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最終話 person who manipulates the criminal

とんでもない真相。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


外では鬼熊殺が書類を作成している。そして、事務所内ではある現象が起こった。それは、なんと! 奥さんが私に話し掛けてきたのだ! そして嫌がらせから殺意にまでその気持ちは膨れ上がった話を聞く。さらに……


あれとは一体?


(手紙よ)

あれか!


(私も奴から見せて貰ったけど、ここまで知られていた事に驚いた。同時に危機感も)

うむ


(彼の手紙を何度も読み、彼の思想、正義感等を知る事となった。彼なりに自身に起こった事象を分析し、それが会社にどう影響するかを可能な限り客観的に、俯瞰に見て、解決法を書いてくれたと思う。でも、所詮は捨て駒。この事実を知った事に浮かれてしまったのね。

捨て駒の分際で上から目線で全てを見透かした感じ……弱みを握っているからって浮かれ過ぎよ。何が


『後ろめたさが表情に出てしまうその裏表のない素直な態度には好感が持てました』


よ! ふざけないでよ!! 何でそんな表現をする必要あったのよ……馬鹿にしているとしか思えない。でも奴はその言い回しに関しては何も気付かなかった)

ああ、地獄で言ってたな


『どうせ奴らはそんな細かい表現には気付かんだろ。本当に馬鹿だからな』


と……


(くっ、あの捨て駒!)

二匹共尊敬に値する塊でない。バイトにすら見下されてもな。


(匹? 塊? それっておかしく……まあ仕方ないわね。だけど、お世話になっている社長に対しよ? でも、私だけはそれに気付き、彼への憎しみが増幅していった)

逆恨みだ。


(余り喋らないし、感情も表には出さなかったけど、芯が強く努力家で内面は奴よりも遥かに大人だって事は分かった。しかも、奴を気遣い、きつくなり過ぎない様言葉を選び、文面だけで説得しようとしていた。で、この手紙を読んだ直後、


『もう駄目だあおしまいだあ。どうやって謝ればいいんだあ』


って観念して白状しようともしていた。でも、まだ早いと……少し待ってからでも遅くはない。と、(なだ)めたわ。一旦別の事に意識を移せば一日もすれば忘れるから)

何故止めたのだ……


(そんな事も分からない? あなたも鈴木君も重要な事を分かっていない)

ほう?


(下請けの製造業ってのはね、一度信頼を失ったら回復は難しいの。発注してくれる親会社に見捨てられた瞬間終わるわ)

何故だ?


(自分の武器、自社ブランドという物が無い。客先からの発注ありきの工場なのよ。仮に手紙の指示通り真実を話し、謝って、それでも許して貰えなかったら? そして手紙の中での


【偽りの仲間】


が優しくしてくれなかったら?)

その時点で捏造した事実が広まっただけになってしまうな……だが、


【偽りの仲間】


か……寂しい響きだ。そなたは人を信頼するという事が出来ぬのか?


(ええ。でもその保証はせず、また取り直せばいいと言う無理難題を言っていたわ。あれは悪魔の囁きよ。うっかりそれに従ったらどうなるか……仮にすぐ再取得出来たとして、この時点で同じ資格を持っている一度も剥奪されてないライバル会社が発注先になる可能性が高いわ。たった一人指示書を捏造しただけで……圧倒的に差を付けられ、うちだけ相手にされなくなる。

剥奪された事実を露呈された上で再取得したとしてもよ。一度ミスを犯し、失効した資格をいくら最速で再取得しても一度も傷の無い企業より優先される道理は無い! 社員全員に影響が出る。渡された図面通り加工するだけ。機械さえあれば同じ事を出来る会社なんて幾つもあるわ。そんな中、差別化を図る為に私がISO9001取得を奴に進言したのに……)

それもそなたが……


(でもそれが返って信頼を著しく低下させる要素に……それもただの捨て駒に秘密を握られていると言う危機感。彼は大人しい事は分かっていたけど、いつ本性を現し言いふらすか……その内容を口外されるか……気が気でなかったわ。20年も面倒見てあげたのにそんな事すら分からず正義だけを押し通してしまった。それで会社がどうなるかなんて一切考えず、上の人間に躊躇いもなくあんな手紙を出せる胆力……彼は真面目過ぎるのよ……でもね? これは過ぎた正義よ。こんな事誰だって陰でやっているのよ。なのに何故私達だけ口外しなくてはいけない?) 

