第八章 探索
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
一方、呂磨では、ゾロン、フレッドとミスター・レジデンスが、ゾロン邸で、作戦会議のため呂磨の地図を広げていた。
「あの2人は何をやっているのだ。ここに戻ってからほとんど部屋に缶詰じゃないか。今日の会議のことは忘れているのではないか?」
ミスター・レジデンスはイライラしながらそう言うと、彼の背後から「あんたが私へのプレゼントを全部台無しにしたからよ。」という劉煌の声が響いた。
この2日間、フレッドが随分と取りなし続けたものの、相かわらず劉煌の怒りは全く収まる気配が無かった。
ミスター・レジデンスを無視して席に着くと、劉煌は、やおら持ってきた高さ30㎝弱の布を被せている物体をテーブルの上に置いた。
皆が何か?と思っている最中に、お陸は布を勢いよく取り、自慢げに中身をお披露目した。
それは、一見最近呂磨で流行しているブロンドの巻き毛で青い目をした女の子の人形で、首元にフリル、腕は提灯袖のピンクのドレスを着て、愛くるしく首を傾げ両掌を上向きにして胸の前に出していた。
「なんだ、ただの人形じゃないか。」ミスター・レジデンスは鼻で笑ったが、次の瞬間彼の目は人形に釘付けとなった。
「いや、ただの人形じゃない。。。これは、、、」と自分の発言を訂正し、彼が発見したことを喜々として喋り出そうとしたその瞬間、お陸が「からくり人形だよ。」と身も蓋もない発言をしたので、ミスター・レジデンスは完全に拍子抜けしてしまった。
お陸はミスター・レジデンスのリズムを崩すことに成功したことで得意気に「あんたの推理を聞いている暇は今は無いんだよ。」と言ってミスター・レジデンスの肩をポンポンと叩くと、全員に向かって宣言した。
「これが爆弾運ぶから。まあ見てな。」
と言うとお陸は、劉煌に人形を床の上に置かせ、人形の掌にミスター・レジデンスが作った爆弾を乗せた。
するとその人形は、自らの両掌に物が乗ったことでスイッチが入り、前に向かって一直線に進みだした。人間がその奇妙な人形の後を目で追っていると、人形はちょうど10mの地点で突然止まり、こともあろうに両腕を左右に180度パカッと広げた。
その瞬間、ゾロンもフレッドもあっ!と大声を上げたが、ミスター・レジデンスはただ一人バッとそこから後方斜めに飛んで地面に伏せ、両腕で頭を抱えるように保護した。
胸の前で両腕を組んだお陸は、そんなミスター・レジデンスを冷ややかな目で見て言う。
「ここで本物の爆弾なんか使うわけ無いだろう?アンタじゃあるまいし。」
劉煌は、人形を回収しに前に進み、ついでに人形が落とした黒い小さな塊も回収すると
「と言うことで、この人形を爆破させたい位置から離れた所に置いて掌に爆弾を置けば、勝手に設定した距離を前進して任務を遂行する。」
と皆の元に戻りながら言った。
そして、皆の前に戻ってきた時、劉煌は人形を脇に置くと、自分の懐からアリーチェから受け取ったもう一通の紙を取り出してテーブルの上にバサッと広げた。
「こ、これはっ!」
ゾロンが色めき立った。
「そう、法王グラディウス3世が生前見つけていた地図よ。私たちが知っているカッチーニ会の主要拠点が全て網羅されているから、これが呂磨におけるカッチーニ会の全容と言っていいんじゃないかしら。」
劉煌がそう答えると、フレッドは訝し気に
「全ての道はテオンパン宮殿に通ずですか。。。」
と呟いた。
「ま、アンタは信じられないかもしれないけどさ、お嬢ちゃんと私は、夜、会の奴が通用門からテオンパン宮殿に入るところを見てるんだ。しかも、宮殿側の人も慣れたもんだったから、アイツはいつも出入りしてそうだったね。」お陸が説明した後、間髪入れずに劉煌は付け加えた。
