表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/129

第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 それから2日後、役所から家に帰った孔羽に1通の手紙が届いていた。


 孔羽はその宛名書を一目見るなり、それが李亮からの物であることに気づくと、それを鷲掴みにし、いつもとは違って食卓につくよりも先に自分の部屋に飛び込んだ。


 そしてすぐに封筒を開けて中身を取り出すと、えっと叫んでその場で立ち尽くした。


 しばらく呆然として部屋に突っ立っていた孔羽は、我に帰ると「忘れ物を取りに行く。」と言って家を飛び出した。


 孔羽は役所に戻ると、忘れ物をしたと言って文書管理室に入って行った。


 そこには、いつも通り袋に入った郵便物が置いてあった。


 孔羽は迷わずその袋をひっくり返して中身を全て床にぶちまけると、必死になって国軍人事管理からの郵便物を探した。

 探し続けること5分でようやくお目当てを見つけると、孔羽はすぐにいつものように封筒を傷つけないように中身を慎重に取り出して読んだ。


 ”亮兄は、本当に西域への侵攻部隊に合流することになったんだ。”

 ”お凛ちゃんが今のところ無事なのは良かったけど、下手すると2人ともそこで戦死してしまう。どうしたものか......”


 そしてふと郵便物の散乱した床に視線を落とすと、そこには、皇宮の筆頭宦官:石欣宛の郵便物があった。

 ”これは、これは。間違って役所の方の袋に入っているなんて。”

 ”えっ、待てよ。よし、これを口実に皇宮に行って梁途と話そう。”


 皇宮内に届ける文書を見つけた孔羽は、部屋にあった入宮手形をガバっと掴んで皇宮へと走った。


 しかし、もう辺りは真っ暗で、皇宮内でも文書を預かる部門に誰もおらず、孔羽は門の衛兵に直接宛名の人物に文書を渡したいと申し出た。衛兵は面倒くさそうな顔をしたが、宛名が石欣であると見るや否や血相を変えて、孔羽に皇宮内を案内する衛兵をつけると言って、衛兵宿舎に走って行った。


 孔羽が皇宮の銚期門のところで、腹減ったぁと独り言を呟いて横に揺れながら衛兵が戻ってくるのを待っていた時、衛兵宿舎では、誰が猫の首に鈴をつけに行くのかで揉めていた。

「石公公の機嫌が良ければいいよ。もし悪かったらもう将来はないからな。」

「将来ったって、俺たちはノンキャリだ。最初っから将来なんてないんだよ。」

「じゃあ、誰が付きそう?」

「まったく、何でこんな物を文書係がいない時間に運んでくるかなぁ。」


 梁途は、いつものように後宮の蔵の掃除を追えて衛兵宿舎に戻ると、いつにもなく騒然としている場に驚いて顔をしかめた。


「みんな、どうしたの?」

 梁途が軍服の埃を払いながらそう聞くと、その場に居た全員がまるで神を見たかのように梁途の方を振り返った。


「梁途、梁途だったら石公公と面識があるだろう?梁途が案内してやってくれよ。」

「何?案内って?」

「役所のデブが石公公宛の文書が間違って役所に来てたって、こんな時間になって持ってきやがったんだ。」


 役所のデブ・文書・持ってきた


 この3つのキーワードで梁途は、”文書を時間外に持参した役所のデブ”が誰なのかがわかってしまい、ちょうど彼も孔羽に後宮の蔵の秘密をシェアしたかったこともあり、内心はタイムリー!と思いつつも、それをおくびにも見せないどころか、思いっきり嫌そうな顔をして「つまり、俺に石公公の所にそのデブをエスコートしろっていうこと?」と言うと、その場に居た全員がうんうんと頷いた。


 梁途はため息をつきながら「これ高いからな。皆昼飯3回ずつ俺におごるって条件でどうだ。」と提案すると、全員がうんうんと頷き、それを見て梁途は更に大きなため息をつくと「じゃあ、行ってくる。」と渋々嫌そうにそう言ってから衛兵宿舎を後にした。


