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第二章 変改

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 亀福寺の女住職:備前清聴は、目が覚めると、うーんとのびをしてから床から出ようとしたが、あまりの寒さにまた上掛けをかけて横になってしまった。


 自分自身のぬくもりが熱となって放散し、一晩かけて布団全体へとそれが伝わり、すっかりぽかぽかになった床は、まるで春の日差しのように優しく、そして暖かくて、心地よいことこの上ない。


 特にこんなに寒い秋の朝であれば、この床の中こそ、真の極楽浄土である。


 そんな思いにウトウトしてまどろんでいると、いつものように頭の中のマインド清聴が、ムクムクと起きだして、

 ”いや、待て。ここでまた寝てしまっては、元も子もないでしょう。”と言った瞬間に、彼女の大きな目はバッと開いた。


 ”しまった。またやっちまうところだった!”


 慌てて文字通り飛び起きた彼女は、『彼女がどうやって床から出たかが一目でわかる状態』の床のままで、慌てて着替えると、障子をソーっと開けて、部屋の外にそっと出た。すり足で回廊を急いでいると、途中滑りが悪いところがあった。


 ”全く、回廊の掃除当番は誰だったっけ。ちゃんと隅から隅まで拭くようにまた言わなくちゃ。また足を捻挫するところだったよ。” 


 彼女はそう思いながら、何故かふとこの寺での生活が始まってからのことが頭によぎった。


 彼女がここの住職に落ち着いて、もうすぐ8年になろうとしていた。

 みなし子を引き取る時は、その都度変化があるものの、みなし子だってそうそういるものではなく、ここ2年は毎日同じことを繰り返す日々で、ただ粛々と暮らしていた。


 元来煩悩の塊だった彼女には、そういう代り映えのしない日を暮らすということほど辛い修行は無かったから、自分も良く成長したものだと、水場で顔を洗いながら今日も自分自身を褒めていた。


「しかし、今朝の水は冷たいねぇ。今年はいつもより早く冬支度が必要かもしれないねぇ。」と独り言を呟きながら、子供たちには禁じている本堂を斜めにサーっと滑りながら横切ると、扉を開けて、わらじを履き、外の階段を降りていった。


 秋になって枯れ葉も多い昨今は、朝の御勤めの前に外を箒で履くのも彼女の日課の一つだった。


 4人いる女の子たちにさせるのも手だが、朝の澄んだ空気を身体に取り込むのも気持ちいいということもあって、今日もいつものように、外の裏小屋から箒を出すと、ざっざっと勢いよく地面に箒を滑らせ始めた。

 彼女はいつも通り、堂の北側から東側に履き進めて、南側を履き、さらに西へと進んだ。


 と、ここまでは、いつもと同じ代り映えの無い日だった。


 ところが、ここからが、代り映えどころか、彼女の人生を大きく変える日に変わったのだった。


 なんと西側の敷地内で、垣根と蓮池の間に子供が倒れていたのだ。


 しかも外見からみて、どうみても男の子だ。


 ”ここは男子禁制の女の園。たとえ、年端もいかない子どもであっても、男が入ってはならない規則の尼寺、ええい、つまみだそうか。”

 ”いや、待てよ。倒れている子を助けないってのは、仏の道から逸れてない?”

 ”男子禁制の尼寺の仏門の場合、どっちが優先事項かしら?”

 等自問自答しながら、少しずつ倒れている子に近づくと、清聴は、持っている箒で倒れている子をツンツンとつついてみたが、全く反応がない。


 ”やだよ。死体?縁起でもない。”

 ”いや、待てよ。ここって死者を供養するところでもあるのでは?縁起でもないなんて、寺が言っちゃダメでしょ。”

 そう、マインド清聴が脳の中で活発に動きまくっている状態で、彼女は倒れている子の前に跪くと、その子にそっと触れた。


 ”まだ、生きている!”

 ”とりあえず、私の部屋に運ぼう。皆が起きてこないうちに!”