「あ、師匠が言った会の奴って、ドクトル・アントニウスのことよ。」
これには、ミスター・レジデンスが食いついた。
「奴は、プロフェッサー・カッチーニの右腕だった!現在、会は奴が牛耳っていると考えて間違いないだろう。」
「じゃあ、テオンパン宮殿も彼らの手先なのか。。。」ゾロンとフレッドが信じられないという顔をして同時にそう呟いた。
しばし全員が地図をジーっと凝視した。
口火を切ったのはミスター・レジデンスだった。
「ちょうど3日後はプロフェッサー・カッチーニの命日だからな。会の本部に全員集まるはずだ。」
彼はそう言ってニヤリと笑いながら、地図の本部の場所を指でポンポンと指し叩いた。
劉煌は、全く女らしくなく両腕を広げてテーブルの両端を掴むと、全員を見渡しながら
「テオンパン宮殿は、表向き全くカッチーニ会との繋がりはないことになっているから、もしこの地図の通り地下道があって繋がっているならば、当日観光客を装ってテオンパン宮殿に入り地下道に人形を仕掛けて脱出すればいい。」と静かに語った。
ゾロンは不思議そうに「でも、どうやって人形を運ぶんだ?どうやって脱出するんだ?」と首を振りながら尋ねた。
劉煌は、テーブルから手を離し、男性陣の前で突然前屈すると、まるでフレンチカンカンのようにスカートのすそをギュッと掴んでからそれをバッと上に挙げた。
ゾロンとフレッドは紳士らしく、後ろを向いて劉煌の暴挙を見ないようにしたが、劉煌が男だと見抜いているミスター・レジデンスは、全くたじろぐことなく、まじまじと彼のスカートの中を見て、
「なるほど、スカート下のワイヤーを細工して少なくとも人形4体は隠し入れられるようになっているのか。その上ドレスの下は警察の制服ときている。そうか、人形を設置したらドレスを脱いで警察の格好で外に出るのか。」と感嘆しながら何度も頷いていた。
お陸はいつ持ってきたのか3名分の警察の制服をテーブルの上にバンと置き、
「当日は全員これを下に着るんだよ。入るときは観光客、出る時は上の服を脱いで警察官。他の観光客を巻き添えにしたくないからね、皆でちゃんと外に誘導するんだよ。」
と言うと、続けて
「これから当日まで現地で下見と練習だ。みんな変装して30分後にここを出るよ。」
と言ってからドロンと消えた。
~
その頃、中ノ国皇宮及び東之国皇宮では、北盧国の西乃国侵攻の報がようやく入っていた。
何しろ永世中立国の北盧国が侵攻した側である報など誤情報で、”西乃国が北盧国に侵攻した”の間違いだろうと、誰もが勘違いしてしまった為、事実確認に時間を要してしまった結果、両国とも情報が周回遅れになってしまったのだった。
逆に言えば、それほど北盧国が攻撃をしてくるなど、どこもかしこも全く思っていなかったのだった。
それ故、案の定中ノ国皇帝の成多照宗も、東之国の火事で亡くなった先帝の弟で、現在は甥である年端もいかない皇帝:簫翠袁の摂政:簫翠陵も、この報を聞いた時は「逆ではないのか?」と二度聞いたほどだった。
この千年、平和の続いた2か国の為政者は、この報で北盧国からの侵攻に備えて軍部の強化を考え始めた。
特に中ノ国では、西乃国とも国境を接していることから、皇帝の成多照宗の緊張感は半端なく、予定していた鷹狩も急遽中止となり、皇太子の婚約も無期限延期となった。ただ、このことは、水面下で対立していた皇太子派と第二皇子派の重鎮たちも今はそれどころではないと気づかせる出来事となり、一丸となって強兵に意識が向いたのは、中ノ国にとって幸いなことであった。
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