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第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 天乃宮に響き続ける劉操の高笑いの中、その様子を見ていた他の宦官たちは恐れをなして腰を抜かしそこにへたり込む者もいれば、慌てふためいて逃げ惑う者もいた。


 そのカオスを見て屋根の上の2人は、西域の広場で見た人形劇を思い出していた。

「ふー、噂には聞いていたけど、こりゃ正真正銘のとんでも皇帝だわ。」ポツリとお陸が呟く。

 劉煌は、傍から見るとお陸の呟きを聞いているのか聞いていないのかわからない感じで、ずっと声もあげずに同じ格好で下のおどろおどろしい光景を見続けていた。

 ”父上も母上もあんな風に奴に殺されたのだろうか......”

 そう思いながらも、お陸との特訓のおかげで眉毛一つすら動かさず、無表情を貫けるまで劉煌は成長していた。


 劉操は高笑いを続けながら、剣から手を離し、自室へと戻っていった。


 そしてベッドまで辿り着くと、ベッドを右足でこれでもかという位に勢いよく蹴とばした。


「おのれ、この寝台がいけないのだ!アイツの何かが憑いているに違いない!」


 劉操のベッドは、皇帝のそれに相応しく、木製の土台に金銀の装飾が飾られ、天井から吊り下げられた金糸で織られた蚊帳の中にあった。


「元はと言えばアイツが悪いのだ!朕を差し置いて、あんなクソガキに皇位を譲ると言いだすなんて!」


 そう叫びながら、蚊帳を天井から引き抜き、その見事な刺繍には目もくれず、手で引き裂いた。そして何度も何度もベッドを拳で叩き、足で蹴とばした。破壊されたベッドの破片は、その勢いでそこら中に飛び散り、それが棚にあった装飾品などを巻き込み、床にはもはやベッドの破片なのか、棚の装飾品の破片なのかわからない物が散乱しているというありさまになった。


 棚からはまず箱ごと玉璽が落ちて蓋が取れ、中から玉璽の持ち手が半分外に出てしまった。

「ありゃー、玉璽まで落っことして。」

 あまりのことにお陸は驚いて思わずそう口走ったが、劉煌は、それには何も反応しなかった。


 そして乱交のあまりの激しさに、劉操の拳は、もはやあの殺した宦官の血なのか、自分の傷からの血なのかわからないほど複雑に切れ、相当痛いはずなのに、ハイになっている彼は全く痛みを感じていなかった。


 それどころか、劉操は、玉璽だけでなく、棚から落ちた他の装飾品の一つが割れて、中から別の何かが出てきたことにも全く気づかなかった。


 しかし、屋根の上にいた劉煌はそれを見逃さなかった。

 ”こんなところにあったなんて!”


 劉操は、まるで荒れ狂ったヒグマのように完全にベッドを破壊しつくすと、その惨劇になんとか巻き込まれなかった床の片隅に大の字になって寝転がり、今度は突然「うおおおおお!」と、まるで狼のように吠え始めた。


 この頃になると、天乃宮に居る宦官も女官も皆息を潜めて、ただひたすら劉操台風が過ぎ去るのを待っていた。


 劉操が疲れ切っていびきをかきだしたのを見た劉煌は、突然屋根からそっと音も気配も消して劉操の部屋に飛び降りた。


 あまりに突然の突拍子もない命知らずな弟子の行動に、百戦錬磨のお陸もこの時ばかりは魂消てしまった。


 ”おいおい、いきなり何自殺してんだよ!”


