第二章 変改
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
それは、清聴がいくらなんでももう医者に見せなければまずいのではと思って、右往左往し始めた時だった。
劉煌は、まるでそれを察知したかのように、”うーん”とか細い声を出してから目をゆっくりと開けた。
慌てて彼の元に駆け寄った清聴は、心配そうに、「坊や、気分はどう?」と聞いた。
そして、彼が声を出しにくそうにしていることに気づくと、すぐに湯飲みに水を入れて彼に渡した。彼は、喉の渇きに耐えられずそれを一気に飲み干そうとしたが、しばらく使っていなかった彼の喉は、急激な変化についていけず、水が喉に痞えてゴホゴホと咳き込んでしまった。
清聴は慌てて湯飲みを劉煌から取りあげ、彼の背中をさすると、「坊や、ゆっくりだよ。喉が乾いているだろうがゆっくりお飲み。」と優しく声をかけた。劉煌は、しばらくして落ち着くとかすれた声で「ここは?」と聞いた。
清聴は、湯飲みを劉煌に渡しながら「ここはお寺だよ。私は住職の清聴。」と言うと、彼はうなずきながら、少しずつ水を飲んだ。3杯目の水を飲み干した時、彼は何かに気づいたのか、清聴から見ても明らかにハッとするとすぐに自分の胸元をまさぐり始めた。彼の顔色は折角良くなっていたのに、前よりももっと青くなり、すぐに布団から飛び起きて、辺りを探し始めた。それをみた清聴は、慌てふためいてあたりを探している劉煌に「大丈夫。私が誰もわからないところに隠したから。」と囁いた。劉煌は、初めて清聴の顔をまじまじと見た。
彼女は頭はおろか、何故か眉毛まで剃っていてヘアレスだった。
そんな人を見たことがなかった劉煌は、飲まず食わずの日々と聖旨が無くなっていることに加え、世にも不気味な尼僧を見たことから完全に血の気が失せ、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
まさか劉煌が、自分のことを不気味な尼僧と思っていたこと等とんと気づくはずもない清聴は、劉煌が怖がらないように微笑んでみせたが、眉の無い尼僧の微笑みは不気味指数がmaxまで上昇するだけで、それを見た劉煌の身体は無意識に震えだし、頭は真っ白になった。
そんな自分の外見の不気味さに気づいていない清聴は、さらに彼を安心させようとゆっくりと彼に近寄って行った。
劉煌は、抵抗しようと思うも、身体がついていかず、もう一貫の終わりと思って目をつぶった瞬間、何か暖かい物が劉煌の身体を包んだ。
劉煌が恐る恐る目を開けると、清聴が目の前に居て布団の両端を劉煌の胸の前で併せていた。
「冷えて風邪をひいたら大変。あったかくしとかないと。」と清聴は呟きながら劉煌の顔を見ると、そこで2人の目線がしっかり合ってしまった。
清聴はすぐに目線を外すと、俯きながら
「殿下、よく聞いてね。残念だけど、あなたの国は、もうあなたの国ではなくなったの。」と言いづらそうに話し始めた。
すると彼は、全く予想しなかった優しい展開に驚いて清聴の顔をまじまじと見つめた。
彼は、深呼吸してから、もう一度しっかりと清聴を観た。
たしかに彼女は髪も眉も無かったが、ぱっちりとした目、鼻筋が通った高い鼻そして形の良い唇をしていて、眉毛を書き髪を伸ばせばかなり美しい顔立ちだと思った。
彼は、ここにきてようやく芯から落ち着いて「わかっています。清聴殿、私を助けてくださりありがとうございました。」と丁寧に答えた。そして、清聴がどういたしましてと言う間を与えず「父も母も殺されたと思います。私を殺しにきた位ですから。」と小さい声だったが冷静にそう言うと、うつむいて両こぶしを握りしめた。
「じゃあ、誰が殿下をこんな目に合わせたのかご存知なのですか?」と清聴が驚いて聞くと、彼はまた落ち着き払った声で、「はい。」とだけ答えた。そして続けて「ただ、私が案じているのは、私をかくまうと、貴女に危険が及ぶのではないかということです。だから良くなったらすぐに、」と言っている最中の劉煌を清聴が突然手で制すると、「あんた、何水臭いこと言ってんだよ!」と叫んで、怒って立ち上がった。