断言出来るのか?


(まあ断言は出来ないしそんな話し合いをした事も無いけど、それでもやっていると思う。そんな中、もし鈴木君に口外されたら最後、ここだけが脱落する。だから奴を操って少しずつ弱らせ、自殺させる計画を実行したの)

そんな事を……だが本当に鈴木だけが悪いのか? 何故内藤を裁かなかったのだ?


(もう終わった事。その罪は消えない。それに鈴木君が捏造を止めた以上、こちら側から何か言う必要はないの)

そうか、だが鈴木だけに全責任を押し付ける程の事はしていなくはないか?


(一人の従業員が辞めたの)

ぬ?


(その子は鈴木君の機械の前の自動旋盤で働いていて、聞いてしまった。内藤さんを叱っている声らしい物を)

どんな内容だ?


(良く分からないけどずっと叱っていて、言葉が止まる気配がない。そう、ずっと聞き取れそうで聞き取れない何か語気の強い説教が延々と続いていて、怖いからこの会社には居られないという理由で辞めていった)

そ、そんな事があったのか。そういえば社長もその事を言っていたな……アリサには黙っていたが。これは鈴木からも聞いていない新事実だ……そして、知りえる筈も無いな……


(これが事実なら物凄い潜在能力があると確信した。台本も何もないのに10分以上喋り続けていたって、このまま彼を野放しにしては途轍もない脅威になると確信した。大声で人目も憚らず……昔は大人しかったのに正義の為に進化してしまった……その正義を通す為なら何でもしかねない悪魔に……)

正義に目覚めた悪魔? そんな物は無い。


(その場面でお客さんが来ていて、その説教が聞こえてしまったら?) 

ぬ!


(この会社のイメージは低下するわね?) 

う、うむ。


(そういえばコミュニケーション講座で、迷路の問題を1秒で挙手していたわ。その時気付くべきだったのよ……その時ね、奴は悲鳴を上げてしまった……私が裏で苦労して優秀な社長として仕立て上げていたと言うのに……台無しよ)

仕立て上げていた……か……


(そうね。奴の本質は怒鳴り散らして命令するだけの品性の欠片すら無い獣。でもお客さんが来た時は丁寧な口調で喋りなさいと指示していた。表面上は優秀に仕立てたつもりだった。でも、いつの間にかそれだけしておけば安心と思う様になってしまっていたのね。奴の地頭を少しでも良くしておくべきだった……そのミスで挙手制の問題で大恥を……賢くなる前にこんな講座受けさせるんじゃなかったわ)

あの講座もそなたの提案か?


(ええ。仕事も落ち着き、鈴木君に恥をかかせる目的で開催してと奴に指示したわ)

必死だな。バイト一人にする事か? 


(結果は失敗。講座前に、先生と打ち合わせをしてて……内容は分からなかったけど、私もそこに参加して挙手制の問題を、そう、従業員と社長が競う様な問題を先生に出さない様にお願いすべきだった。それを怠ってしまった時に、運悪く彼が一番に手を挙げてしまった。元が馬鹿な奴では悲鳴を上げざるを得なかった訳よ。会社中に恥も晒した)

当然だ。


(で、その後特に落ち込んでもいなかったから、奴にこう言ってみたの)

ほう


『鈴木君ね、内藤さんを説教してるらしいの』


『何でだあ?』


『捏造の件で。で、最近入った新人の子がそれを近くで聞いててね、怖くなって辞めちゃったのよ……』


『何だとお!』


『それにお客さんが来た時にそれを聞かれてはまずいと思わない? 迷路の問題も一瞬で解いた程に賢いし、お客さんにわざと聞こえる様に言うかも知れない』


『あっ!』


『どうしたらいいと思う? 私はよくわからないわ? 頭のいいあなたが考えてくれないかしら?』 


と、奴に決定権を与えた。略して


思私頭(ししとう)


ね) 

それでそなたの思惑通りに操ったという事か!


