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第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 劉煌は閃くや否や、お陸に持たせていた紙を彼女の手から掴み取ると、瞬く間に部屋を飛び出した。


 劉煌は暗闇に紛れながらも、しっかりと後宮の蔵の屋根の上に到着した。


 この数週間で、すっかり西乃国の皇宮の警備状態を把握していた劉煌は、後宮に関してはほとんど警備の目が行き届いていないことを知っていた。


 それでも、万一のことを考え、慎重に屋根から降りると、辺りの様子を覗いながら抜き足、差し足、忍び足で蔵の扉に近づいた。


 劉煌は扉の鍵が南京錠であることに気づくと、懐から鍼を取り出し、南京錠の穴に差し込み、あっという間に開錠して蔵の中に入った。


 その瞬間、劉煌の目は、暗目付修行で培った夜目となり、真っ暗な蔵の中、彼の目が捕らえる物だけパッと明るく彼の目に映った。


 劉煌は辺りを見まわすと、目元だけ表れている黒頭巾の中で顔をしかめながら呟いた。

「なんでこんな後宮の蔵の掃除がこんなに行き届いているんだ?後宮の女官だって誰一人ここの掃除当番になっている者等いないのに。」


 蔵内を一瞥してさらに劉煌の警戒モードは突然爆上がりした。

 ”いったい誰が何の目的でここをこんなに綺麗にしているんだ。”


 劉煌は、益々忍び足になって蔵の壁伝いに少しずつ奥へと進んでいった。

 そしてある場所に到達した時、そこだけ床に無数の引きづった時にできたと思われる傷があることに気づいた。


 劉煌は、しゃがんで床を触りながらその傷を精査し、そして上を見上げた。

 ”傷の長さ、深さ、入り方どれから見てもまずこの棚を頻繁に動かしたに違いない。”

 ”棚を動かして、また元の場所に戻す理由は一つ。この棚の近辺に何か隠したい物があるということだ。”


 劉煌がそう思った瞬間、ギーッという鈍い音と共に、蔵の扉が開く音が蔵内に響いた。


 劉煌は慌てることなく、瞬時に天井まで飛び上がると、逃げ道として開けておいた蔵の屋根瓦を取っておいた所を目指して、天井を這おうとしたその瞬間、聞き慣れた声が蔵中に響いた。


「アイヤー、南京錠開けっ放しなんて、大胆にも程があるってもんだよ。これじゃまだまだ独り立ちは無理だね。失格。」


 劉煌はホッと胸を撫でおろして、一つも音も立てずに天井から飛び降りると、お陸の前にスッと立った。

「師匠、何しに来たの?」

「こりゃ、ご挨拶だね。見ての通りだよ。お嬢ちゃんが恙なく仕事が完遂できているか評価の為の視察だよ。それで結果は失格。さ、今日のところはこれで店じまいだ。すぐにここから出るよ。」


 そう言うと、お陸は一言も劉煌に言わせることなく、蔵の扉から辺りを覗い、問題ないことを確認してから出てすぐに扉に南京錠をつけ、蔵の屋根に飛び乗った。

 劉煌もすぐにお陸の後を追い蔵の屋根に飛び乗ると、案の定、お陸から後頭部をピシャリと叩かれた。


 劉煌は、お陸に何か言い返そうとしたその時、お陸は劉煌の口を彼女の掌で塞ぎ、下を覗った。


 劉煌はハッとして口をつぐむと、お陸に続いて下を覗った。


 下には禁衛軍の兵士が一人蔵の扉の前に立っていた。


 お陸はホッと胸を撫でおろしながら、ひそひそと「巡廻かい。」と囁いた。

 ところが劉煌はそれに瞬時に異を唱えた。


「もし巡廻なら一人のはずはない。禁衛軍の軍服を着ているが間者かもしれない。」


 劉煌のその呟きでお陸にも緊張が走った。

「こんな所にそんなお宝が眠っているのかね。お嬢ちゃんもいつにもなく慌ててここにやってきたし。」

 下を覗いながらお陸はそう呟くと、劉煌も下を覗いながら心の中でこうつぶやいた。

 ”僕と同じ物を探しているはずはない。それは劉操だって知らない、直系の皇太子しか知りえないことだから。”


