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018:除名と降格

 俺は部屋の前で口論をしているレオンと、ライアンの会話をギリギリまで盗み聞きをしていた。

 確かにライアンの言う事も理解できる。

 このままギルツ=ジルキナ家という宗家と、本格的に戦いとなったら傀儡となっているボロック州の大名であるフレネヴィ家が参加して来るはずだ。

 そうなったら、とてつもなく大変な戦いになる。


 そうならない為に、今のうちから戦いを避けるべく動くべきだとライアンは上奏する。

 真っ当な上奏に、レオンは真っ向から否定した。

 それはレオンが目指している野望の為には、このソロー=ジルキナ家の当主となり、傀儡となっているフレネヴィ家を排除する必要が。



「本当によろしいのですか? このままでは、御家騒動という枠だけでは済まなくなりますよ?」


「結構だ、それこそ俺の望むところ。家臣のお前たちにも苦労をかけるかもしれないが……俺は俺自身に、嘘を吐いて生きていくわけにはいかない」


「分かりました、レオンさまのお気持ちは変わらないようで……それでは私を家老から外しては貰えないでしょうか? こんな気持ちのまま、レオンさまにお仕いする事は失礼に当たりますので」



 このままではお家騒動という枠に収まらなくなり、激しい戦いが起こってしまうというのだ。

 それこそがレオンの求めるものであり、家臣に苦労をかけているという気持ちはある。

 それでも要求を引き下げないのは、レオンの自分自身に対する性分が関係している。


 自分が上奏してもレオンは変わらないと思ったライアンは、フッと笑ってから頭を下げた。

 気持ちが変わらないならば、自分を家老から外して欲しいと頼んで来た。

 それはこんな気持ちのまま仕えたら、レオンに失礼だからという事らしい。



「気持ちは変わらないのか? 本当に、お前はそれで良いのか?」


「はい、17年という短くも長い間……本当にありがとうございました」


「そうか、お前の気持ちは分かった……お前を俺の家老から除名する」



 レオンはライアンの気持ちが変わらない事を、確認してから家老から除名した。

 ペコッと最後に頭を下げてからライアンは部屋を出ようと、扉の方に歩いていくのである。

 扉の前にいる俺は急いで、物陰に走って隠れる。

 ガチャッと扉を開けて廊下に出たライアンは、顔を下に向けながらトボトボと歩いて行った。

 その姿は何とも寂しげなものだ。


 俺はバツが悪い感じがするが、こんな事くらいでいかなければ、俺は行かなくなると思った。

 だから俺は決心して扉の前まで行く。

 深く深呼吸をしてから、俺は扉をノックした。

 すると部屋の中から「入れ!」と声が聞こえて来る。

 それに応えるように扉を開けてから、自分の名前を名乗って頭を下げるのである。



「フェリックスか、どうした? お前が執務室に来るなんて珍しいじゃ無いか」


「レオンさまに、お頼み申したい事がありまして参りました。少しよろしいでしょうか?」


「俺にお頼み申したい? 何の頼みなのかは、知らないが話してみろ」



 レオンは何を頼みたいのかは、分からないが話してみるように言ってくれた。

 俺はゴクンッと唾を飲んでから話し始める。



「今の建築統務官という役職を貰っているのは、下級農民の出である私にしては身に余る光栄です。しかし私がレオンさまの小者に志願した理由は、レオンさまの下で兵士となり騎士になる事です!」


「ほぉ? つまり今の建築統務官という役職を降りて、兵士になりたいっていうわけか? 今の役職のままならば食いっぱぐれる事は基本的に無いだろう。しかしそんな役職を降りてまで、一歩兵になりたいと?」


「はい! 周りの人たちからしたら、よくそんな馬鹿な事をするなという風に言われるかもしれません……しかし私には私の生きる野望があります! その為に、時には悪手を指す必要があると思っています!」



 俺は建築統務官という名誉ある役職に就かせて貰っているが、その役職から降りたいと要望を伝えた。

 この頼みにレオンは安定の職に就いていながら、危険と隣り合わせで建築統務官とは大いに異なる、一歩兵になりたいのかと聞いて来る。

 どう答えれば良いのかは難しいが、それでも俺は自分には自分の叶えたい野望があるのだと主張した。

 さっき盗み聞きをしており、頭の中に野望という言葉が残ってしまっていた。

 だから俺は思わず野望という言葉を出してしまった。

 ヤバいと思いながらもレオンの顔を見てみる。

 するとレオンは驚いた顔をしていた。

 どうやら盗み聞きをしていた事は気がついていなさそうで安心する。

 レオンは俺の口から野望という言葉が出て来るとは思っておらず、驚いているみたいだ。

 ゴホンッ咳払いをしてから話を進める。



「最後に確認するが、本当に建築統務官を辞めて一歩兵になっても良いんだな?」


「はい! 是非とも戦場に行かせて下さい!」


「分かった……お前の頼みを承認してやる、これからは一歩兵として戦争に参加しろ。それと明日からフェリックスも練兵に参加しろ、次の戦争で初陣を経験して貰うからな。次の戦争はフェリックスとワイツが、初陣を果たす事になるからな」


「分かりました! 明日に備えておきます!」



 レオンは俺の頼みを了承してくれた。

 これで俺は今日から建築統務官ではなく、ただの一歩兵として兵士になれた。

 確かに降格と言えば降格だ。

 しかし俺の野望にとっては、全身と言って良いのでは無いだろうかと思う。

 明日から練兵に参加し、次の戦争で初陣を果たす。


 俺は次の建築統務官に、必要な引き継ぎを行なった。

 そして遂に練兵をやるのであるが、その練兵は常軌を逸していたのである。

 1度見てはいたが、それでもやってみるのと違う。

 訓練だというのに周りの奴らは、俺を本気で殺すつもりでやって来ている。

 そりゃあ本番では相手を殺すのだから、訓練でも本気で殺しに来るのも仕方ないだろう。

 それにしてもって話だ。



「どうしてフェリックス! 最初はやる奴だと褒めてやろうと思ったが、お前の実力はそんなもんか!」


「い いえ! まだできます! やらせて下さい!」


「そうだ! 辛くても苦しくても剣を振るえ! 戦場では待って下さいなんて通用しないからな!」


「は はい!」



 確かに本当の戦争になったら、疲れたからとか苦しいからと言って向こうの人間が止まってはくれない。

 ここで俺は、この訓練の意味を理解した。

 きっと他のところよりも訓練はキツいのだろうが、それだけ本番の戦争になった時は誰よりも強いのだ。

 前にレッドライン家との戦いでも、周りの人たちからしたら引き分けで期待外れだというかもしれないが、倍以上の相手に対して引き分けにしたのだ。

 しかもレオンから和睦を申し出したわけじゃない。

 数が多い方のレッドライン家から申し出た事だ。

 明らかに武力に関して言えば、レオンとレオンの部下たちは半端ない力がある。



「お前たち! 引き分けという結果に満足はしてないだろうか? 俺たちの力はあんなもんじゃ無い。次の戦争こそ、俺たちが勝利を掴むぞ!」


『うぉおおおお!!!!!』



 練兵の最後にレオンは、兵士たちに鼓舞するような言葉を投げかけて終了する。

 俺は初めての練兵でフラフラしながら部屋に戻った。

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