第八章 探索
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
翌朝、清聴が訪ねて来る前に書置きをして家を出た劉煌は、伏見村を出ると忍者モードになって一路京陵を目指した。
京陵の杏林堂の前に着いた時には、本日の診察待ちの長蛇の列ができており、劉煌は物腰柔らかにして列の面々にお辞儀をすると家の中に入っていった。
家の中では案の定、お陸が右往左往していた。
「もう、帰ってこないから心配したじゃないか。あれ?着替えた?」
そう言うお陸の手を引いて部屋の隅に連れていくと、劉煌は身体を小さく屈めてお陸の耳元で囁いた。
「たぶん骸組の男だと思うんだけど、火口衆に狙われてた。重傷だったから手当してた。」
お陸は劉煌の手を払って即座に叱った。
「まったく、お嬢ちゃんときたら、そんな奴ほっといていいんだよ!」
「うん。だけど、火口衆が狙うってことは何か西乃国の知られては困る情報を持っているんじゃないかと思うんだ。」
”全くこのお嬢ちゃんときたら、こんなところで医者にしておくのは本当に勿体ない。天性のくノ一だわ。”
お陸はそう思いながら、「それで?その怪我人は?」と劉煌に聞いた。劉煌はニヤリと笑うと「今晩一緒に見に行こう。」と、嬉しそうに答えた。
その日の診察が終了し、劉煌は3日間休診の看板を掛けてからお陸を連れて伏見村に向かった。
家に入った劉煌は、まず蝋燭に火を灯した。
案の定、机の上にはままが書置きを残していた。
劉煌がそれを掴んでいるとき、後方からお陸のぶっ魂消た声が部屋の壁に共鳴しながら響いてきた。
「なんだよっ!百蔵じゃないかっ!」
劉煌は、衝撃のあまりバッと後ろを振り返ると、お陸が百蔵の髪を燃やさんばかりに蝋燭を近づけて彼の顔を見ていた。
”もしかして、あの伏見村に来て1年半たったころに僕を火口衆に売ろうとしていたあの百蔵?”
”ってことは、敵を助けちゃったってこと?”
劉煌は頭から冷汗を出しながらお陸に聞いた。
「ねえ、師匠。百蔵って知り合い何人いるの?」
お陸は思いっきりお前馬鹿だねぇという顔をしながら、
「お嬢ちゃんには悪いけど、一人だけだよ。」と冷たく吐き捨てた。
「もしかして、僕が思っている百蔵って人と、この人は同一人物?」
「お嬢ちゃん、百蔵って名前の人を何人知ってるんだい。」
「....一人......」
お陸の美容整形とエステで完璧に美しくなった顔が完璧に無表情に固まった。
「お嬢ちゃん、悪いことは言わない。そこらへんに百蔵を捨ててきな。」
「捨ててきたら死んじゃうよ。」
「お嬢ちゃん本気で言っているのかい?生かしておいたらお嬢ちゃんが死んじゃうよ。お嬢ちゃん、本当に頭弱すぎ。」
劉煌はムッとしながら反論した。
「だけど、この人はもう火口衆と取引できないじゃない?この人自体が火口衆に命狙われているんだから。」
そんな押し問答を繰り広げていると、突然下の方からかすれた低い声が響いてきた。
「お、俺は命の恩人を裏切ったりしねぇ。」
それだけ言うと、百蔵はまた気を失った。
お陸は顔をしかめながら囁いた。
「お嬢ちゃんは百蔵にはもう関わらない方がいい。ここまで回復したんだ。後は薬飲んで、傷薬を塗ってさらしを変えていけばいいだけだろう?あたしの家に連れて行ってそこで療養させよう。大丈夫、後はわたしがみるから。」
劉煌はまま宛の書置きを残して家をしめ、お陸と共に百蔵をお陸の自宅に運んだ後、京陵の杏林堂に戻った。
扉の前で3日間休診の看板を撤去し、扉をそっと開けて中に入った途端、彼の耳にゾロンの冷たい声が響いた。
「リク嬢は?」
夜中の3時過ぎだと言うのに、そこには蝋燭で顎の下から自らの顔を照らし完全に目が座った状態で仁王立ちしているゾロンと、それに付き合わされて目が半分しか開いていないフレッドがいた。
