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第七章 迂回

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 ちょうどその頃、中ノ国皇宮に向かって早馬が走っていた。


 早馬役は、中ノ国皇宮内裏殿の前で馬から飛び降りると、報!と何度も叫びながら内裏殿の階段を駆け上がった。


 ちょうど朝廷の最中であったこともあり、すぐに皇帝から謁見の許可が降りた早馬役は、内裏殿の中央を速足で進み、皇帝の前2mの地点で立ち止まってお辞儀をした。


「いったい何事か?」赤金色に輝く冕冠から垂れる12旒の旒の間から見える中ノ国皇帝の顔は、決して機嫌がよさそうではなかった。


「皇帝陛下にご回答いたします。東之国皇宮の皇帝一家の御所の火災で、簫翠考皇帝陛下が御崩御、内親王殿下も焼死、皇太子殿下は重体ですが命に別条はな、、、」

 中ノ国皇帝が口を開く前どころか、早馬役が報告の最中に、突然話を遮る悲鳴のような悲痛な叫び声があがった。

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 あまりのことに皇帝も早馬役も呆然としてその叫び声が聞こえる方を振り向くと、そこには真っ青な顔で震えている中ノ国皇太子:成多照挙がいた。


 早馬役は、どうしましょう?という気持ちを込めてチラッと中ノ国皇帝を見上げると、皇帝はうんと1回頷いたので、早馬役は申し訳なさそうに「皇太子殿下にご回答いたします。亡くなられた東之国の内親王とは、簫翠蘭殿下で、、、」と、これまた話している最中に、成多照挙は突如膝から崩れ落ちると、うおぉ~と大きな雄たけびをあげながら両こぶしで頭を抱え、目から滝のような涙をながした。


 成多照挙は、目を閉じた。


 すると彼の目の前に、清楚で美しい簫翠蘭が現れ、短い前髪と後ろに長く伸ばした垂髪を揺らして照挙の方を振り向いた。


 ”わ、私の織姫、、、”


 照挙は、それが彼の頭の中の妄想とは気づかず、簫翠蘭の名前を呼びながら彼女に向かって手を伸ばした。しかし、簫翠蘭はそれに応えることなく、今度は彼に背を向けて歩き始めた。


 照挙の脳と心は、現実も妄想も受け入れられず、彼は頭を抱えて簫翠蘭の名前を連呼しながらその場でバーンと前のめりに卒倒すると、静かになりピクリとも動かなくなった。


 これには内裏殿にいた重鎮達も度肝を抜かれ30秒ほどその場が固まったが、やおら宰相の仲邑備中が「は、早く、御典医を!」と叫んだ声で皆がようやく我に返り、その場は180度変わって急にあたふたし始めた。


 宦官から呼ばれてスッ飛んでやってきた御典医は、まず照挙の脈を診て周囲に問題ないことを告げると、噂を聞きつけて内裏殿の前までやってきた小朝・小鉄・小資に向かって「東宮までお連れしろ。」と命令した。


 照挙は、担架に乗せられ持ち上げられてもまだ気を失っていて、運ばれ始めても全く目を覚ます気配が無かった。その一部始終を見ていた皇帝は旒の内側から手を入れておでこを指でさすりながら、御典医に叫んだ。


「とにかく早く起こせ。」


 ところが、照挙は東宮に戻る途中、どんなに担架の上で揺れても全く起きる気配が無かった。

 東宮内で、御典医は誰も見ていないことを確認して照挙の頬を叩いてみたが、それでも全く目覚めず意識不明の状態が続いた。


 1時間経ち、半日経ち、1日経ち、2日経ち、、、それでも照挙は目覚める気配すらなかった。

 御典医達は文献を抱えて右往左往したが、全くどの方法もなしのつぶてで、とうとう皇帝自ら体罰による喝を入れる方法を試したが、それでも照挙は全く目覚めなかった。


 このようにまるで東之国皇宮の火の粉が飛び火したかのように、中ノ国皇宮でも皇太子が、眠り姫ならぬ眠り皇子となって目覚めないという激震が走ってしまった。


 そうでなくても、前々から癇癪持ちの照挙は臣達からの評判が良くなく、彼よりも3つ年下で、文武揃った好漢の第二皇子の照明を密かに推す臣が少なからずいた為、今回の件で、第二皇子を推す臣の活動が水面下から浮上してしまい、公に第二皇子:照明を皇太子にという陳情まで出てしまった。


 皇帝:照宗としては、自らが、母親が身分の低い元妓女である照明ではなく、れっきとしたこの国の重鎮の娘である皇后の産んだ皇子である照挙を皇太子と決めたこともあり、照挙を廃して照明を皇太子にと目論む臣達の思うがままには断じてさせられない想いから、何としても照挙を1秒でも早く目覚めさせたかった。


 そういう皇帝の胸の内をよくわきまえていた宰相の仲邑備中は、照挙が眠りについて1週間が経った時、そろそろ頃合いだろうと朝廷の後、皇帝に謁見を希望した。


 そうでなくても皇太子が目覚めないという異常事態に、皇帝の心は、我が子への心配とふがいなさによる苛立ちで乱気流のように揺れ続けていたが、宰相の謁見を断る正当な理由もなく、しぶしぶ皇帝は宰相に会うことにした。


 仲邑備中は、いつもと違ってろくすっぽ挨拶もせず、珍しくいきなり本題に入った。

「陛下。照挙殿下はまだお目覚めにならないと聞いております。ことの発端は女の問題でした。ということは、お身体に問題がある訳ではないので、御典医に診させ続けても埒が開かないものと存じます。まあ、女の問題を解決できるのは、女しかいないのではないでしょうか。どうでしょう?私の娘は照挙殿下と同い年でございます。私の娘に看病させてみるというのは。」


 皇太子に自分の娘を近づけさせようと考える仲邑備中の腹の中が見え見えの発言に、皇帝は、心の中で”全く油断もスキもない奴め”と軽蔑しながらも、皇太子の件は藁にも縋る思いである彼は、その申し出にNoとは言えなかった。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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