(そうね。奴も頭がいいと煽てられて上機嫌で私の描いた行動を実行してくれたわ。もし思い通りにならない場合はヒントを与え、私のイメージに近づける。こんな感じでね。


『どうするの?』


『機械の傍で説教をする瞬間を押さえる!』


『どう言って切り出すの?』


『まずは……静かにしろ!』


『それだと小声で説教を続けると思わない?』


『ああ、そうだ。じゃあ……』


ってね。偶然だけど鈴木君のせいで一人の従業員が減ったという事実から説教を止めてくれるんじゃないかって)

奴は奴の考え抜いた作戦と思って待ち伏せしていたのか……本当は操られていただけなのに……そういえば鈴木もワープした様に突然出てきたと言ってたが、内藤が鈴木の機械の傍に行った時を狙って隠れていたと言う事だな?


(ええ。説教している瞬間に飛び出すぞおと息巻いていたから。で、その時、いい加減にしろ! おかしくなっちゃうだろって言ってみたら? と教えた筈)

成程な。確かに社長の中では鈴木の説教が原因で従業員が一人減ったという正当な理由で怒ったのだ。堂々としていたのもそれが原因。だが、それを知らない鈴木にとっては捏造した悪い奴を守ったと言う奇行に見えても仕方が無いな。実際は、内藤を守る目的ではなく、大きめの声で説教をし、新入社員を脅かす事自体に腹を立てたという事だったのだ。だから、あの時の


『いい加減にしろ』


は、これ以上恐怖で辞めてしまう従業員を止める為の


『いい加減にしろ』


だったのだろうな。だが……そうなるとおかしくなっちゃうだろの説明がつかぬな。やはり社長は内藤に好意を抱いていたという事か?


(内藤さん? そうだ、手紙を読んで奴が彼をクビにしようとしていたから止めたのよ。思私頭を有効に使ってね


『クビにしたら可哀そうでしょ? 頑張ってくれているんだし……家族も路頭に迷うわ。それに武器としても優秀よ?』


『でもなあ……700時間は流石に……犯罪だろ? ん? 武器?』


『そうよ。優位に立っていると思っていた人に反撃された時のショックは大きいわ?』


『確かになあ』


『それに捏造が事実だとしてもバレる可能性は0に近いと思わない?』


『そうかあ?』


『そうよ。それに報告したらISOも剥奪されるわ』


『それはやだ』


『ええ! 踏んだり蹴ったり。それがこの何の根拠もない手紙のせいでなるのよ? どうしたらいいと思う? 私はよくわからないわ? 頭の良いあなたが考えてくれないかしら?』


『そうか? じゃあ手紙を破り捨てればバレない』


『いいわ。でも他には無い? 思私頭?』


『え? 思私頭ってなんだあ?』


『じゃあどうしたらいいと思う? 私はよくわからないわ? 頭のいいあなたが考えてくれないかしら? の略よ。これを毎回言うのは疲れるわ……』


『そうか! 思私頭! 覚えたぞお! ……そうだ! 監査官がPCの傍に来たら、話をそらし、遠ざける』


『他には?』


『鈴木が説教したら守り抜く。除草剤の当番表も、内藤さんと鈴木を入れ替え身分の違いを分からせる』


『最高よ!』


『俺、最高!』


こんな感じね)

内藤は上層部に、会社ぐるみで守られたという事か……理不尽な……しかし奴の発言を再現しているのだろうが、そんな受け答えしかせぬのか?


(ええ、精神年齢は6歳程度で停止してるわ。で、内藤さんにも攻撃する様に指示を出したわ)

ああ、武器になると言っていたな。


(ええ。手紙内で鈴木君が内藤さんを憎んでいるのは知っていた。で、彼を呼び出し聞いてみたわ。途中、彼は私に手紙を見せてくれた。悍ましい量の罵詈雑言の内容……奴に宛てた手紙を見た半年後に見たけど、文章力の成長にも恐怖した……そこまで人を憎めるかという内容。特に老人に対しての憎しみが強かったわ。内藤さんね、私と同世代なの。って事は私も老人として見ていたかもしれない。そして私もそういう風に見下してたのかもって……更に怒りが増したわ。殺意も同時に……確かに鈴木君より25歳上だったけど、出来る限りおしゃれもしたりアンチエイジングも努めたのに……年齢という数字だけで判断して……内藤さんは涙ながらに手紙を見せたわ。実際説教された時も反論出来なかったけど、手紙でも一切反論出来なかったって。誰かに見せて相談したのかって聞いたけど、今まで誰にも見せられなかったって)

