第八章 探索
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
「亮兄、苦しいよぉ~」
梁途がゲホゲホ咳き込みながらそう言うと、
「まさか、お前がこっちに来てるなんて、しかも特殊任務部隊に選ばれるなんて。」
と、李亮は嬉しさのあまりさらにきつく梁途を抱きしめた。
「こっちに来れたのはじゃんけんで勝ったから。この部隊に選ばれちゃったのはノンキャリだったから。」
不貞腐れながら梁途がそう答えると、ようやく李亮は梁途を解放し「は?じゃあ、斉の野郎は腕利きを選んだのじゃないのか?」と聞いた。
「あいつが兵の腕なんかわかるわけないじゃん。でも亮兄、斉の野郎って言ったけど、あいつの死んだ婆ちゃんは皇族だったんだから、言い方気を付けろよ。家柄だけは抜群なんだ。だからあの体型で剣もろくに振れないのに副統領になっているんだ。っていうか、禁衛軍って基本お飾りだから。亮兄、勝算あるんだろうな。1万いたってただの数だけなんだって。」
「まあ、俺も西の前線基地に居たからどんなもんかはおおよそ見当はつく。ところで選ばれたのは全員ノンキャリか?腕はどうなんだ。」
「勿論全員ノンキャリ。矢面、危険なことや面倒なことは全部ノンキャリに振られるんだ。腕は、、、キャリア組は訓練免除だけどノンキャリは一応毎日訓練はしてた。ま、キャリア組が選ばれるよりは使えるだろう。ああ、それにしても、息の詰まる皇宮から出られるんでさー、この護衛で北盧国に行くの、応募が殺到したんだよ。みんな遠足気分でさ、キャリア組が全員出ることになって、残りの僅かな枠をノンキャリ内で争ったんだよ。じゃんけん勝って喜んだのも束の間、その僅かな枠がさ、そのまま危険地帯に持っていかれることになったわけよ。」
そう一気に言うと梁途は、はああとため息をついた。
李亮は今迄の緩い感じから突然真剣な顔つきになると、
「とにかく乗り込むところにはお凛ちゃんがいる。乗り込んでもし殺傷沙汰になったらお凛ちゃんも一緒に戦う。」
「え?ってことは、五剣士隊の三人が一緒に戦うってのか。孔羽がこれを聞いたら歯ぎしりして悔しがるだろうな。」
李亮はこの発言にギクっとすると、今迄の雄弁さが影を潜めてしまった。
”お凛ちゃんが劉操の手先かもしれないって今は梁途に言えない。”
そんな李亮の変化に気づかず、李亮と数年ぶりの再会で興奮している梁途は続けた。
「そうそう、アイツと会ったんだ。」
そう言うと、梁途は、宮女に化けていた時の劉煌の大きなほくろを思い出し、思わず彼は声を殺してクククと肩で笑った。
梁途の一人受けでようやくここに戻った李亮はハッとすると、梁途の両肩に手を置いて「いつ、どこで、元気だったか?」と聞いた。
「うーん、半年前、皇宮で、元気だった。」
「なに?どこの国の皇宮だ?」
「勿論西乃国だよ。」
李亮は、まさかそんな危険なところに劉煌がいたと知り絶句してしまった。
梁途はおかまいなしに続けた。
「宮女になって後宮にいたんだ。俺に一言言ってくれればよかったんだけどね、何か探し物をしていたみたい。後宮の蔵の隠し部屋に行ってたから。でも本当に神出鬼没だよなー。孔羽の話だと、アイツは先帝から仰せつかった準備をしているって言ってたって。それでなんで呂磨に行ったのかわからないけれど。」
「何?アイツは今、呂磨にいるのか?」
「うーん、今、呂磨にいるかはわからないけれど、その時は呂磨に行かなきゃって言ってたって。よく覚えていないけど、うーん、呂磨の誰かが死んで、それと陛下が繋がりがあるとかないとかアイツが言ってたって孔羽が言ってた。」
”呂磨と言えばカッチーニ会の本部がある街だ。”
”そういえば北盧国が敗戦して何週間も絶っているのに、西の国境でさえカッチーニ会から何の反撃もないのも妙な話だな。”
”まさか太子は、カッチーニ会の何かを掴んだのか?”