「師匠の知人が怪我をしてそれに付き添っているのよ。」
「まさか、男じゃないよな。」
「重傷だから起き上がるどころか話さえできないのよ。」
「ドクトル・レン。そんなことは聞いていない。患者は男か女か?」
劉煌は、チラッとフレッドを見てヘルプのサインを出したが、半分寝ぼけているフレッドには全く通じず、仕方なく下を向いて囁くように「....男」と言うや否や、ゾロンは先ほどのゾンビのような表情から鬼のような表情に変わり
「なに?!どこだ?!フレッドすぐ出かける!!」
と夜中の3時に叫んだ。
出かけるというマスターの声に、フレッドはようやく目覚め「マスターゾゥ、どちらに?こんな時間に?」と聞き返した。
ゾロンが答える前に劉煌が間に入った。
「止めておきなさい。そんな関係じゃないから。そーねー。強いて言えば仲の悪い親子みたいなもの、、、」
「仲が悪いのにどうして面倒をみるんだ?」
ゾロンは至極最もな見解を述べた。
それに困り果てた劉煌は
「怪我して動けない時こそ、相手をいたぶれるじゃない。」
と言ったが、完全に嫉妬に狂っているゾロンはそれを曲解し
「そんな仲なのか?!」
と怒りに満ちたトーンで叫んだ。
20歳の元皇太子だがお座敷デビューから5年以上経つ劉煌は、それがどんな意味なのかがピーンときてしまい、顔を真っ赤にしながら
「んなわけないでしょ!師匠は私とずーっと一緒に暮らしてきたんだから。」
と言ったが、ゾロンには逆効果で彼は目が引きちぎれんばかりに大きく見開いて叫んだ。
「ってことは、ドクトル・レンもずっと、、、」
「んな訳ないでしょ。もしそうだったら、私が師匠に別の男の所に行くのを許すわけないでしょーが。」
それを聞いたゾロンはようやく平常心に戻ると非常に居心地悪そうに言った。
「ドクトル・レン、大変失礼した。つい....」
「あーもう、寝ましょ。私はクタクタなんだから。」劉煌がそう言うと、ゾロンも「私も心配でクタクタ。」と言ってからサッサと自分の部屋に向かって行った。
その頃、なんとお陸の家では気が付いた百蔵をお陸が本当にいたぶっていた。
「百蔵、命が欲しかったら白状おし。あんたなんで狙われてたんだい。」
「し、しらねぇ。それにあんた誰だ。」
絶世の美女に変身後のお陸に会ったことの無かった百蔵は、自分に偉そうにこんなことを言ってのける若い女に苛立ち、持てる全エネルギーを駆使してお陸に向かってペッと唾を吐いて見せた。
「えっ、あたしにそれで通用するって思ってんのかい。馬鹿にすんじゃないよっ!」
そう言うとお陸は、動けない百蔵の一番大きな傷口を箸の先でツンとつついた。
GYAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!
夜中の3時にそこら中に悲鳴が響き渡る。
「あんた、今どこにいるか知ってるかい?ここは大きな森の中、わめいたって誰にも聞こえやしないよ。もう一度聞く。あんたなんで狙われていたんだい。」
「だから、しらねーんだよ。」
お陸は棚から塩の壺を取り出し、百蔵に見せて言う。
「あんたなんで狙われてんだ。」
それでも百蔵は首を横に向けお陸を無視した。
「しょうがないねぇ。これはやりたくないんだけど、あんたを助けてやろうってんのに無視するから仕方がない。」そう言うとお陸は、百蔵の傷口の上に塩をパラパラと落とした。
GYAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!
「お前は誰だ~。」
百蔵は叫びながらあまりの痛みに気を失った。
気を失った百蔵の耳元でお陸はまるで睡眠学習のように言い続けた。
「白状しな。頭領の所に戻ったって殺されるだけだよ。あんたを助けられるのは私しかいないんだ。」
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