そうだろうな。


(そうよ! あの子、A5用紙全体に、薄くページの数字を印刷した紙を用意していてその上に本文を印刷してたのよ……他の人に都合のいい部分だけを切り取って報告させない為に……そういう用意周到な部分も嫌い……で、もしも私の策がバレれば私にもその能力を遠慮なく駆使し攻撃して来るかもと恐怖したわ)

確かに酷い内容ではあったがそこまでか……だが、カイジちゃんの歌で笑わなかったのか?


(あの歌よね? 悔しいけど笑ってしまったわ。何よあのヤギ……本来可愛い子ヤギの体に、俵藤(ひょうどう)の顔。それに内藤さんの顔を逆さにした部分でも吹き出してしまったわ。捨て駒に笑わされるなんて一生の不覚よ。大卒の私があんな捨て駒の考えたネタで笑わされたと思うと悔しいわ)

彼は中卒だが左利きでこういう突飛な発想が出来るのだ。これは幾ら良い大学を卒業しても身に付かぬ特殊技能だ。


(どういう脳の構造してるのよ……どうすればあんな事閃けるのよ)

そなたでは無理かもしれぬ。得手不得手の顕著に出る分野。年老いた硬い脳ではまず不可能。


(そうなの……まあ納得ね。でね、彼がトイレに入る時間が一定だという話があったので、そこから夏は便座を昼と16時の30分前に温め、冬は電源を切って攻撃しなさい。そうすればクビは見逃してあげる。と、指示したわ)

それで……金の為に従っただけなのか。


(そうね。嫌がっていたけど、家族の事を言ったら仕方なしに従ったわ。で、これを内藤さんがやったというのをバレる様に行いなさいと念を押した)

わざと……? 何故だ?


(鈴木君はこの時点で奴と内藤さんに同時に攻撃されていると気付くわね?)

ぬ? ああ。


(言わば告発した人間が告発された途端奴直々に大事に扱われた。それを見た鈴木君はどう思うでしょうね)

絶望しかないな……と言うか奴という呼び方どうにかならぬか? 一応旦那であろう?


(もう私の中で終わった人だから。社長の器でもないしね。それに覚えていない? 奴は私を紹介した時、


【彼女は】


としか紹介しなかったのよ。名前で呼ばれた事など一度もない。付き合ってた時は君、結婚したらお前。その報復よ)

そういう事か……確かにな……そこまで嫌いなら名前すら呼びたくないだろう。それに長めの名前だしな……


(ふざけた名前よね。一度もその名前で呼んだ事ないわ。便利よね、あなたって言葉。あの意味不明の文字列がたった三字で済む)

確かに人前では言えぬな……


(で、奴も内藤さんもどちらも不正を行った人物。そんな奴等からの理不尽な攻撃。彼はこう思う筈……どんなに良い事を言っても権力者相手では勝ち目がないという事を。そして口外しても信じて貰えないし、全力で揉み消されるという事もね。そして、周りに吹聴する事を諦めさせた訳ね)

捨て駒が正義の味方面するなと言う事か……意志を持たず盲目的に悪に従えと……はっ! 内藤が鈴木に


『お前は終わる』


と言われた時、鼻で笑っていたと聞いたが、これが原因か……上層部からの厚い後ろ盾があったから、あの絶望的状況で笑えたのだ……それが本当に正しいと思っているのか? 本気で?


(その通りよ。でも悪ではない。従業員を守る為の善意よ)

それはおためごかしだ。どう考えても言わなければならない内容を隠している。


(水掛け論ね。で、彼は手紙の中で日記を付けていると漏らしていたわ。あわよくばそこにその記録もしたでしょう。日記は何も起きなかった日はサボってしまうけれど、良い事が起きた時や悪い事、大きな変化が起きた時には嫌でも書いてしまう。だから次々悪い事が続けば? 彼の日記は悪い事しか記せない。そうすれば読み返した時にも自分の無力さを再認識して貰えるとも考えたわ)

そういう考えか……それであんなバレバレの行動をしていたのか……


(さっきも言ったでしょ? 彼が辞めた後自殺して貰うのが目的なの。それ以外の結末は失敗なのよ) 

だが内藤以外にも指示はしたのか? 


