第七章 迂回
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
清聴が中ノ国伏見村亀福寺の自室でまどろんでいる時、突然屋根裏から何かがぴょんと飛び降りて、彼女の前に座った。
驚いた清聴が身構えていると「まま、あたしよ。」という劉煌に似た声が響いた。
そうでなくても清聴はこの3年、酷い美蓮ロスで、ふとした拍子に何でも劉煌の声に聞こえる珍しい幻聴を患っていたので、彼女はこの声もきっと幻聴、まどろみながら寝てしまって夢でも見ているのだろうと思っていた。
劉煌は、清聴の手を取ると、ギューっと握りしめて「まま、あたしよ。3年ぶりだからわからなかった?」と彼女の顔を覗き込みながら言った。
ここでようやく清聴は本物の劉煌が目の前にいることに気づくと、今度は突然声をあげてウオンウオン泣き始めた。
「みれーん。ごめんね、酷い追い出し方して。元気にしてたんだね。良かった。」
清聴は目の前にいる劉煌が幻でないことに嬉しさのあまり、しばらく劉煌の取り付く島もないほど、泣きながら謝罪し続けた。
劉煌は何も言わずに聖職者なのにすっかり取り乱している清聴を抱きしめていたが、清聴が落ち着いた頃を見計らって、自分の伏見村での家の話をした。そして劉煌は清聴の手を取り、彼女の掌にその家の鍵をそっと置いた。
「これが鍵だからままに預けておく。」
清聴は劉煌が伏見村の家に住んでくれるとばかり思っていたので、
「どうして?ここに住まないのかい?」とまた泣きださんばかりに劉煌にしがみついた。
劉煌は凄く淋しそうな顔をすると、清聴にこう言った。
「しばらく西乃国に戻ることになった。万一僕が、、、僕が帰ってこなかったら、僕の家を小春にあげて。」
それだけで、清聴は劉煌が西乃国のどこに行こうとしているのかがわかってしまい、今度は真っ青になって劉煌に縋りつくようにして聞く。
「どうしても、そこに行かないといけないのかい?」
劉煌はさらに淋しそうな顔をして清聴の目を見てこう答えた。
「まま、こう見えても僕は男なんだよ。」
その一言で何を言っても無駄だと悟った清聴は、劉煌の手を取って真摯に言った。
「でも絶対無理しちゃだめだよ。生きて何ぼなんだよ。いいね。絶対に生きて戻ってくるんだよ。」
「まま、わかっているわよ。戻ってきたら真っ先にままのところに顔を出すから。」
そう言うと、劉煌は清聴を抱きしめた。
清聴は泣きながら劉煌を抱き返していたが、気が付くとそこには劉煌の姿は無く、彼女の腕は空を抱きしめていた。
”夢だったのだろうか?”
そう思った清聴はふと自分の手に目線を落とすと、握りしめている掌を少しずつ開いた。
彼女の掌中には、知らない鍵が一つあった。
”本当だったんだ!彼は帰ってきたのだ!”
清聴は、腑抜けモードから一転して気合が入り、袖で涙を拭いながらすぐに本堂に行くと、臨時のお経をあげ始めた。
”仏様、美蓮が無事に私の元に帰ってきますように。ご加護をお願いします。”
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