手紙を読んだ根拠
「これは?」
「除草剤をまく当番表だ。俺はバイトでも20年働いている古株。だからそれ位の順番なら名簿順で上から2番目の位置に置くのが普通。何故ならこれだ! うおおおおお」
再び何かを出す。
ごとっ
「また似た様な? 何?」
「これは床掃除の当番表だ」
「床掃除もさせられるのね……」
「ああ、面倒癖えんだよなあ……まあ今はその話はしないけど。で、並び順を見てくれ。俺は川谷の下だろ? これは、この当番表を作る前に作られた物。そして、社長が作った物だ。掃除の順番ぐらいは差別せず上から二番目に俺を置いている。何故なら手紙を見せる前だったから」
「本当だ……」
「なのにこの新しく作った当番表では俺の名前は下から2番目になっている」
「そういえば」
「これは自白しろという内容の手紙を渡した直後に作られた当番表だ」
「素直に謝るのは幼稚園児でも出来るって煽ってたよね?」
「ああ、それを読んで頭に来ちまったのかなあ……器が小せえから」
「小せえは余計よ!!」
「ああ! ごめんよ! ってアリサちゃんじゃないんだけどよ……」
「その言葉に反応しちゃったのよ!」
「わかった! 気を付けるぜ! これな、今までは会長が一人でやっていたんだが、年も年だし引退する事になってな。じゃあ従業員にやって貰おうと確か2012年位に作った当番表だ。ここから時系列的にも手紙を受け取った直後で、俺の名前のシールを上から順番に貼ろうとしたんだが、どうしても上の方には貼れなかったんだと思う。俺は手紙で内藤を悪く言った奴。もっと言えば自分が選んだ優秀な社員を悪く言う悪魔のバイトだ。で、悩んだ末一番下と言うのもおかしいと奴の中でも思っていた様で、下から二番目にしたんだよ。この辺も器が小せ……やべっ!」
「www」
「そんな安月給のバイトが、高い給料をもらっている社員の内藤様を攻撃するなと言わんばかり……」
「それはあのカスの匙加減でしょ? 真実を見て見ぬふりをし、無能の内藤を評価し続け、能力の無いという事実も見て見ぬふり……何故なら自分が選んだ人物だから……身勝手にも程があるわ……何であいつ社員なのよ……老人だし、学力もないし、仕事も出来ないし性格も悪い……」
「どう考えても分からん。だがその優秀な内藤にある事ない事言って陥れようとするような悪人は下から2番にしてしまえ!! と、感情的に並び替えた訳だな。バイトとは言え、20年働いてる人間をこんな下に出来る神経は、手紙を読んで効いちまったから怒りに任せてやった事と容易に推測出来る。平常心では起こりえない現象だ。相当俺に憎しみを抱いていたんだろうなあ。正に逆恨み」
「ビックリする程心が狭いわね……コミュニケーション講座で論理的思考を学んだんでしょ? それなのにこんな事でキレて……大人げなさすぎるわ……」
「実際は何も学んでなかったんだろうな」
「そうね。こんなバカなのに鈴木さんより優れてると思って、いざ同じ舞台に立って見たら惨敗して宇宙一汚い悲鳴を上げる始末……ねえ、そいつって本当に自分が社長でもいいと思っているのかしら? 謙虚さが足りないわ。あれ程無能なのに社長でいいと甘んじている。親ガチャに成功しただけじゃん。恥の上塗りよ。これじゃチンパンジーに社長の座を譲った方が良い運営が出来ると思う」
うむ。
「猿以下かww」
「凄い奴よ……聞けば聞く程に嫌いになっていく……今更だけど奴の良い所って何かないの?」
「うーんそうだなあ……さっき言ったけど自分が認めた人間には優しいくらいか?」
「優しくする相手間違えてるよ!」
「ああ」
「じゃあもう奴に関しては終わりなの?」
「残念だがまだまだあるんだ」
「へえ……私、そいつをまだまだ嫌いになれるのね……はぁ……もうお腹一杯よ……確かに奇行だったわ」
「俺の解釈は間違っていないよな? 奇行で合ってるよな? 俺も初めての事でよくわからない。だが奇行という位置づけで問題ないよな?」
「確かにそうだけど、考えて見れば奇行と言うよりは犯罪じゃない? おかしくなっちゃうだろじゃなくって、これが広まっちゃうとISO剝奪されちゃうだろ! そんなの絶対にやだもんねーの間違いだね」