(それは知らない。私が指示をしたのは奴と内藤さんだけ……あ、名木君も背中を押したわ。給料上げてあげるから鈴木君を見なさい。そうすれば彼もその気持ちに応えてくれるかもってね)

そうか……名木は昇給も助長し、鈴木を執拗に見たという事か。


(でね? もし鈴木君が文句言って来ても、絶対に返事をするなと念を押した)

何故だ?


(口論になってしまえば、名木君は絶対に言い負かされ、指示を中断する可能性があった。だから、話しかけられたら逃げなさいと念を押した。目的は彼を憔悴させる事。途中で止まってはダメ)

成程、見てくるだけの相手でそれ以外の事はしてこない。だが、それで嫌いになってしまったのなら、鈴木も逃げゆく名木を積極的には追いかけられない……よく考えておる……


(仕事はね、凄く頑張ってくれてたのよ。だからね、簡単にはクビを言い渡せなかったのよ。だから自分から辞めると言わせる方法を幾つも考えたのよ)

では川谷、土志田には? 奴らもいじめていたぞ? 


(それはしていないわ)

まあ噓を言う状況ではないから信じよう。では社長の天性の才能で鈴木をいじめる従業員を取り揃えたと言う事か……


(早出の手当ても付かないのに、朝30分も前に出勤して筋トレとか勉強してるんでしょ? それを見た人間の感情なんていい物ではないわ。普通の人が考え付かない様な突飛な事を人目も気にせず実行するんだもの……特に嫌っている人間であれば嫉妬交じりで攻撃したくもなるわ。でね? 内藤さんには便座以外の指示は出していないけど。それが失敗したみたいで別の手段を考えたらしいわ。その攻撃で鈴木君が弱って休みが多くなったと報告を受けているわ。どんな手段かまでは聞いていないけど内藤さんは本当に優秀な武器だったわ。今はお空に顔だけで飛んで行っちゃったけど……ね)

あの


【最低】


の攻撃か。言える筈も無い……


(で、奴に鈴木君の休みが目立つわね。捨て駒風情がこんなに休みが多いとなると……思私頭? と、ほのめかしたの)

で、奴に決断させたのだな?


(そうね)

何という事を……飽くまで思私頭で、そなたの思惑通りの選択に導き、直接は手を下さない……と言う事か……奴はそなたの傀儡。真実はそなたがやっていたのか……名木が精神を、内藤が肉体を攻撃し、弱らせた挙句クビを言い渡す。そして全てが衰弱し切った末、日記を読ませ自殺に……完全犯罪だ……そこまでする必要あったか? そなたが手を止めれば鈴木は死なずに済んだのに……なぜやり切った!? 


(私は自殺した瞬間までは確認出来ていない。あの子の家に誰も居ない事を確認しただけ。でも何日か確認し、戻らない事から自殺したと確信したわ。私の計画は無事成功したの)

そなたは最低だ。この人殺しめ!


(フフフ……でもね? これには全く証拠がないのよ。絶対に足は付かない。そういう風に動いたから。もし言いたければ好きなだけ言いなさい。恐らく無理でしょう。今更警察を動かせるかしら?)

ぬう……だが覚えて置け、鈴木がここまで成長したのはそなたが必要以上に試練を課し続けたからだという事を。そうでなければ、普段通りの生活を続け、それを発揮する場面はなかった筈。そなたが開花させたのだ。バイトたった一人が社長や社員に寄って集っていじめられてそれでも生き残るためにはどうすればいいのか? そしてその最中内藤が捏造してしまった事を知りこのままじゃいけないといじめに耐えつつも彼の頭脳をフルに使い考えていく内に、元々あった潜在意識が顕在化しただけだ。人を追い詰めれば諦める者もいるが、ここまで成長出来場合もあるのだ。そなたはこの会社を本当に良くしてくれる筈の人間を身勝手な保身で殺したのだ!