何しろこの尼僧は、頭だけではなく、眉も綺麗に剃っているので、怒った時のその迫力たるや、想像を絶するものだった。
劉煌は、あまりの尼僧の変貌ぶりに呆気に取られていると、「あんたに言われなくても、そんなこと百も承知さ。大体あんた私を誰だと思っているんだい。私は中ノ国伏見村亀福寺の女住職、備前清聴だよ。男子禁制の尼寺の住職だ。」と小声だが語気を強めてそう言うと、身体を屈めて劉煌の顎を掴み、彼の目をシッカと見ると、さらに小さな声で「いいかい、あんたの名前はこれから小高美蓮。中ノ国伏見村亀福寺に住んでいる9歳の女の子。」そういうと、立ち上がって箪笥の引き出しからピンクの着物をむんずと掴み「早くこれに着替えて、髪は私が結ってあげるから。」と言って着物を彼に向かってバサッと投げつけた。
全く想定外の話に、劉煌の脳の中では、彼の思考回路が完全にオーバーヒートしていた。
そしてようやく我に返った劉煌は、自分の膝の上に落ちたピンクの着物をガバっと掴んで自分の領域外にそれを移動させると「だ、男子禁制の尼寺なら、なおさら早くここから出なければ。」と言った。ところが、「だからあんたは女なの!」と清聴から言われ、焦った彼は慌てて清聴に背を向け、おそるおそる自身の股間をまさぐった。そこに、男の大事な部分がちゃんと無傷で付いていることを、自身の手の感覚を通してしっかり自覚できた劉煌は、まずホッと胸を撫でおろしたが、今度は少し怒った口調で清聴に「わ、私は女ではありません!」と宣言した。
まだわからんのかと思った清聴は思わず「あんた、頭悪いねー。」と言うと、千年に一人の天才で、そんなこと言われたことのない劉煌は、とっさに「わ、私は頭悪くありません!西域の何言語もわかるし、最近は亜羅比亜の言語も。。。」と珍しく怒って反論すると、
「んなこと、生きていくのに何の役にも立ちゃしねーよ。」
と、最近彼が気づいた自分の弱点を容赦なく清聴につかれてしまった。
この言葉で、劉煌の内側はバサッと清聴に袈裟懸けに切り捨てられ、彼は沈黙してしまった。そして、清聴から目を逸らし、フンと横を向いた。
そんな劉煌に、彼女は、
「いいかい、私の言うことをよーく聞くんだ。あんたの命は狙われている。あんたは誰?西乃国の皇族の男の子だよね。だけどそれが中ノ国の庶民の女の子になったらどうよ。」
と挑戦的に囁いた。
劉煌は千年に一人の天才と言われた皇子だった。
だから清聴の言わんとしていることは、説明されなくてもわかっていた。
たしかに、そこまで身分を偽れば、たとえ劉操の前であっかんべーと舌を見せても気づかれないかもしれなかった。
それでも、彼は帝王学まで修めた皇子、、、もとい男子なのである。
何しろ参語三か国の中で、一番男尊女卑な国に生まれた彼は、帝王云々の前に、男子たるものがどうあるべきかを生まれ落ちた瞬間から徹底的に叩き込まれてきた。そして彼は、それに恥ずことなく今迄生きてきたのだ。そしてそれは劉煌の誇りでもあった。
そんな男尊女卑の国にあっても、白凛を援助したり等、彼自身が女性蔑視な人物では決してないのだが、男たるもの洗脳100%に達していたために、自分が女子として生きるということにその意識が大きな足枷となって、劉煌が先に進むことを阻んでいた。
その時、父の言葉がふっと劉煌の脳裏をかすめた。
「太子や、帝王たるもの、国・民のためには、時に大義親を滅することも必要となろう。よいか、困難な時ほど私情を挟むでない。私情を挟むでないぞ。」
しばらくの葛藤の後、劉煌は目を落としながら落ち着いて消え入るような小さな声でこう答えた。
「暗殺者は私の前を素通りするということですか。」
清聴は、「わかったなら、早く着替えな。それから、これから極力女のフリをするんだよ。まずは話し方と立ち居振る舞い。」というと、劉煌が先ほど払いのけたピンク地の着物を取って、彼に向って勢いよく投げつけた。
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