李亮はもっと劉煌の話を聞きたいという気持ちがあるものの、彼にとってそれよりも大事なことがあった。
白凛の危機が迫っているのだ!
李亮は、李亮が聞いていないのに何やら話し続けている梁途に口を挟んだ。
「とにかく、今は趙候府のことに集中しよう。特殊任務部隊は石公公を守り抜くことを最優先にしてくれ。」
こうして、李亮、兵士を装った石宦官と特殊任務部隊を先頭に、ショートカットで舞阪県の趙候府を目指して進んだ。
何しろ、そこに皇帝がいるので、禁衛軍のキャリア組は皇帝の手前、出陣しない訳にいかず、その後ろをしぶしぶ進軍した。
進んだけものみちは、夏場だというのに標高そのものが高いところだからか、草は生い茂っていてもそれほど高くなく、特殊任務部隊の馬で全て綺麗に踏みつけられ進軍は思ったより早く楽にできた。
そして、一行が趙候府の裏山のふもと付近まで来た時、李亮はそこで禁衛軍に待機を命じ、李亮と兵士を装った宦官の石欣を含む22人の特殊任務部隊は、表から趙候府に乗り込むべく回り道の街道に出ると、一路趙候府を目指した。
趙候府に到着した一行は門番に、李亮が身分を証明する参謀の札を見せながら、
「軍の参謀本部の李亮だ。今後の軍のダメージコントロールのために、今回の戦での被害状況の調査に来た。ついては基地の案内を趙候府の主にお願いしたい。」と言った。
門番から仰せつかった下男は、胡懿のところまで行くと、「軍の方が、主に会いたいと仰って門に来ておりますがいかがいたしましょう?」と聞いた。胡懿は、「軍の方?どこの軍だ。」と聞くと、下男は「さあ、サンボン?とか言ってましたが、、、とにかく今回の戦での被害状況を知りたいようです。」と言った。
胡懿は、それを知ったところでどうなると鼻で笑うと、下男に相手は何人位で来たのか尋ねた。
下男は十数人位ですと答えると、胡懿は、”それなら何か起こっても簡単に切って捨てられるな” と思った。
胡懿は、ここでの基盤を固めたいところから邪魔者は排除したいので、屋敷内の兵士には武装して準備するように命じ、自らは武装兵30人を連れて門に向かった。
門番たちは胡懿の姿を見ると、すぐに全員叩頭した。
胡懿はそれに満足気に何度か頷くと、やおら門の階下に立っている三角形の頂点にいる男をジロリと見た。
”なんだ、軍とか言いながら、武装していないじゃないか。”
「いやはや、軍の方と伺ったが、失礼ながら背は高いが年齢は低いようだ。私に用があるとか?」
胡懿は門外の先頭に立っている李亮を見下ろしながら偉そうにそう言うと、李亮は胡懿を見上げながら微笑み「参謀本部次長の李亮です。ここまで御足労いただきありがとうございます。しかし、申し訳ない、私はあなたをお呼び立てしたのではないのです。ここの主に基地の案内をお願いしたいと言っているのです。」と返した。
「君の耳は籠耳かね。だから私がここの主だ。」
胡懿がとても不機嫌そうにそう答えると、李亮はわざととっても驚いた顔をして、大げさに石欣の方を振り向いた。石欣も苦虫を嚙み潰したような顔をすると、李亮は胡懿の方を振り向いて
「私は陛下からここの主は若い女性だと伺っておりましたが、あなたは若くもなければ女性でもない。これは一体どういうことでしょう?」
と、陛下の所で両手を重ねて北の方角に向かって挙げながらそう言った。
それでも胡懿はしらばっくれて「それは君の聞き間違いだろう。」と言いながら手で何やら合図すると、物陰から続々と兵士達が飛び出し胡懿の後ろにアッという間に大群ができた。
李亮は、それを見ても全く怯まず、首を斜めに上げて、門の上にある巨大な扁額を確認した。その扁額には間違いなく趙候府と立派な字で彫られていた。
「私は聖旨の実物も見ましたが、趙候府の主は確かに白凛という女性将軍のはずです。それでもあなたが主だと主張するなら、任命時の聖旨があるはずでしょう。それを見せてください。」
