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016:急展開

 俺が建築統務官に就任して、最初にやった報奨金を増やすという政策で、城下の民家が想定よりも早く建つ。

 これにはレオンも大喜びだ。

 俺も上手くいった事が嬉しくなって、大工の人たちに混じって復興の手伝いをする。

 これが意外にも楽しい。



「統務官さん! さすがにそれくらいにしておいた方が良いんじゃ無いの?」


「良いんですよ! こっちもこれが仕事ですから!」


「本当かい? それなら良いんだけどね……そういえば城に出入りする馬が多いみたいだけど、城で何かあったのかい?」


「あ あぁ……何でも無いですよ! ちゃんと報奨金は支払いますから仕事を頑張って下さい」



 大工の1人が俺に、モルフェイ城に入っていく馬が多くて焦っているように見えると言って来た。

 それに俺は目が泳いでゴニョゴニョする。

 言えない事なので、とりあえず報奨金は払うから頑張ってと言って現場を離れる。


 実はこの数日前に事件というべきか、何というべきなのだろうか。

 まぁとにかく大変な事が起きたのだ。

 それはレオンの父親であり、ソロー=ジルキナ家の現当主・コスタス代官が亡くなったのだ。

 夏に入ろうとしていた7月の事だった。



「お前たち、これから俺は当主を宣言する。それによりミケルとも、ギルツ=ジルキナ家とも戦う。とてつもない激しい戦いになるぞ」


「やってやりましょう! このソロー=ジルキナ家の当主は、レオンさまの他にいません!」


「その通りです! どれだけ激しい戦いになっても、俺たちは最後まで戦います!」



 レオンはソロー=ジルキナ家の当主としての権力を、自分だけで独占すると言うのだ。

 これはつまりソロー=ジルキナ家の独立当主となる事を、周りに宣言するという。

 宣言したら弟・ミケルと、ジルキナ家の本家であるギルツ=ジルキナ家と激しい戦いになる。

 その覚悟をするように家臣たちに説明した。

 もちろん家臣たちは戦うつもりである。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 レオンが当主になると宣言した事は、直ぐに周辺地域に広がるのである。

 その中で1番激怒したのは、ジルキナ家の本家当主である《マインケ=ギルツ=ジルキナ》だ。



「ふざけるな! あのバカが分家とは言えど、ジルキナの当主になるなどあり得ぬ!」



 マインケ郡長は分家とは言えども、ジルキナ家の当主に周りから大馬鹿者と言われているレオンが就くのは、圧倒的に納得いっていない。



「マインケさま、落ち着いて下さい。冷静にならなければ、事は治りませぬぞ」


「そうです、ラシャドの言う通りです! あの男は大馬鹿者だが、家臣たちは粒揃いですぞ」



 マインケ郡長は届けられた手紙をビリビリに破いて、怒りを露わにしている。

 そんなマインケ郡長を止めるのは、側近である《ラシャド=ガハル》《ヒビオン=ガハル》《イタコス=ラパロ》《ラクシュア=ワーノ=ジルキナ》の四人衆だ。



「じゃあどうすれば良いと言うのだ! せっかくワシの言う事を聞く大名を据えられたと言うのに、どうしてここまで不運が続くのだ!」



 マインケ郡長は、自分の言う事を聞く傀儡の《ムホスチン=フレネヴィ》を大名に据えた。

 せっかく上手くいっていると言うのに、ここに来て家督相続の問題が出てくるなんてと、赤子のように駄々のを捏ねているのである。



「まぁ我々で作戦を考えますので、マインケさまは自室でお休み下さい」


「そうです、こういう事は我々に任せていただければ問題ありませんよ」


「そうだな! お前たちで対策を考えておれ!」



 ラシャドは怒り狂っているマインケ郡長に、自分たちが対策を考えるから自室で休むように進める。

 それを言われたマインケ郡長は、この件はラシャドたちに任せるように言って部屋を出て行った。

 マインケ郡長が部屋を出て行くまで頭を下げる。

 そして居なくなったところで、ラシャドたちの表情が一変するのである。

 明らかに悪そうな顔に変わった。



「アッチが大馬鹿者だと、こっちは腰抜けだな」


「ムホスチンを大名にしたのを、さも自分がやったように言っていたよな。あんな腰抜けに、そんな事ができると本気で思ってんのか?」


「アレはレオン以上の大馬鹿者だな」



 ムホスチン大名がマインケ郡長の傀儡のように、マインケ郡長はラシャドたちの傀儡なのだ。



「父上、それにしてもどうしますか? レオンを処理するにも、向こうの戦力はバカにできませんよ?」


「そこだ、そこが問題なんだ。あいつは馬鹿だが、周りの人間たちが優秀……どう対処するか」



 ヒビオンはラシャドに、どうしたら良いのかと聞く。

 向こうの戦力は決して馬鹿にはできない。

 ラシャドの懸念点は、そこなのだ。

 レオンの事は馬鹿者だと言って見下してはいるが、その部下たちは優秀だと思っている。

 それをどう対処するのかと全員で迷っている。



「ソロー=ジルキナ家の家督相続に、グルトレール州のオズボルドが出てくる事は無いですかね?」


「そうか、その可能性もあるのか。オズボルドが、レオン側に付くのならば……我らは弟・ミケルを支持する」



 そして新たな可能性としてマリアベル夫人の父親であり、グルトレール州の尊極大名であるオズボルドが、義理の息子だからと出てくるかもしれない。

 その可能性も思い出したラシャドは、もしオズボルド尊極大名がレオン側に付くのならば、我々は弟であるミケルを支持する運びになった。



「我々はミケルを支持するという事で相違ないな?」


「相違ありません」


「直ぐに我々の意向を示すぞ!」



 ギルツ=ジルキナ家と共に、マインケ郡長の傀儡となっているムホスチン大名も弟・ミケルを支持した。

 これによりギルツ=ジルキナ家と、レオンたちの対立は決定的なものとなったのである。

 

 これをチャンスと言わんばかりにミケルが動いた。

 レオンが在中しているモルフェイ城から北に10数キロ進んだところにある《サムス城》に入場した。

 このサムス城は軍事拠点として北の勢力に対抗する為の重要拠点になっている。


 そしてさらに重大事件が起きる。

 コスタス前代官が重宝していた家臣《マブケ=レッドライン》が、ローランド尊極大名に寝返った。

 マブケが入っているドンブ城は、モルフェイ城から16キロの距離にある城だ。

 これを聞いたレオンは兵を挙げる。



「お前たち! こんな一大事の時に、レッドライン家は忠義を捨て寝返った! こんな事を許してはならぬ!」


『おぉおおお!!!!!』



 レオンは兵800人で、モルフェイ城を出発した。

 俺はその勇敢なる背中を、兵士にもなれていないので見送る事しかできなかった。

 これにマブケは1500人の兵で向かい撃つ為、モルフェイ城とドンブ城の間にある平野に布陣した。

 レオンは800人の兵士を連れて平野にやって来たが、レオン側に付いている人間が、もう布陣していた。



「おぉ! お前たちも来てくれたのか!」


「いやぁ若が布陣すると聞きましたので、このゾルダンと共に参りましたぞ!」


「若の当主としての初陣に、我らも参加させていただきまする!」


「期待しているぞ!」



 そこにいた人物は、コスタス前代官の四天王のうちの2人である《ゾルダン=フーリ》と《ゲアート=ヘイモネン》だったのである。

 この加勢は、レオンにとって大いに力となる。

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