 そう思ったら、もう行動は早かった。


 彼女はその場に箒を投げ捨てるとその子を抱えて、お堂の前の階段を駆け上り、本堂の御本尊前をそのまま横切って、自分の部屋に連れて行った。


 そして、まだ片づけていなかった布団の上にその子を寝かすと、腰についている装飾品を取り始めた。


 まず一つ目の佩玉を外し、それを彼女の目の高さまで持ってくると、もう一方の手でひっくり返してみた。

 ”なになに、通行手形?子供のくせにいっちょ前だね。”

 そして次の佩玉を外し始めた。

 ”いやこれは上物の佩玉だね。煌って彫ってある。”


 装飾品を外して一つずつテーブルの上に乗せた後、子供の帯を外して着物を脱がせようとした時、彼の懐から布の巻物がポトっと落ちてきた。

 それを手でポンと払い、着物を脱がせて肌着だけにすると、楽になったのか、男の子は、「はあー」と大きな息をした。


 脱がせた着物を畳みながら、清聴は、酷く顔をしかめて

 ”ずいぶん上等な布だね。この子持ち物と言い、破れたり汚いけど服といい、かなり金持ちなんじゃないかしら。親御さん心配してるだろうに。”と思った。


 そして、先ほど彼女が払った巻物がまだ布団の上にあることに気づくと、布団に近づき、巻物を無造作に掴んだ。すると彼女の掴み方が良くなかったのか、綺麗に巻かれていた巻物は、くるくると音を立てて広がり、何気なく中身を見てしまった彼女は、驚きのあまり、巻物を落としてしまうと、その場で腰を抜かしてしまった。


 しばらくして、彼女は肌着だけになって横たわっている男の子の側迄、四つん這いで行くと、その子の顔をジッとみつめた。


 ”まさか、こ、この子。。。”

 ゴクリと唾を飲み込むと、彼女は震える手でその男の子に優しく上掛けをかけてあげた。


 そして、しばらくその男の子をジーっと凝視した後、何を思ったのか、今度は彼の頭を優しく優しく優しく3回撫でると、右手を上に伸ばしてその髪を一つに束ねている金の冠を取り、長い豊かな黒髪を上掛けの上に垂らした。


 しばらく彼の横で、その姿を眺めていた彼女は、思い出したように棚に向かうと、箱と風呂敷を取り出し、箱には彼の聖旨を含む装飾品一式を、着ていた服は畳んで風呂敷に包んだ。そして梯子を出して天井にかけ、その箱と風呂敷を持って梯子を昇ると、天井の板を外して、屋根裏にそれらをそっと音も立てずに置いた。


 男の子はよっぽど疲れているのか、熱などの病気の兆候は見られないのに、コンコンと眠り続けて起きる様子は見られなかった。


 しかし、その男の子:劉煌の脳の中は外から見える様子とは正反対に、休むことなく活発に動いていた。


 彼の脳は、まず彼の関係者を、劉操の標的になる可能性の有無で選別し、有の者達を、記憶として残しておく者と、そうでない者にテキパキとふるい分けはじめた。


 彼の脳は、まるでスーパーコンピューターのように、010101......と記憶を仕分けし、最終的に6人だけを残し、あとは全てデリートした。


 次に、彼の脳は、記憶として残しておく者についてのデータのソートを開始した。


 その後、彼の脳は、彼の心を起動させると、それと連動させ、記憶に残す者達の記憶のありかを含めて、慎重にデータの保存を開始した。


 まず、すでに絶命しているであろうが、今後彼の記憶に容易に顕れることは好ましくない者として、父母の記憶をそれぞれのフォルダに納め、それに鍵をかけて顕在意識に浮上させないようにした。


 また、恐らく存命しているであろう、彼の最も大切な友人達:五剣士隊、特に白凛に関する自分の心と脳の情報を、一つのフォルダに納め、鍵をかけるだけでなく、一番奥深い層にしまい、その次の層に李亮、孔羽、梁途をこれまた一つずつフォルダを作成し、まるで白凛を守らせるように配置した。


 ”これで、大丈夫だ......”


 劉煌の脳と心はこれでようやくホッとして、心も体もしっかり休ませるべく深い眠りについた。


 清聴は、起きる様子の無い劉煌を寝かせたまま部屋の扉を閉めると、外側から鍵を閉めて、朝の御勤めのために本堂に向かった。


 本堂では、もう正座して待っている女の子たちがいた。


 パッと見て1人足りないとわかると、清聴は、キッとして「小春は?」と皆に鋭い小声で聞いた。


 一番年上の夏朮が、「また起きたくないって言って来てない。」と困った様子で答えた。


 それを聞いた清聴の顔が、みるみるうちに不動明王のように変わると、女の子たちは一斉に立ち上がり、すぐ連れてきますと言って、走り出した。だが清聴が、それを見て、うんと咳払いをすると、全員走るのを止めて、速足で本堂から出た。