 ”やったー。これで数か月は、昼飯代、かからない。”


 孔羽は近づいてきた衛兵が梁途だとわかると露骨に嬉しそうにして、お辞儀をしながら「お前に出会えればいいなと思っていた。亮兄の言葉を借りるなら、それが天意だったらお前にバッタリ出くわすだろうと思っていた。」と梁途にしか聞こえない位の小声で言ってニッコリ笑った。


 梁途は孔羽にお辞儀を返しながら「周衛兵が、役所のデブが来てるって言ったから、俺はすぐお前だってわかってこの役を買って出たんだ。全然天意じゃない。」とこれまた孔羽だけにしか聞こえないように言ってニヤリと笑った。


 孔羽は梁途の回答にムッとしながらも「とにかく石欣公公の所へ連れて行けよ。」と言うと、梁途を無視して皇宮内をサッサと歩き始めた。


 既に真っ暗な皇宮内は、もう誰も歩いている人等いない。ただ、禁衛軍の巡廻はあるので、どこかで禁衛軍には出くわすだろう。


 梁途は長いストライドですぐに孔羽に追いつくと「孔羽殿、起伏の激しい近道を行かれますか?それとも平坦だけど遠回りの道?」と聞いて意味深に笑った。孔羽は梁途の問いに益々ムッとしながら「遠回りで。だけどその理由は平坦だからじゃないからな。お前に話があるからわざわざ口実つけて皇宮にまで来たんだ。」と言った。


 久しぶりに孔羽に会えた梁途は嬉しさのあまり、孔羽をからかって「ほう。孔羽殿ともあろうお方が私なんぞに話とは、さてご用件は、、、」と茶化して言いかけると、孔羽は彼の話を遮って静かに一言呟いた。

「お凛ちゃんの消息がわかった。」

「えっ・・・・・・」

 梁途は、孔羽の横で思いがけない話に絶句して歩みを止めると、孔羽は目線を外さず前を向きながら梁途を置いて歩き出し、また話を始めた。

「亮兄が、お凛ちゃんの居場所を見つけたんだ。お凛ちゃんは国軍の校尉になって西域侵攻部隊の前線基地に居るって。だから亮兄は、お凛ちゃんのいる前線基地に異動することになった。」

 ここで梁途は別の意味で焦り「な、なんだと?それじゃ下手すると2人とも戦死しちゃうかもしれないじゃないか。」と言うと、孔羽も「僕もそう思ったよ。だけど、亮兄の異動は正式に決まっている。国軍の人事管理から通達が出ているからな。」と淡々と言った。