(私、会社のみんなを、大学まで卒業してここに来てくれたみんなを守る為に鬼になった。それだけなの。それだけは分かって? でもね、あれから10年。そこまでして守る価値があったのかしら? って思い始めた。あの娘がこの会社の罪を大声で喚いていたけど、その時確信したわ。私、もうこの仕事嫌なんだってね。さっさと奴と別れたいって。そして、あの娘のお陰で養育費も貰えて別れる事が出来たわ。さて、今日でこの仕事は終わり。最後の大仕事はキノコ鍋を作る事ね。腕によりをかけて作るわ)

まさか毒でも盛らないだろうな?


(何言ってるの? そんな事は絶対したくない。奴には私を失った後の人生を長い事掛けてじっくり苦しんで死んでいってほしいから。即死なんてさせないわ)

ぬう……私では何も出来ないのか……


(そうね。諦めなさい)

アリサよ、折角大作を作ったばかりで申し訳ないが、そのMADもカルタもそのほとんどが日光一の仕業ではなく奥さんの仕業だったんだよ……奴は被害者の一人、だったのかもしれぬ。それにしてもこの女……私の声が聞こえてからこの僅かな時間で自分が置かれている状況を理解し、私と平然と会話出来ていて、既にもうこの状況にも慣れてしまっている? そして私の言葉から自身の罪も知られている事すら把握し、臆することなく平然と……いや、誇らしげさすら醸し出しつつ、罪の告白が出来ると言うのか? こんな人間が存在するのか?


(最後に教えてあげるわ)

何をだ?


(私の昔話。奴と私は幼馴染で小中高と一緒だったの)

ぬ?


(でもね、奴は口を開けば俺は次期社長と言う選ばれし者なんだ。的な話を、手を変え品を変え私に報告し続けたわ。100回以上聞いたわ。その話を止めようと別の話題を振っても無視して言い切るんだもの。小さい頃から何としてでも私を手に入れたいと考えていたのね)

大学は?


(奴の学力が低すぎて4浪して同じ大学には入ったけど、私が卒業した後に1年生ね)

何故馬鹿なのにそこに拘ったのだ?


(同じ大学に入れたら結婚してあげると約束していたの)

な、成程


(で、奴はこう言ったわ


『ほんの少し遅れたけど約束は果たした。約束通り結婚してくれ』


とね。こんな間抜けなプロポーズを真剣な顔で言ったのよ……笑いを堪えるのが大変だったわ。で、噓泣きで誤魔化したら、


『そんな事で泣くな。その涙は俺が大社長になった時まで取って置け』


だって……愚昧でしょ?) 

とんでもないゴミだ。そなたはそんなゴミ男の子供を3人も産んだのか……プライドも何もないな……心底軽蔑する。


(約束しちゃったからね。流石に逃げられなかったわ……でもね、今の現状……従業員に怒鳴り散らして……指示するだけ。技術等全く成長していないわ。本当に卒業したのかしらって疑うレベル)

嫌ではなかったのか? 


(そうね。こんな世界一情けないプロポーズ、本当に嫌だったわ。人生で一番の大舞台に立って、そんな事を平気で言えたのよ? 何がほんの少しよ……4年よ? 奴は時間の大切さすら分かっていない大馬鹿よ。一緒にキャンバスライフを過ごす時間は1秒もなかったのに、これで同じ大学卒だぞと自慢して周っているから救えないわ。まあ私も、同時に入学したらでないと駄目よ。と、言い忘れてしまった……そう、奴が浪人するという簡単な想定すら出来ていなかったから……その罰として受け入れた……)

別れたいと考えなかったのか?


(一応社長だしね。それに頑張って勉強した事には変わりないと嫌だけど受け入れたわ。でもやはり三人の子供に恵まれて社長夫人と言う立場になっても奴と話していても楽くない。性格も自己中心的。年を重ねる毎に嫌いになっていったわ。毎日離婚したいと思っていたけど、そうなれば慰謝料は出ない。だからあの子が来た時チャンスと思ったわ。上手くすればこの男を合法的に切って慰謝料を受け取りつつ自由になれる……とね)

何と言う……


(私は本当は好きな人がいたの。その人は大学の同級生。貧乏でスポーツで特待生として入ったんだけど、それだけじゃなくってお笑いにも命を懸けていてね。スポーツもお笑いも得意。素直に尊敬出来たわ。奴との間では30年で一度も尊敬した事も笑った事もないって言うのにね。下らない約束をするんじゃないと思ったわ。でね? 奴の父親が教えてくれたのよ)

何をだ?


