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第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 劉煌が、蒼石観音の秘密は、後宮の倉庫にあると気づいた頃、西乃国第二の都市:中安にある国軍参謀本部では、李亮がやはり孔羽と同じようにメールボーイのような仕事を与えられて1年半が過ぎようとしていた。

 そして孔羽に諭したように、彼自身も同じように文書を盗み読みしては、情報を貯め込んでいたが、その日いつもと同じように盗み読みした文書を彼は危うく厠の便器の中に落とすところだった。


 それには、この1年半にして初めて、彼がこの10年間毎晩のように星を見上げては想いを馳せ、血眼になって探し続けてきた人物の名前が書かれていたのだ。


 ”お凛ちゃんが。まさか西域との戦いの前線に居たとは。”


 李亮は、震える手でその文書を何度も読み返した。


 ”前線に出征のはずだった俺が参謀本部に代わって、俺ってついているって思っていたけど、本当は全然ついていなかったぜ。”


 その文書は、趙明という人物から国軍参謀総長:関嘉宛の手紙で、北盧国の動向が不審であるので、西域との戦いに応援に出した白凛校尉と800騎を至急北盧国との国境の基地に戻してほしいという内容だった。


 ”戻してほしい、、、ってことは、前は北の国境基地にいたのか?”


 李亮はすぐにその手紙を元の封筒の中に戻すと、厠から出て参謀総長執務室に向かった。

 参謀総長に手紙を手渡すと、李亮はいつもの通り礼をしてから執務室を出た。


 ”趙家は、たしか北の国境舞阪県の豪族だったな。代々国境を守るということで将軍扱いになっていたはずだ。ということは、趙明は将軍か。

 ただ国境の基地には少なくとも20万騎はいるはずだ。たかだか800騎位の増加で情勢が変わるとは思えない。”


 ここで李亮の顔は真っ青になった。


 ”ま、まさか、もしかして、趙明は、、、”

 ・

 ・

 ・

 ・

 ”ロリコン!?”


 李亮は、彼の可憐な白凛が他の男の性の対象になっているという妄想で、めまいと吐き気を催した。

 そして、参謀総長がそれにどう答えるのか、またどうやったら彼自身が白凛に会うことができるのかと考えると、もう居ても立っても居られず、その日は珍しく文書保管室に閉じこもらず、本部内をあてもなく彷徨った。


 すると、ある部屋の前で思わぬ話し声が李亮の耳に入ってしまった。


「趙明が今度は参謀総長に訴えてきたらしいぞ。」

「何やってもダメなものはダメなのにな。」

「第一、前線基地があの女校尉を手放すわけ無いよ、唯一の戦力だもん。」

「でもあの趙明のことだ。ここで埒が開かなかったら陛下に直訴状を送り付けかねないな。」


 李亮は、もう少しそこで話を聞いていたかったが、はるか彼方の部屋の襖が開くのを見た瞬間に、その場を足早に通り過ぎた。


 李亮はどうやったら前線基地に配置転換されるかを考えながら歩いていると、

「あ、ちょうどいいところに。」と言って呼び止められた。

 李亮は声の方を振り向くと、そこには総長の部屋子が居て「これを送って欲しいそうだ。」と言われ文書を李亮に手渡した。


 李亮はお辞儀をして文書を渡した相手を見送ると、本部を出て中安の街中にある郵便局へと向かった。李亮は途中尾行されていないことを確認してから道を反れ、封書の中身を盗み読みした。


 思っていた通り、それは参謀総長から趙明宛の封書で、希望には応えられないという主旨だった。


 李亮は、郵便局に入ると、お使いの封書だけでなく、自分がしたためた孔羽宛の手紙もちゃっかりと出し、2つの郵送受付の控えを持って街外れの寺にやってきた。


 寺ではいつものように落ち葉で焚火をしていた。

 李亮は顔なじみの坊主に手を挙げて、よっと声をかけてから焚火に当たるふりをして、坊主たちに気づかれないようにして、なんとこともあろうにその控え2枚をサッと焚火の中にくべてしまった。

 2枚の細長い紙が完全に灰になったことを確認してから、李亮はおもむろに立ち上がると、しばらくそこの坊主たちと他愛のない話をして寺を後にした。


 寺を出て10分ほど歩いた所では、いつものように日も高いのに酔っぱらって管を巻いている男が何人かいた。中安は西乃国第二の都市だが、李亮がここに住んで1年半、日に日に都市から豊かさが失われ、それと同じように活気も無くなり、今ではこのようなごろつきが至る所で見受けられるようになってしまっていた。


 李亮はごろつき達を見てニヤリと笑うと、わざとその男の一人にぶつかって倒れた。ぶつけられた男は怒ってすぐに李亮に手をあげ、李亮はそれに抵抗することなく男に殴られ続けた。


 ようやく男が殴るのをやめて、また酒を煽り始めると、李亮は不敵にふふふと笑いながらやおら起き上がった。そして何も言わずにそこにわざと財布を落とすと、足を引きずりながら参謀本部に戻っていった。


 参謀本部に戻った李亮は総長執務室にそのまま向かうと、口から血を流し、あざだらけの顔で、そこにひれ伏し、総長の文書を送った後、不覚にも路地でならず者に襲われ、金と控えを奪われたと伝えた。


 正しい情報伝達の証拠となる郵便受付の控えは、何よりも厳重に保管する規定となっていた参謀本部は、これにパニックになった。

 通常ならば厳罰を与えなければならないところだが、何しろ李亮は皇帝の口利きでここにやってきたのだ。そんな人物の処分をどうしたらよいものかと思いあぐねていると、しばらくして李亮が、「あ、あの・・・」と口を開いた。


 参謀本部は、通常処分が決定するまで口ごたえなしの規定になっているのにも関わらず、劉操の息のかかった李亮が口を開くのを無視することができず、彼らはうんともすんとも口では言わず、ジッと李亮を見つめて、目で「言いたいことがあるなら、どうぞ。」と言った。


 李亮は時折口元の血を手の甲で拭いながら、「私は責任を取って、西域との前線基地に出向したいと思います。」と言った。


 これには総長を始め、参謀本部全員がキョトンとしてしまった。


 劉操が西域に侵攻開始してからというもの、参謀本部は、参謀を前線に派遣すべきであることは共通認識として持っていながらも、誰を派遣するかということになると、誰も行きたくないという本音が見え隠れし、いつも堂々巡りをしてきたのだった。


 それが、自らやるという希少なボランティアが名乗り出たのだ。


 何しろ控えとはいえ書類を失くしたということは何らかの罰が必要であることといい、劉操にバレて何か言われたとしても実際本当に本人が希望したのであるから、これほどうまく全てが丸く治まる話はない。


 総長は突然下手に出ると、李亮に自ら希望したと一筆書くように促した。


 ”劉操に何か言われた時の保険か。さすが参謀総長。ケツの穴まで小さいわ。”

 李亮はそう思うと関嘉の言う通り、そこで文書をしたためつめ印を押した。


 そして翌早朝、李亮は参謀本部を後にした。

 李亮はチャーと言って、馬に鞭を打って馬を走らせ始めた。

 白凛に会いたいが為に、李亮は自分の命の危険さえ顧みなかったのだった。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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