 2人はしばらく無言のまま道を歩き続けた。


 沈黙を破ったのは梁途の方だった。

「実は、俺もお前に話しておきたいことがあったんだ。」

「なんだ。役所のデブに話があるのか?」孔羽は恨めしそうに厭味ったらしく応えた。

「違うって。そう言ったのは周衛兵だもん。俺じゃないもん。」

「だけどそれで誰かすぐわかったんだろう?同罪だ。」

「ああ、もう機嫌直してくれよ。それより俺の世紀の発見!でもどうやったらアイツに渡せるだろう?」

「アイツ?」

「ああ、ア・イ・ツ!」

「お前の言っているアイツって、僕が思っているアイツ?」

「他にアイツって誰がいるんだよ。亮兄と3人で決めただろう。」

「何見つけたんだよっ!」孔羽は梁途にしか聞こえないくらい小さな声だが、非常に語気を強めてそう言い放った。

 梁途は辺りをもう一度よく見直してから、孔羽の耳元でこう囁いた。

「後で見せる。」


 2人はまた沈黙したまま歩き続けた。


 遠くに後宮の灯りがポッと灯っているのが見えてくると、梁途は呟いた。

「もうすぐ石公公の楼だ。」


 果たして2人が石公公の楼の前に着くと、護衛のキャリア組禁衛軍の兵士達が胡散臭そうに2人を見て何用だと告げた。


 それに孔羽が答える前に梁途がお辞儀をしながら「役所に石公公宛の手紙が誤って配送されていたそうです。」と言うと、孔羽も手紙を持ちながらお辞儀をした。


 護衛が孔羽の持っている手紙を取ろうとすると、孔羽は慌てて手をひっこめ「文書は必ず本人に手渡しということになっております。申し訳ございませんが、石公公にお取次ぎを。」と言うと、「こんな遅くに失礼だろうが。」と護衛が事もあろうに孔羽を蹴とばそうとした。孔羽は太っちょだが、動きは機敏でそれをサッとかわすと「早くお届けした方がよいかと思いましたが、では明日出直してまいります。」と言って、踵を返した。


 何しろ、石公公への手紙はついでで、梁途に李亮と白凛の話を伝えるのがメインだった孔羽は、本当にそのまま帰るつもりだった。


 ところが外の騒々しさに気づいた石公公が供を従えて楼の扉を開け、回廊上に立つと「こんな夜更けに何をやっているのか?」と冷たい声で言い放った。


 辺りは一瞬にしてまた別の緊張感で包まれ、全員が石公公に向かってお辞儀をした。


 孔羽も慌ててお辞儀をすると「石欣殿宛郵便物が役所宛に紛れていたので持参いたしました。」と言って、手紙を恭しく差し出した。


 石公公は、供に向かって顎で合図すると、供の宦官は、孔羽の側に来てこちらにと言いながら孔羽をエスコートした。


 孔羽が供の宦官とやってくるのを白い目でムッとしながら見ていた石公公は、孔羽が跪いて差し出した手紙をフンと言って粗々しく引っ掴むと、手紙の宛名書を見て真っ青になった。石公公は、すぐにその横の差出人名を見るや否や、その場で封書を開け傍から見ても大慌てで中を確かめた。


 そして石公公は、すぐに姿勢を正すと、皆に向かって叫んだ。


「陛下が明後日にご帰還なさる!すぐに準備に取り掛かれ!」


 その場の全員にサーっと緊張が走ると「御意」とその場の全員がお辞儀をしてから踵を返し、全員がバラバラの方向に慌てて走り出した。


 梁途も呆気に取られている孔羽の元に駆けつけると「孔羽殿、すぐに門までお送りします。」と言って孔羽を立ち上がらせた。


 すると「待て!」と言う石公公の声が響き、全員がそこでダルマさんが転んだのように止まった。


 皆の注目の中、石公公は「孔羽とやら、気転をきかせてこれを持ってきてくれてありがとう。もし気づかずにおれば、明日役所から皇宮の文書管理部に転送されていただろうから、到底準備が陛下のご帰還に間に合わなかった。」と言うと、やおら自分の指から翡翠の指輪を外し、なんと孔羽にそれを渡して褒美だと言った。


 これには、貰った孔羽よりも皇宮内に勤務する者達の方がぶっ飛ぶほど驚き、石公公が楼内に戻ると、突然禁衛兵や宦官達の孔羽に対する態度が180度変わった。


 特にキャリア組の衛兵は、突然下手に出て孔羽に取り入ってもらおうと、彼を門まで送ると言ってきたが、孔羽は梁途の方をチラッとみてから「梁衛兵が案内してくれたので、見送りも彼にお願いしたい。」と言うとどっこいしょと言って立ち上がった。