「そうだ。全てを聞いた筈なのに、手紙を見た事もこの当番表の並び順ですぐに分かったしな。奴は間違いなく専務から受け取って読んだという事だ。それによ、700時間と言う突拍子もない嘘を俺が付けるかどうかなんて20年も見てりゃ分かるだろ?」
「うん、多分あいつは700時間も痛いけど、それ以上にISOまでも失うのは嫌だと思ったんだろうね」
「だな。700時間の捏造はもう取り返せない。だがまだISOは残ってくれている。だがそれを報告したらISOまで剥奪されちまったら踏んだり蹴ったり。だからその事は許し、仕方なく守ろうとしたんじゃねえかな?」
「そうとしか思えない。間違った継続よね」
「そうだ。だから手紙を読んだのは間違いない。で、俺を親の仇の様に睨んで来たからな。これじゃよ、内藤を守ろうという気持ちではなく、アルバイトが会社の運営方針に口出しすんじゃねえよって言っている様なもんだ」
「犯罪者め……」
「で、言い終えて満足げに自分の機械の所に戻っていくところをずっと見ていた。そしたらそれに気付いて睨み返してきた」
「うん、その気持ちわかるよ。悔しくて悔しくて仕方なかったんだろうね」
「だが俺は一切目を逸らさず少し憐れみを含んだ目で見続けた。俺に負い目は一つもないから」
「奴は、目を逸らした。バイトの鈴木さんに対して……社長なのに……」
「お? 正解だぜ! アリサちゃん良く分かったな。その通りだ。負ける気がしなかった。どんなに金を持っていても社長と言う権力があっても、残念ながらこの件に関しては何も効果は無い、どちらに正義があるかは火を見るより明らか。結果、俺にひれ伏した」
「当然よ!」
「もう一つ気付いた。俺のこの正義の行動は、奴の中ではあまり表沙汰にされたくない事を大声で喚いていたって事。正しいと分かっていても俺に対してどうしても攻撃せざるを得なかった。それを阻止する事が悪い事だと分かっていても、抑えられず俺と内藤の間に入ってきちまったんだ」
「でも怒りを爆発させた後、冷静になって事の重大さに気付き、目を合わせる事が出来なかった……と」
「間違いない。じいっと見てた事に気付いた奴は、確実に表情を鬼の様に変化させていたんだ。そして一度首をこっちに伸ばし威圧もしてきた。噛みつこうとするすっぽんみたいにwだがそれでもずっと目を逸らさず見ていたら、あっちから目を逸らした。理由は簡単。自分でも理不尽な説教だと知っていて、怒りを継続する事が出来なかったからな。あいつでも冷静になれば善悪の区別が付く事に少々驚いた。にしてもあそこで出しゃばらなければ
【自分の罪を隠したいと言う明確な逆恨み】
だけはバレなかったのにな。馬鹿すぎる。で、保身しか考えていない」
「初めから来なけりゃ良かっただけよね」
「でもそれでもバイト風情が、社長が精査し選びぬかれたエリート社員に因縁付けてるからどうしても我慢出来なかった。と、言う事だ。ふう……子供以下だわ……」
「そういえばさっき話したかもしれんが初めて忘年会に行った時」
「しゃべってるよwの時の事ね?」
「うう……よく覚えてるなあ。しかしいつ思い出してもむかつくわ……でな、奴は俺の右隣に居たんだが、更にもう一つ向こうに専務がいて、
『酒入ってたら運転できないよね』
と、恐らく帰りの足の事を社長に相談してたら、
『短けえ距離なんだから関係ない』
と、飲酒運転する気満々だった。まあ会社から500mくらい先にある焼き鳥屋でやったんだ。それでも本来、運転代行を頼み帰るのが常識。それが勿体ないから、近いんだし酒気帯び運転でもいいんだよ! と小声でアドバイスしていた」
「とことん醜い……元々こんな考え方しか出来ない野郎じゃ鈴木さんの話なんか聞く筈ないわよね……国が定めた事ですら守ろうとしないんだから……」