 ほどなくして、まだ眠ったままの小春が3人に引きずられてやってきた。


 一番末っ子の細身の柊が、「最近小春ますます重くなっていない?」と聞くと、「小春は基本喰うか寝るかどっちかだから。」と夏朮が肩で息をしながら答えた。

 全員で無理やり小春を座らせると、小春はそのままの形で前に倒れた。

「皆、どきなさい。」と清聴が言うやいなや、彼女は警策を高く振り上げ、小春の背中をそれでビシッと叩いた。


ビシッ

ビシッ


それほど広くない尼寺の本堂に警策が背中を直撃する音が3回こだましたところで、ようやく小春がうーん、というと、本堂の床についている自分の顔を少し上げて、薄目を開けた。そして、清聴がもう一振り構えたところで、小春はハッと気が付き、飛び起きて姿勢を正した


 それを見た清聴は、警策を自分の横にドンと降ろすと、「朝の御勤めを開始します。皆位置について。」そう言って、何事もなかったかのように、内陣に入って座り、お経を唱え始めた。


 御勤めが終了すると、いつも全員で朝食作りである。


 まず全員で井戸水をくんでくると、一人は、囲炉裏に吊るした鍋に研いだ米と五穀を入れ、水をたっぷり注いで蓋をする。待つこと1時間もすればお粥が出来上がる。もう一人は、寺の裏手にある畑から野菜をとってきて野菜の調理をする。あと一人は汁物を作り、最後の一人は畑の手入れと鶏の世話をしてから配膳をする。


 ただ、今日は、清聴だけが、自分の分を自室で食べると言って、出来上がったものをお盆にのせて出て行ってしまった。


「ままが一緒に食べないなんて、絶対小春のせいよ。」

と秋梨が責めるように言うと、もうおかずをぱくぱく食べながら、「しゅぐ、にゃんでも、しとのせーにしにゃいめ。(すぐ、なんでも、ひとのせいにしないで)」と小春が口いっぱい物を入れて言ったので、夏朮が、「小春!」と清聴のように叱った。


 小春は口のものを全て飲み込んでから、げっぷをすると、茶をすすって、「すぐ、なんでもひとのせいにしないで。」と言い直した。


「全くあんたは、どうしてそんなにひねくれているの。」夏朮が怒ると、「ひねくれてなんかないよ。できないことはしないだけ。」と小春は全く悪ぶれずにそう弁解した。

「でも、ちゃんと畑と鶏の世話はやってるよ。ごちそうさま」と言うと、小春は、さっさと自分の食べたものを片づけて、その場から出て行ってしまった。

 残った3人は、お互いに「どうしようもない。」と目くばせしながら、ゆっくりと朝食をいただいた。


 備前小春はこの寺の唯一の清聴の実子であり最初の子どもである。


 清聴は小春と7年前にこの寺に越してきた。その翌年、清聴は、みなし子の4歳の夏朮と3才の秋梨を相次いで引き取ると、女手一つで3人の女の子を育ててきた。それを見てきた村の長は、2年前に道端で捨てられていた子がいたと言って連れてきたのが柊で、唯一小春より年下の子だ。


 小春以外は皆、清聴の言いつけを守り良い子なので、清聴と暮らした年月が一番長いはずなのに、小春はいつも肩身が狭い思いをしてきた。


 小春だって本当は皆のようにいい子になりたかったのだが、朝はどうしても起きられないのだ。


 毎朝のように怒られるのが続くと、そのうち小春の中で何かがはじけて、できないものはできない、という境地に至った。

 それでも、今日は何十日に1回か起きる、”落ち込みデー” で、なんで自分は朝起きられないのだろうと自問しながら、回廊をトボトボと歩いていると、彼女は清聴の部屋の襖が少しだけ開いていることに気づいた。

 小春が何の気なしに、清聴の部屋を覗くと、清聴の側で知らない子が寝ているではないか。


「まま、また子供を拾ったのかなぁ。」


 実は小春の弱点は朝弱いだけではない。このような不適切発言や不適切TPOも多く、さらにそれを指摘して説明しても、なかなか受け入れられないという弱点もあった。


 話を元に戻そう。


 朝食会場で不快な気分になった小春は、朝食後自分の部屋に戻ろうとした時に、清聴の部屋の扉が少しだけ開いていることに気づいた。これは建付けが悪いためにきっちり閉まらないだけで、小春自身の部屋の扉も同じことが起こっているのだが、小春はなぜか今朝は妙にそれが気になってしまった。そして何の気なしに清聴の部屋を覗いた彼女は、いつもとは違う中の光景に、いつもノックしてから入室するように言われているのを忘れて、バッと扉を開けると、知らない子の寝ている側に駆け寄って、「まま、この子誰?」と聞いた。


