伝えておいてくれ」


「承知しました、それでは失礼します」



 レオン同様にオズボルド尊極大名も会うのを楽しみにしていると、俺に伝言として伝えるように言った。

 それを承った俺は深々と頭を下げ、退室しようと扉に向かって歩き出す。

 するとオズボルド尊極大名は「ちょっと待った!」と言って呼び止めるのである。

 いきなり呼び止められた俺は「はい?」と振り返る。

 ニッと口角を上げて俺に、ある事を聞いて来る。



「君の目から見てレオン君という男は、どんな人物なのかな? それを聞かせてくれないか?」


「れ レオンさまですか? そうですねぇ、私の目から見ての感想ですが……自分の夢の為ならば、その反対勢力のことごとくを排除する覇者としての一面があり、外から見ている人間は恐ろしく感じるでしょう。しかしレオンさまを近くで見ている私たちからしたら、こんなにも魅力的な人はいないと思います。上手く言葉にできませんが、レオンさまはそんな人です」


「確かに曖昧な答えではある……だが! レオン君に会うには十分な答えだ」



 俺なりのレオンに対する気持ちを、オズボルド尊極大名に伝えたのである。

 言葉にするには、あまりにも曖昧なものだ。

 しかしその答えを聞いたオズボルド尊極大名は、満足したように笑みを溢し仕事を再開した。

 再度ペコッと頭を下げてから部屋を外に出る。

 そして馬を門前に繋がせて貰っていたので、縄を解いてから馬に跨り「では!」と言って出発する。

 今から帰るとなると、真っ暗になって移動する事が途中で困難になるだろう。

 そう思った俺は、ネールヴィ城の城下で宿泊してから明日の朝イチで帰る事にした。


 宿泊するのは決定したので、宿屋を予約してから城下に出ようと考えた。

 城下で遊ぶ為の金は懐から出すが、宿泊費だけは緊急資金として渡されていた金を使う。

 それでも出来る限り安い宿屋に泊まる。

 もう色々と渡り歩いているので、ボロボロで安いところには慣れているのである。

 部屋に荷物を置いた俺は城下に繰り出す。



「へぇボロック州とも雰囲気が違うなぁ。さすがは元商人が収める国だ……商人の行き来が激しい」



 そうグルトレール州の尊極大名であるオズボルドは、元々が騎士というわけでは無い。

 そして出身も帝都である。

 オズボルド尊極大名は、一介の商人からグルトレール州を乗っ取って大名にまで成り上がったのだ。

 だからこそレオンの事を目にかけてくれている。

 そんな人間の国な為、城下町には多くの店や商人が行き来している素晴らしいところだ。


 俺は色んな店を回るチャンスだと、色々と屋台の食事を食べたりにして満喫する。

 大分な腹一杯になったところで、宿屋に帰って明日に備えようと歩き始めた。

 すると路地裏に異変を感じて足を止める。

 そこには10歳くらいの男の子が、1人で蹲っていたのである。

 周りをキョロキョロして親が居ないかを確認した。

 しかしその場に親はいないみたいだ。

 前世では孤児が、路地裏にいるのを見た事は無い。

 だが、乱世の世界なら仕方ないだろう、



「さぁ関係ないから帰るか。偽善だけで人を救えるほど世界は優しく無いわな」



 俺は立ち去ろうとした。

 良い事をしようと1人だけ救っても、子供全体を救えるわけでは無い。

 だから他の人に任せようとする。

 しかしそれはそんなに強い人間では無かったようだ。

 俺は少年の前に戻り「大丈夫?」と声をかけた。

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