「ああ、そうとしか思えん。俺はおかしい老人を正しい道へ戻す為に頑張っていたってのに、それすら許してくれない。手紙を無視するだけでは飽き足らず、社長と言う権力を用いてありとあらゆるいじめを俺に行い、余計な事をさせないように計らった。誰にもばれない様に隠れてな。俺が孤軍奮闘し会社を良くしようと努力する事すらも禁じたんだ。ここまでする理由だが想像だが奴は俺がこんな手紙を突然出したのは奴にいじめられた報復で、
『敢えてこんな心を抉る様な手紙書いてよこしたんだ。許せない』
という理不尽な感情が爆発したのか?」
「少しはそんな気持ちがあったの?」
「いや? 純粋に内藤に対しての怒りが高すぎてその間は社長への憎しみは薄れていたわ。こんな奴がこの会社に居ていいのかって気持ちで訴えかけたんだよ。そもそも奴の捏造に気付いたのも偶然指示書を見て気付いたんだからな。それが、7時間を2時間の時だから驚いた。20年務めて以来初めてのピンチが来たと考えた」
「信じるよ」
「それとも? 俺がバイトで、バイト如きが最高権力者に指図するなって所だろうさ。確かに今まで馬鹿にしていた何も反撃してこないゴミみたいに思っていた女狂いのスケベバイトと思っていた奴がここまでしっかりと正論を叩きつけてきた瞬間混乱もあっただろう。だがそれが理由になるか? 俺は頑張って勉強してあの文章を書き上げた。あんな奴の為に成長したんだ。ところが奴は、
『バイトは頑張るな。黙って社長である俺の言う事を聞いて置け!』
の気持ちが強すぎて、俺の正論は無視してもいいって思っている。そんなの法律にはないよな?」
「無い。確実に社長がおかしい」
「俺もそうとしか思えない。だがともあれどうあっても真実をISOの監査官に言うつもりはないだろうな。ある程度頭が良ければ、この手紙の内容が、いじめた報復か、正しい会社に戻ってほしいという強い気持ちかどうかなんてすぐ分かりそうなもんだがなあ」
「って事は専務に貰って読んで、すぐにイラついて破り捨てろ! って命令したっぽいよね」
「うーん、そうだろうなあ」
「と、なると……完全に内藤の悪事を隠す気満々じゃん」
「そうだよな……何度も書いたんだぜ?」
「え?」
「何回か出ているが、2月に書く提案書に、その年はどういう目標で過ごすかみたいな事を書く欄もあり、そこに、
『捏造や誤魔化しのないクリーンな会社を目指す』
って毎年書いているんだけどなあ。毎年同じ事を書くという事は、この会社はクリーンではないと暗に示しているんだよ」
「うん」
「でもそんな事すら気付かねえんだろうなあ。絶対に不正を正す気はなさそうだぜ……」
「この会社の行く末はビッグリシテモーターじゃん」
「ビッグリシテモーターってのは良く分からんな」
「中古車会社よ。だけどお客さんの車を点検や修理する仕事もしてるんだけど、その際に自分で傷をつけたりパンクさせたりして大目にお金を請求してた事がばれて……」
「そうか、まさにだな……だが、奴の下らん見栄の為に、この会社の為にじじいを叱っている俺を非難した訳だ。理由はISOを剥奪されるのが嫌だから。結果、悪い事をしている奴を守り、正しい事をしている俺を攻撃したという訳だ。新年に自分の会社名が新聞に載る。それを誇りに思っているんだろうな……どんなに悪い事をしている奴が居たとしても、それさえ隠せばもう大丈夫って話だ。俺から言わせりゃ恥さらし以外の何物でもないのにな……恩恵だけ受け、悪いと分かっていても言い出さない。だが、内藤も自分が捏造をしている事さえ言わなければ社員として定年まで安定して仕事が出来た。そして社長と言えば内藤の悪事さえ隠し通せさえすればISOを継続出来る訳だ。同属性の二人だ」
「うん」
「奴はそれに気付き、内藤を擁護しなくては! と、感じてしまったのだろう」
「同類相哀れむね」
「奴は内藤という犯罪者を社員として入れたというミスを絶対に認めず、俺が不正を気付き、正当な理由で攻撃している事も気に入らない。だからムキになって守っていたんだ。本来あんな人間を擁護する要素はない。一つもな」
「うん。普通なら内藤が責められるべき事よ」
「俺が世間一般で
【悪い奴】