その瞬間、胡懿は、急に真っ青になり、先ほどの尊大な態度から打って変わって狼狽し「お、お前こそ陛下の命なら聖旨を見せろ!」と罵った。すると李亮の横に梁途がすっと躍り出て「待て待て待て。この札が目に入らぬか。天下の禁衛軍だ!陛下の詔である。直ちに主である白将軍に取次を!」と叫ぶと、絶体絶命の胡懿は完全に開き直って、「陛下の名を騙る逆賊だ!殺れ!」と右腕を挙げながら叫んだ。
李亮はすぐに「石殿をお守りしろ!」と叫ぶと、手はず通りノンキャリ組8人がさっと石公公の前後両脇を固め、梁途が準備していた花火を一発挙げた。
その合図で、裏山からををををををを~という雄たけびと馬の走る地響きが鳴りはじめたため、剣を振りかざして李亮たちに襲い掛かってきていた胡懿の兵士達は、いったい何事かと怯んだ。
そして、趙候府の後方からは「やあ!」という耳をつんざく女性の甲高い声が響いた。
その掛け声は、うまく風に乗り趙候府の側の基地にも響いた。
”お嬢様の時の声だ!”
基地に事実上軟禁されていた常義は、すぐに武器を取ると「今だ!」と大声で叫んだ。
その声を合図に故趙明軍の生き残りと白凛と李亮が西域との戦いの最前線から連れてきた兵士達の生き残りが、基地内で彼らに目を光らせていた胡懿の兵士達を次々と襲っていった。
趙候府の門前では、李亮と梁途がお互いの背中を合わせ、まるで彼らの背中に見えない一枚の鏡があるかのように、見事にシンクロした動きで次から次へと特殊任務部隊に襲い掛かる敵をバサリバサリと斬り倒していた。2人は白凛のような派手な大立ち回りはしないが、力と速さは時に白凛を上回るものがあり、敵を彼らより先に1歩たりとも石欣に近づけさせなかった。
白凛は、銀の甲冑を纏い趙候府の裏手から両手放しで正確に馬を操って現れた。
彼女のその両手には銀色の剣がしかと握られ、その剣先と甲冑に太陽の光が反射して、まるで氷のようにキラキラと光り輝いていた。
そして白凛の両手に持った剣は、はたから見ているとまるでそれ自体が生きていて、意思を持っているかのように寸分の狂いもなく一切の躊躇なく胡懿の兵士達の戦闘能力を次々に削いでいった。
そうでなくとも、ばあやと趙洋を殺したであろう胡懿に怒り心頭だった白凛は、この3日間李亮がくれた干肉を嚙みながら部屋で仕方なく大人しくしていたこともあり、まるでそのフラストレーションを一気に爆発させているかのように、手放しながら縦横無尽に馬を操り、趙候府内の敵を容赦なく斬って斬って斬りまくっていた。
何しろ昔から怒っている白凛は、誰も手が付けられない。
それが、今回は怒っているを通り越して、怒り心頭なのだ。
手が付けられないどころの騒ぎではない。
白凛は、あっという間に趙候府内にいた胡懿の兵士達の戦闘能力を、李亮らに任せて大丈夫な位に減らすと、そのまま馬で門下の階段を一っ飛びで飛び越え、甲高い声でうぉおおおおおと吠えながら基地に殴り込んで行った。
基地に入った白凛は、両手に持っていた剣で左右の門番を一気に突き刺すと、丸腰のまま馬で襲ってくる敵を蹴散らした。
いち早くその姿を発見した常義は、白凛に向かって長槍をトスすると、「白将軍のご降臨だ!続け~!」と味方にはっぱをかけた。
白馬にまたがり長槍で次から次へと敵を斬っていく白凛の勇姿をその目でしかと見た基地の味方は、ますます活気づき、白凛と共に敵を次から次へと倒したが、何しろ敵は数で圧倒しているので、倒しても倒してもなかなか減らなかった。
そして無残にも白凛の馬の脚に矢が刺さると、馬は前のめりに倒れてしまった。
白凛は馬が前に崩れ落ちる瞬間に馬から飛びおり、今度は低い位置からの攻撃を続けた。そうでなくても男たちに比べ身体の小さい白凛には、いくら身体能力が長けていてもこれはかなり不利な戦いだった。