 そんな師匠の心の叫びを知ってか知らずか、劉煌は何の躊躇もなく、劉操の癇癪の犠牲になって床に落ちていた元棚の装飾品の中に入っていた物を、これまた音も立てずに拾うと、すぐに屋根に向かって、これまた音も気配も消して飛び上がった。


 これには、屋根の上のお陸は完全に肝を冷やし「アイヤー、お嬢ちゃん、大胆にも程があるよ。つい先日説教したばかりじゃないか。思いつきで行動しないって。」と語気を強めながら囁くと、劉煌はしれっと、戦利品を手で弄びながらこう答えた。

「でも、いつも師匠は言っているじゃない。臨機応変に対応するって。とにかく早く宿舎に戻りましょ。きっとここの後始末をやれって起こされるだろうから。」


 そして、1時間後、劉操の吠え声もいびきも消え天乃宮に静寂が戻ると、宦官と女官は劉操の粗相の後始末を少しの音も立てずに静かに始めた。そしてそして、劉煌の予想通り、普段は天乃宮に近づくことすら許されていない後宮の宮女達にも声がかかり、劉煌たちは、夜中の1時に叩き起こされ、天乃宮の血生臭い惨事の後始末をさせられた。


 天乃宮の廊下の血の跡を拭いていた劉煌は、何も知らないふりをして、血の跡を追って皇帝の居室の扉を開けようとすると、すぐに監督役の宦官がやってきて小声で劉煌をしかる。

「ここから中は天乃宮付きの者たちのテリトリーよ。とにかく明朝までに、この廊下辺りの血の匂いを何とかするのよ。」

 劉煌はしれっと宦官にお辞儀をしながら答える。

「はい。わかりました。でも公公、血がちょうど扉の下の敷居の所にも飛び散っていて、扉を開けて拭かないと血の匂いが取れませんよ。」

 宦官はムッとしながら劉煌をシッシと手であっちに追いやると、そっと扉を開けて中に入り、すぐに扉を閉めた。


 劉煌はお辞儀をしながら、宦官が入るために開けた扉の向こう側を上目遣いで見た。

 扉の隙間からは劉操がまだ床に大の字になっている姿がチラッと見えた。そしてその周りを宦官が静かに片づけていた。


 ”いくら静かに片づけているからといって、あんなに気配があるのに気づかないで寝ているとは、これはなにか薬を使っているな。”


 劉煌は、肩をすくめてから、またしずしずとバケツの所に向かい、ぞうきんをバケツの中にいれると、バケツの中の水はみるみるうちに赤い色に変わって行った。劉煌は額の汗を手の甲で抑えてから、やおらバケツを持って天乃宮を後にした。


 そして、バケツの水換えを装って劉煌は、そのままあたふたしている周囲を交わしながら人知れず馬場に向かった。

 案の定、馬場の厩務員も全て天乃宮の惨劇の後片付けに駆り出されており、劉煌は、辺りに人がいないことを確認すると、一番の暴れ馬の前にスクっと立った。暴れ馬は、一瞬鼻息を粗くしたが、自分の視界を遮った人物が劉煌であるとすぐにわかり大人しく劉煌を自分の厩舎の中に入れた。

 劉煌は、その馬の鼻筋を撫でながら小声で「嵐号、ちょっと下に行ってくるから、見張りそ頼んだぞ。」と言うと、嵐号と呼ばれたその馬はそれがわかっているのか、嬉しそうに首を縦にゆっくりと揺らした。


 劉煌は、嵐号の厩舎の奥に行くと、その辺りに敷き詰められている藁をよけ始めた。そこには劉煌の記憶が正しければ、扉があるはずだった。そしてその記憶どおり、その扉を先ほど劉操の部屋で失敬した鍵で開けたが、恐らくクーデター後の10年開けたことがなかったのであろう、扉は鍵こそ開いたものの、押しても引っ張ってもうんともすんともいわなかった。


 ”天乃宮から行くしかないのか......”