(奴は金で裏口入学したんだって事をね。卑劣な手を使ってまで私を手に入れたかった様ね。本来約束は果たされなかったって事ね)

それは奴が悪いな……そしてそなたが人を信頼していない理由も分かった気がする。


(そうよ。騙す事を何とも思っていなかったわ。でも若かった私は奴の父親に、


『何でもっと早く言ってくれなかった?』 


って聞いたけど当然


『自分の息子が大事。好きな人と一緒になってほしい』


と言う綺麗事で終わったわ。子供さえ出来れば別れにくくなるだろうと考えたのね……)

そなたの意思は全く尊重されずじまいという事か……そう言えば父は生きているのか?


(ええ、91になっても元気よ。でね、悔しくて勉強をしたわ。上手く生きれる術を。動画や本。そして、色々な有名人の講演会)

それでそこまでずる賢くなったのか……


(本当は3人の子供達も置いていきたいとも思ったのよ……日に日に奴に似つつ成長するし……性格も私が必死に教育したけどいつ奴の血が暴走するかと思うと……でも私の子供……見捨てられない……)

全ては奴の見栄が引き起こしたという事か……これはそなただけを責めるのは心苦しいな……


(だから私を失った後、出来るだけ長く生き延びて欲しいと思っているわ。私を失い一人になって、騙した事を反省してほしいし。私はあの子が女神に見えたわ。大手を振って奴と縁が切れる)

アリサ……そなたはあれだけ頑張ったのに、それが全て黒幕の逃亡の助長になっただけという結果になってしまったのか……


(さて、クレーム対応、書類の整理、図面手配、奴の教育、捨て駒の対処……沢山の嫌な仕事とも今日でお別れ。せいせいしたわ。私はここから遠い南の島で、新しい男と子供達とで悠々自適に暮らすわ)

そうか。だがこれだけは確実に言える。法の裁きを上手く逃げ切ったとしても、そなたは必ず地獄に落ちるであろう。断言する。まあ今この瞬間逃げるそなたを止める事は出来ぬ悔しさは残るがな。


(そうね。フフ……あんな奴に惚れられなけば……芸人志望の人と一緒になっていれば別の人生もあったかもね。でも、生きている間は目一杯楽しむつもりよ。死んだ後の話なんて考えない。でも、そなたと言う言い方は嬉しくないわね)

だが名前を知らない以上そういう他あるまい。


(そうね。じゃあ……教えてあげるわ……私の名は……)

ぬ? おいおい……


(………)

まだ続くのか? おい! これ、寿限無より長くないか? 挨拶? 檸檬? 難読漢字っぽい言葉まで? ぬ? 数字? 1から100まで? お、おいアルファベットもAからZまで……お次は水素? ヘリウム、リチウム? 元素記号に突入しちゃったあ。これ、休憩せぬか!


(まだ途中よ? そこで休憩? それっておかしくない?)

ぐう


(じゃあ続きね? ……よ。ふう……どういう訳か疲れるのよね)

やっと終わった……そりゃ疲れるよ! 8万文字は語ってたもん! だがこれは……旦那よりも酷いキラキラネームだったあ。これは社長では覚えられぬよ……名前で呼ばないと嘆いていたが当たり前だ! 親はどんな思いで付けたのだ? それに役所が許可したのか?


(違う、別の名前で登録し、後でこの名前に変えられたの。その時使われた名前は直美。でも一度もその名前で呼ばれる事は無かった)

鬼熊殺と同じか……彼も元熊谷だったな……しかしそなたは名前と真逆だな。素直で美しいの真逆を行っている。


(失礼な。若い時は評判の美女だったのよ? これ、覚えるのに2年掛かったわ。そのお陰で大学も現役合格出来た訳ね) 

名前を覚える勉強でそんな効果も……確かに


【受験に必要な覚えるべき単語や数式を全部入れちゃいました】


って感じの名前だった……私はもう忘れたぞ?