何しろ敵は数で圧倒しているので、いくら白凛達の方が攻撃力が高くても、彼らはニジリニジリと後退させられてしまった。その不利な展開に白凛の顔は、どんどん歪んでいった。
そこへ李亮と梁途が敵の後方から突撃してきた。
李亮は馬から飛び降り馬の尻を叩いた。馬は敵兵を蹴散らしながら一路白凛目掛けて敵兵の集団をなぎ倒していった。
白凛は左の口角だけ上げてニヤリと笑うと、突撃してきた馬にヒョイとまたがり、長槍を勢いよく振り回した。
李亮と梁途は、弓を横にして李亮は1度に5本の矢を、梁途は3本の矢を打ち続けて敵をどんどん打ち取っていった。矢の尽きた李亮と梁途は頷くと、左右に別れ、彼らに向かってきた兵士達に剣で応戦した。
白凛は馬から突然飛び降りるとこう叫んだ。
「今よっ!」
白凛、李亮と梁途の3人は、均等な距離に素早く別れて、敵兵を囲むように左回りでグルグルと周りながら、どんどんと最外殻の兵士を斬りながら戦力外になった敵兵を円の中から円の外へ外していった。
白凛は李亮と二人で敵を挟み撃ちするつもりだったが、別のなかなかの剣の使い手が現れ彼女と李亮についてきていることに気づくと、そのまま3人で敵を取り囲んで、益々気分が乗ってきていた。まさかそのなかなかの使い手が梁途であるとは思いもせず、白凛としては、エキストラが頼んでもいないのに李亮と呼吸ピッタリの動きをして助太刀しているので、大変な状況であるのに笑いながら「いい感じよ!このまま殺りましょう!」と叫んだ。
白凛はこんなことができるエキストラの一人を全く疑っていなかったが、常義は彼ら3人の動きを見て驚愕していた。
”この兵法は、、、突然やれと言われてできるものではない。どうしてあの2人がお嬢様と阿吽の呼吸でこんなことができるのか......”
常義は、訝しいと感じながらも、次々と外されていく傷ついた兵士達を容赦なくさらに斬ってとどめをさしていった。それを見た味方の兵達は、常義のお手本を見て、次々とそれに追随していった。
白凛、李亮と梁途の3人が囲った円が元の半分の大きさまでなった時、ようやく禁衛軍の1万騎が趙候府と基地一帯を囲んだ。もう完全に形勢は逆転し胡懿は捕まり、胡懿の兵士達は白旗を挙げて投降した。
禁衛軍の斉副統領は、すぐに馬を放り出して石欣筆頭宦官の元に駆けつけると彼の前に跪き、恭しく挨拶した。
「石公公、お怪我はございませんでしたか?御着替えを持って参りましたのでどうぞ中へ。」と言って、その辺の者に趙候府の一番上等な客間の場所を聞いて勝手にそこへと石欣を連れて行った。
基地や趙候府には、ただ時の声だけあげ裏山から馬で走ってきただけの禁衛軍キャリア組が偉そうに入り、石欣筆頭宦官を守り抜き、最前線で戦った真の功労者であるノンキャリ組は、趙候府の中には汗臭いという理由で門前払いだった。
そのあまりにあからさまで不条理な格差に、一部始終を見ていた李亮は思わず苦笑し、仲間の怪我の手当てが一通り済んだ梁途に声をかけた。
「これだけ力量のない奴がのさばっているってことは、俺たちの未来は明るいぞ。(政変を起こしても勝てる)」
李亮が隣に立つ梁途の方に頭を傾けてそう囁くと、彼が何を意味するかわかった梁途も、
「そうだな。それになんたってこっちには彼女がいるし。いやーそれにしても噂には聞いていたけど、凄かったなぁ。昔も強かったけど。」と、先ほどの白凛の活躍を思い出しながら李亮の方に頭を傾けコソコソと言った。
しかし、李亮から予想していたそれを肯定する返事がこなかったことに、梁途は思わず顔を斜め右横上にあげて李亮を見上げた。
梁途は、彼の目に映った李亮の顔が全く想像と異なり苦渋に満ちていることに気づくと彼の頭の中で仮説を立て始めた。
しばらくの沈黙のうち、梁途は自分が出した結論を半信半疑で李亮にふった。
「ま、まさか、彼女は、、、」
李亮は顔をしかめて俯いた。
”まさかお凛ちゃんが敵になるとは......”