 この男の子をどうやってかくまうかを真剣に考えながら朝食をとっていた清聴は、いきなり扉を開けられ、一番見られたくない人物に見られたくない人を見られて、完全にパニックになった。


 清聴は流し込んでいたお粥にむせながら、「あれだけ勝手に入るなと言っているでしょうが!」と言って雷を落とした。


 先ほどは小春の弱点ばかりを話したが、人間誰しも弱点ばかりではない。

 小春にも強みはある。

 小春の強みは、どんな雷にもめげないことである。


 小春は、誰もが震えあがる清聴の雷をもろともせず、「だって、扉が少し開いていて、そこからこの子が見えたんだもん。ね、この子誰?とっても美人さんだね。小顔だし、お鼻も高いし。眠っているからわからないけど、目はぱっちり大きいのかな。」とつぶやいた。


 その言葉に清聴は、ハッとすると、痰をえへんと切ってから、「あんた、なんで小顔とか鼻高いとか目が大きいとか気にするの?」と聞くと、「柊と一緒にいると、いつも柊は小顔で鼻高くて目もぱっちりで美人だっていわれて、私は顔でかくて、小春じゃなくて大春だって言われるんだよ。それに鼻も低いし、目もちっちゃくってかわいそうって言われる。」と小さい口を尖らせて両手の指をくるくる回しながら答えた。


 ”ちっ、全く村の衆はろくなこと言わないね”と清聴が思っていると、いつの間にか劉煌の側を離れ、彼女の横にきて座っている小春が彼女の腕を取りながら、「ねえねえ、この子なんて名前?」と聞いてきた。


「この子の名前は、り、、、」”劉煌じゃない”

 ”なんて名前にしよう。。。そうだ、この子の特徴:小顔・鼻高な美人そして蓮の池で見つけた!”

「この子の名前は、、名前は、こ、小高、、、小高美蓮(こたかみれん)だよ。」

 ”おおこれなら適当につけたけど、絶対忘れないし間違えないわ。”


「小高美蓮か。確かにそんな顔しているね。」と小春が嬉しそうに清聴を見たので、焦った清聴は、「ど、どこがそんな顔なの?」とおそるおそる聞くと、「なんとなく。」と小春は言ってすくっと立ち上がり、音を立てて、眠っている知らない子のところに行くと、劉煌改め小高美蓮をゆすりながら、「朝だよ、起きなよ美蓮」となじった。


 それを見ていた清聴は、「美蓮は気を失っているから、しばらく目覚めないと思うよ。あと、美蓮が目覚めるまで、皆には美蓮のことは黙っていて。」と小春の隣にやってきてそう言った。


 小春は、「うん!」と嬉しそうに返事したが、清聴は絶対黙っていないだろうなと思った。


 構えていたけれども、清聴の予測は外れて、小春は他の子に小高美蓮のことは一切話さなかった。


 ただ、小春は、清聴には、ムフフといつも笑いかけてきて、他の子たちはそれを見て気味悪がっていた。


 清聴は、たった一つのことを覗いて、今迄通りの日課をその後も続けた。


 そのたった一つのこととは、夕方近くになると寺を出て、村の女衆が夕餉の支度のためにたむろする村の水場に行って、女衆の話に耳を傾けるようにしたことだった。


 そしてある日、彼女の待っていた情報を皆が口々に話している時がやってきた。


 それは、


『西乃国で皇帝の弟が皇帝を殺して、天下を取ったらしい』という内容だった。


 その他にも、『天下を取った新皇帝はとても野蛮な上に残酷で、先帝だけでなくその家族全員、皇后も側室も皇太子もみんな殺したという話』や『気に入らない奴は誰でも皆公衆の面前で打ち首の刑にして殺しまくっている』という情報もそこで入手した。


 ”やっぱり政変が起こったのか。”そう思いながら、女衆の話に耳を傾けていたものの、彼女の心は、寺の自室の床に伏せている未だ目覚めぬ西乃国の前皇太子の生末を案じていた。


 しかし、劉煌は、この中ノ国の田舎の村にまで西乃国の情報が届いてもまだ眠り続けていた。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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