と考えられている人間でも、それを正当な理由で攻撃したとしても、攻撃された人間は無条件で社長の中では良い人間になっちまうんだ。それが例え殺人犯だとしても変わらないんだろうな……流石にそれは無いかな?」
「恐ろしい話ね……」
「恐らく墓まで持っていくつもりだろうな。奴はどうやらおねしょしても布団を提出せずそのまま放置し腐らせて、カビだらけになった頃、お母さんに発見され、おねしょをした当時に提出していれば見る事の無い程説教される道を選んだって事だな。自分から……」
「分かりやすい例えね。今もその秘密を隠し通して営業している訳ね。もしバレた時の事を考えてるのかしら? バレたら色々な人に、
『あ、あいつ木林製作所の社員だぜw』
って指を差されて笑われるよね。まあ考えていないだろうね……」
「恐らくな。考え付く筈もない。だが布団は徐々にカビが繁殖し始めている。もう取り返しがつかない。でもな? 新規の客や面接した後に新入社員になるかもしれない人間を工場内に連れて紹介する時の顔を見ても
【自分は一切悪い事をしていない】
という自信に満ち溢れた顔で紹介していたぜ?」
「奴の中ではもう終わった事って事ね」
「ああ、あれだけの悪事を、バイトの戯言で終わらせたんだ。タイムカードとパソコンの中のデータを照らし合わせれば絶対に捏造している事は明白なのによ。で、務めている間、その事を社外に密告する事は無かったぜ」
「どうして?」
「中には本当に頑張っている奴もいる。そいつらまで迷惑を掛けたくなかった。まあ本当なら言わなくちゃいけないんだけど、それだったら俺の口からではなく内藤か社長のどちらかが自主的に言い出すまでは言わなかった。まあ、恥ずかしいしそこまで積極的じゃなかったってのもあるがな……今はもう死んじまってるし思う存分言える訳だ」
だが、その話を聞いてしまったアリサはもしかしたらその会社に乗り込んでいくかもしれぬぞ。彼女はそういう幼女なのだ。
「あ、あのさ……もしかして内藤以外にも狂った従業員はいるの?」
「沢山いるぜ」
だろうな。
「えww」
「そりゃそうさ。内藤を含め全部あいつが人事を担当してるんだからな。センスの欠片もねえ男が選定したんだ。奴の波長に合う選りすぐりの狂ったナマモノ。センスの無いナンセンスが作業着を着て、ナンセンスな会話をし、ナンセンスに仕事し呼吸する。そんな見ていて呆れる様な尊敬を一切出来ねえようなキチガイ社員しかいねえ。発達障害者と知的にボーダーな未熟児と、人格破綻者と事故物件と犯罪者と身体障害者が支えあって運営されている狂った空間。一言で言うなら地獄レベル99だ。バイトの俺が一番ましだと言える位狂っている。大分減っちまったが、例えるなら
【現世に存在する魔界の動物園】
って感じだぜw」
「語彙力限界突破www」
「おっと飛ばし過ぎたか……まあ訂正はしねえw」
「でも、この世界をカンストまで育てた感じなの? 上界って怖いところねえ……こっちの方がまだましじゃん」
「やっぱり戻りたく無くなってきちまったじゃねえか」
「大丈夫、それでも戻る。でもそいつらもめっちゃ興味ある!」
「そうか?」
「でも辞めた人もいるのね? 大分減ったって言ってたわ」
「ああ、あんな奴の下で居られるかって辞めて行った人間は大勢いる。その分残っている奴は粒ぞろいのクズばかりだ。木林製作所の悪魔養成プログラムを無事全て終了し、それを納得し続けているエリートのクズ。親衛隊だ! 社長教の信者……そう、社長が死ねと言えば喜んで死ぬ操り人形。いや……もはや人の心を失った機械なのかもしれん」
「ww辞めた人、目覚めた人達の事も知りたい!」
「おう、てか、
【目覚めた人達】
か……言い得て妙だな。そして良い響きだ! よし、これより、第一の目覚めし者を紹介する」
「わくわくw」
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知的にボーダーと言う言葉は読者様のコメントで教えていただきました。どこかで使いたいかっこいい響きだなあと思っていましたが、ようやく夢が叶いました。