誰よりも劉煌に忠実そうに見えた白凛が、劉操側についていることを知り、梁途は大きなため息をついた。
李亮はそんな梁途を悲しげな眼で見下ろすと
「彼女は、俺たちと事情が違うんだ。俺は守る者なんて誰もいないが、彼女は家を背負っているからな。」
そうポツリとこぼしている時に、後ろから李亮には最近聞きなれた声、梁途にとっては11年ぶりに聞く声が響いた。
「基地の被害状況を視察に来たんじゃなかったの?」
その声に李亮と梁途が同時に振り返った。
李亮の隣に立っている李亮よりは10cmほど低いが、それでも平均よりははるかに背の高い男の顔を見た白凛は、その大きな目をさらに皿のようにまん丸にさせた。
梁途はすぐに白凛に礼をすると「白将軍にご挨拶申し上げます。禁衛軍の梁途と申します。」と言って深々と頭を下げた。
”禁衛軍?下級文官の息子が?”
白凛はあまりに思いがけないことに言葉も礼も失っていたが、すぐに驚愕の顔のまま李亮を見上げた。
李亮はそれにスッとぼけて「白将軍、お探ししておりました、基地の視察をしたく、よろしくご配慮お願いいたします。」と言うと、白凛は「あっ」とだけ言って、2人にくるっと背を向けスタスタと基地に向かって歩き出した。
しばらくして白凛が後ろを振り返ると、李亮1人だけが彼女に付いてきていた。
白凛はそれを見て、李亮より後ろに視線を向け「ちょっと、そこの禁衛軍の何て言ったかしら、あなたも来て。」と、梁途の目を見て、そうしらじらしく言った。
梁途は周囲をキョロキョロと見回してから彼らの後ろをついていった。
3人は基地に入り常義に会うと、常義は白凛に礼をしてから3人を陣内に入れた。
常義は中に入ると、小声で「お嬢様、お一人多いのでは?」と言った。
白凛も小声で「多いけど、きっとバレないわ。」と言うと、いつも通り人形をセットしてから秘密の部屋への扉を開けた。
「常義、悪いけどあなたは人形と一緒にここに残って。人形の数が足りないから。」
白凛はそう言うと、さっと階段を降りていった。
「しかしお嬢様、知らない殿方お2人と密室におられては、亡くなった旦那様へ申し訳がたちません。」
と、常義が心配そうに言うと、白凛は
「大丈夫よ。2人とも幼馴染だから。」
と、階下へと階段を降りながら振り返りもせずサラッと答えた。
李亮は、その白凛の言葉に驚きを隠せない常義の肩を慣れ慣れしくポンポンと叩いて
「まっ、そういうことなんだ。」
と、言って白凛の後をついて階段を降りていった。
梁途も李亮の真似をして「ま、そういうことなんだ。」と、言って常義の肩に手をかけようとしたが、常義にギロッと睨まれて慌ててその手を空中に泳がせた。
李亮は階上の梁途に向かって「おい、早く来いよ。」と言うと、梁途は空中に泳がせていた手を前で重ねて常義にお辞儀をしてから階段を駆け下りていった。
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