 劉煌が途方に暮れていた時に、扉が勝手に内側からミシミシ音を立てて開き始めたではないか。

 劉煌は慌てて扉の上に乗り、開かないようにすると、下から「お嬢ちゃん、開けておくれよ。」と、お陸の声が響いてきた。

 劉煌は、驚いてすぐ扉の上からどくと、お陸が中から扉を開けるのを、外から扉を引っ張ってアシストした。

 3分後に扉が開くと、げんなりしたお陸が顔出した。

「なんだ、どこに出てくるかと思ったら、こんなところかい。下手すると、顔を出したら、馬の糞尿の洗礼を受けるかもしれないじゃないか。」

「それより、どうしてこの通路がわかったの?もう僕しか知らないはずなのに。」

「お嬢ちゃん!あたしのこと誰だと思っているのかい。あたしゃこの道ン十年のくノ一だよ。」


 お陸は、たまたま掃除の最中サボって壁にもたれかかった際に、その通路に繋がる壁を発見したことを劉煌に伝えずにそう偉そうに言った。


「どうやって皇帝の部屋に入ったの?」

「皇帝の部屋なんか入っていないよ。」

「じゃあ、どっから入ってきたの?」

 お陸は回廊の壁のからくり壁のことを劉煌に伝えると、劉煌は突然お陸のことを抱きしめ「ありがとう!師匠!」と言うと、今お陸が登ってきた階段を迷わず降りていった。


 厩舎に嵐号と2人残されたお陸は、嵐号と目が合うと、嵐号と睨み合いになった。

 嵐号は鼻息を粗くしお陸を威嚇したつもりが、目の前からお陸がパッと消えたので慌ててキョロキョロと辺りを見まわした。すると突然自分の背中に何かが乗ったことを感じた嵐号は、慌てて振り返ると、お陸が腕を組んで嵐号の背中にまたがっていた。嵐号は怒ってお陸を振り払おうと立ち上がってクールベットの体制になった。しかし、嵐号が前足をあげた時には既にお陸は嵐号の背中にはおらず、嵐号はまたキョロキョロと首を回した。すると何かが嵐号のお尻をペシペシと叩いたので、慌てて後ろを振り向くと、お陸が涼しい顔をして嵐号に向かって手を振った。


 厩舎でお陸が嵐号と遊んでいた時、もとい、お陸が嵐号をもて遊んでいた時、劉煌は地下で岩壁伝いに通路を歩いていた。そしてある場所にたどり着いた時、火種を付け、昨晩劉操の部屋で失敬した物を取り出すと、その岩壁の凹みにそれをあてがった。すると、その岩壁の一部が下に向かってゴトゴトと音を立てて開きはじめ、洞窟が少しずつ姿を現し始めた


 劉煌は目を見張って洞窟の中を見つめた。

 ”あった!”


 そこには埃をかぶった大小色とりどりの宝石を散りばめた黄金の箱が一つあった。


 劉煌はそれを手にとり、箱の蓋を開けると中から琥珀色の大きな玉璽が姿を現した。

 ”やっぱり!”


 劉煌は箱の蓋にたまった埃を綺麗にふき取ると、箱は火種の火を反射して虹色に輝き始めた。


 ”劉操は、本物の玉璽がこれだとは知らないのだ。部屋にあるレプリカを本物と思い込んでいるんだろう。”


 劉煌は、箱を抱えたまま、くまなく洞窟を見渡したが、そこには蒼石観音は無かった。

 ”やっぱりないか...もっともここにあれば、父上も知っているはずだから。”


 劉煌は、箱を元に戻し、洞窟の扉を締めて、天乃宮に続く地下通路を歩いていった。途中岩壁を何とか人が出入りできる程度に破壊した跡があり、そこをくぐって進むとお陸が見つけた天乃宮のからくり壁に行きついた。劉煌は、地下通路の存在を知られたくないことから、そのからくり壁が動かないように地下通路側からその壁を固定した。


 元来た通路を歩きながら、普通なら行き止まりと思ってしまうところを、お陸が突き当りの岩壁に耳を当てながら叩いて、頷きながらその岩壁を破壊した場面を目に浮かべながら劉煌は、頭を横に振りつつ厩舎の方に戻っていった。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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