 孔羽と梁途はその場の全員に向かってお辞儀をすると、もと来た道をトボトボと歩き始めた。


 眠りにつきかけていた皇宮の至る所が、陛下御帰還情報の伝達と共に活気出して行く様を2人は黙って歩きながらボーっと見つめていた。


「見せるって言ってた物は?」

 突然孔羽が沈黙を破って梁途に聞くと、梁途は辺りを伺いながら「こっちだ。」と言って孔羽を右に曲がるよう促した。


 2人はどんどん活気付いた所から離れ、人っ子1人居ない真っ暗な元来た道と反対方向に進んでいった。


 その道は、大きな蔵の前に続き、蔵の前で梁途は辺りを慎重に見渡してから、徐に懐に手を入れ、鍵を出し、蔵の南京錠を開けると素早く扉の中に孔羽を押し込んだ。


 孔羽は怪訝そうな顔をしながら梁途に引っ張られるように奥へと進むと、梁途は1番奥の棚の所で立ち止まり、孔羽に一緒に棚を動かすように伝えた。


 渋々言われた通りに梁途を手伝った孔羽はその床に現れた扉に目を丸くすると、梁途は迷わず扉を開けて階段を降りた。


「何してんだ。」

 孔羽は床に這いつくばいながら、階下に向かって心配してそう言うと、梁途はすぐに階段を昇って孔羽の横に立ってからまた一緒に棚を戻すよう伝えた。


 梁途は小声で「これを預かって欲しいんだ。」と言うと、上等な布で織られた大きな巻物を孔羽の胸に押し付けた。「誰にも見つからないように上手く着物に隠してくれ。お前の体型なら誤魔化せるだろうから。」そういって無理矢理孔羽の懐の中に巻物を入れようとする梁途に、何がなんだか訳がわからない孔羽は自分の着物の衿元を手で抑えて抵抗しながら言う。


「お前、何やってんだ。それに預かれって言われても、何かもわからない物、はい、そうですかって預かれるか。」

「先帝の聖旨だ。アイツの身分を保証する。」

 間髪を入れずに淡々と梁途はそう言うと、泡を食っている孔羽の手の抵抗が緩くなった事をいいことに、聖旨を孔羽の懐の中に、外から見て全くわからないように上手く詰め込んだ。


 梁途は慎重に蔵から出ると、孔羽に手で蔵から出るように合図した。孔羽も辺りを確認して蔵から出ると、梁途は素早く蔵の南京錠を締めて、さっきとは別の道を案内し始めた。


 その道は暗く、動き始めた皇宮の喧騒とは裏腹に、全く人気のない異空間だった。


 梁途は道を案内しながら周囲に誰もいないのにヒソヒソと話し始めた。

「それにしても、お前科挙といい、本当についているな。初対面で石公公から嫌われることはあっても、褒美を貰えるなんてありえない。将来を約束されたようなものだぞ。」


 しかしそう言われた当人はその意味の凄さを全くわかっていないようだった。


 しばらく歩いて思いついたように孔羽が口を開いた。

「そう言えば、親が言ってたな。有名な占い師に名前をつけて貰ったって。幸運を引き寄せられるようにってさ。」

 それを聞いた梁途は至って真面目に

「ホントかよ。その占い師って誰だよ。俺もみてもらって名前変えたい。」と言った。

「確か諸葛亮みたいな名前だったけど忘れた。名前聞いた時いかにもって感じで怪しいなって思ったんだよ。でも今お前に言われる迄、自分がツイてるなんて思いもしなかったよ。でも一体全体なんで名前を変えたいのさ。」

 孔羽は、狐につままれたような気分になりながらそう梁途に尋ねた。


「俺だけ皇帝からの口利きが無かったって忘れたのか?」

 梁途の冷ややかな声色が耳に入った瞬間、孔羽は心の中で冷や汗をかきながらも、それを顔に出さないようにしながら、短い脚で最大のストライドをもって歩みを速めた。


 銚期門に着いた2人は、お互いによそよそしくお辞儀をしてから孔羽は門を潜った。彼が無事門外に出たことを確認して、梁途の足は衛兵宿舎に向きを変えた。


 “頼むぞ。孔羽。お前のラッキーな名前でアイツの宝を守り抜いてくれ。”


 一方、家に戻った孔羽は、またもや食卓につくことなく自室に籠ると、やおら懐から梁途に押し付けられた物を取り出し丁寧に机の上に置いた。


 孔羽は蝋燭を灯してから、机の前に座って徐にその巻物を開くと、中を見て腰を抜かさんばかりに驚いた。


 “これは確かに皇宮に置いていたら危険だ。”


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