(そう? 貴方、口だけの馬鹿ね)

ぐ……し、仕方ないであろう! しかし何という夫婦だ……世界一長い名前の夫婦じゃん? ……しかし、女性は怖い……ブル。


(じゃあね、記憶力だけでなく髪の毛も無いメガネさん……フフ)

ぬ? 何故見えるのだ! おい、あ、通信が途絶え……最後にそれを言うか……そなた、最低だ……

ポロポロ ファサ

 

ーーーーーーーーーーEnd of battleーーーーーーーーーー


storyteller lose


0経験値獲得 0ゴールド獲得 毛髪が2056本喪失

私の大切な毛が……さよなら……


ーーーーーー木林製作所シャッター前ーーーーーー


「さて、家に帰る。専務、立て直し頑張れ」


「はい」(怖いよ)


「じゃあね。あっママに電話しよう」

ピッ

プルルル


「あ? 今どこ? え? 家? 何でよ……分かった、これから帰るね。もう!」

ピッ


「ひい!」(喋らないで……)


「私の事すっかり忘れてたってさ。一人娘が不在で一晩過ごせるってどんな神経してんだよ……ま、いっか。じゃあ久しぶりのわが家へレッツゴオ」


「さようなら」(もう来ないで)

アリサは最寄りの駅まで行き、ママに連絡し迎えに来て貰い、無事に帰宅を果たす。再開し、突然涙目で抱き着かれたママは相当戸惑っただろうな。

その後、木林製作所と以前まで取引していた企業は次々と手を引き、専務、最強の二人も健闘するが、事務員ゼロの木林製作所では仕事を上手く取る事も難しく、売り上げは一割以下に……因果応報だな。まあ、頑張って生き残ってくれ。


さて、最後に、この話は言われた事を鵜呑みにした男女 (木林日光一、ジン゛ジア゛)達が発端となった悲しい物語だった様だな……フッ……


続く


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今回で最終話です。ここまで付いてきて下さった皆様、本当にありがとうございます! しかし、後味の悪いラストになり申し訳ないです。これは当初から決めていた事ではなく、途中で木林日光一が賢いのはどう考えてもおかしいと考え、裏で誰かが操っている方が自然ではないか? と考え直したからです。その結果35万文字を予定していましたが、まさかまさかの44万文字に到達してしまいました……ならばゾロ目にしてしまおうと大幅に増加してしまいました。本来、木林日光一が社会的に制裁を受け、成敗されてスカッとするラストにしようと思っていたし、その流れで進めていたけれど、それを絶ち切ってまでこのラストに変更しました。この決断で、リアルでもその悩みを抱え仕事して、ミスをして迷惑かけてしまう程にまで影響が出てしまいました。書き上げた今でもこの流れにして本当によかったのか? とは思っていますがこの小説は一応ミステリーであり。閻魔の死が


【自殺した振り】


という残念な内容のまま終わらせたままで本当にいいのか? と自問自答した結果、最後の最後にもう一捻りしようと苦渋の決断を下した結果です。最後にはビックリさせたいという気持ちが強いんです。妥協した結果より新しく閃いた結果を信じて進めました。自分ですら最後の最後で変更してしまったこの結末は予想できた人は少ないと思います。因みにタイトルの意味は


【犯人を操りし者】


です。鈴木を間接的ではあるが意図的に死に至らしめた真の犯人です。その人物は今までは社長だと思っていたけれど、実は傀儡。裏に隠れて権力を行使し自由に動かしていた人物だったという事です。実際こういう人いそうで怖いですよね。


後、文字数に関して驚いた事があります。それは、アリサと鈴木の会話の文字数が199998文字だったんですがその割合を物語全体の文字数と割り算してみたんです。


(199998÷444444)


こんな感じです。そしたら結果が


0.44999594999


と出たんですね。何か地獄っぽい不吉な数字じゃないですか? しかもこの中には4と5と9が入っていて、それを


【459→地獄】


とも言い換える事が出来ませんか? これ凄い奇跡ですよね? 勿論こんな事を考えながらこの作品を書いていません。偶然です。それにしても過去最高の長さになってしまいましたが楽しんでいただけたでしょうか? もしよろしければその辺の感想もいただければ嬉しいです。酷評でも罵詈雑言でも何でもありで構いません。では5話でお会いしましょう。


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