 劉煌は、6歳の誕生日に父である皇帝が人払いをして、自分にだけ伝えたことを思い出していた。


~『劉煌や。これは代々3か国の直系の皇太子にのみ伝授されてきた言い伝えだ。だから誰にも話してはならない。よいな。お前の胸にだけ留めておき、いつかお前の息子が生まれたら、皇太子にだけこの話を伝えるのだ。

 千年前、東之国の皇帝は、3か国を自由に行き来していた3か国の神獣:朱雀を自国だけのものにしようとしたことで、東之国対中ノ国と我が国との3か国が戦争になった。その戦争は言い伝えによると、女神が降臨して朱雀を解放し、東之国と我が国の皇帝を謀反の罪で処刑して終焉した。そして女神は、中ノ国の皇帝に、東之国と我が国の復興を命じたのだ。中ノ国の皇帝は、東之国と我が国の皇太子を皇帝に即位させ、その際3か国の永遠の友好の為に、それぞれの国の皇帝に憑く神龍を他国に預けることで、その神龍の力を封じたのだ。

 言い伝えによると、神龍は純粋で強大なパワーを持っており、真の皇帝としての器を持った人物だけが皇帝だけの神龍を正しく扱え、祖国繁栄に導くことができるが、皇帝に少しでも邪念があったり、未熟であればの神龍は皇帝を見限り、皇帝が全く気づかないうちに破滅への道へと誘導してしまう、諸刃の剣のような存在と言われている。

 それ故、当時の中ノ国の皇帝は、公平にそれぞれの国の神龍を別の国が預かることで、3か国の破滅を阻止したのだ。

 幸いこの千年間、代々語り継がれたこの神龍の話を、どこの国の皇帝もただ次世代に語り継ぐだけで、使うことはなく済んだ。

 だが劉煌や、万一、万一お前が皇帝として我が国を導くのに多大な力を必要とする時が来たら、迷わず中ノ国に居る西乃国の神龍を探すのだ。お前なら必ずや神龍の力をうまく引き出して、我が国を繁栄に導けるであろう。

 ただ、神龍を探すには、まず蒼石観音の秘密を解かなければならない。蒼石観音は、三位一体で働くと言われている。そのうちの一体は朕が持っている。後の二体は朕もどこに保管されているのかわからない。ただ昔から皇太子だけに受け継がれる文書が手がかりになると言われているが、それはお前が持つに相応しい年齢になったら譲ろう。』~


 ”父上は、あの時、何か予感のようなものがあったのだろうか。”


 劉煌は、両方の拳が真っ白になるほど強く握りしめながら、蒼石観音と文書が共に隠されていた聖旨を父から受け取った時のことを思い出していた。


「やれやれ、やっと奴さんが居なくなったよ。ただお嬢ちゃんの推察はバツだねぇ、あの動きは間者じゃないよ。」

 そう呟いたお陸の声で、劉煌の意識は遠い昔から今に戻ってくると、普通に歩いて去っていく禁衛軍の制服を着た人物を見つめた。

 ”たしかに、師匠の言う通りだ。間者じゃない。”


 お陸は、辺りをもう一度見渡すと、劉煌に向かって説教を始めた。


「もー、まったく、いいかい。忍者ってもんは、焦ればそれだけで負けなんだよ。どんな時でも冷静に行動できて初めて仕事がうまくいく”可能性”が出てくる。焦った時には収穫はないもんなんだよ。とにかくまずはどんな些細な事でも作戦を立ててから行動だ。それに今だってなんだい!ボーっとして、修行を始めたばかりでもあるまいし。あたしがいなかったら、アンタ命無かったよ。わかったら部屋に戻るよ。あんまり長い間いないと怪しまれるからね。」


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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