第一章 縁
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
劉煌が追手から逃れるため走り続けていた時、西乃国では、大殺戮が繰り広げられていた。
劉煌の叔父劉操は、劉煌の父の腹違いの弟で、皇宮の規則や国政が嫌いで、首都の京安にある皇宮には住んでおらず、海の近くの御用邸で、ずっと何不自由なく暮らしていた。
劉煌も顔を合わすのが、年に数えるほどで、いわば全くノーマークの人物だった。
それ故、彼をよく知らない臣・役人達は、彼に国政のイロハを伝えようとしたところ、彼の逆鱗に触れて、その場で彼に切り殺された。
それどころか先帝の重鎮達全員、何も言わない輩も全て殺され、その遺体の首だけが、法捕司の前にずらっと並べられ、昼夜問わずカラスらの餌食となった。
その殺戮は、何も朝廷の者たちに限らず、少しでも劉操が気に食わないと思ったものは、皆見せしめに、棄市にされた。
そんな中、法捕司卿の王政だけは、建物の前に重鎮達の首を並べられても何も言わなかったからなのか、劉操に意見を多少述べても処刑されずに済んでいたので、何とか首都の治安は守られていた。
実は劉操が、最も殺したかったのは、先帝ではなく、その息子の劉煌だった。
そのため、劉操は、軍の兵士50万人に、文字通り、躍起になって彼の捜索を命じると共に、密かに密偵である火口衆を中ノ国に侵入させ万一生きているのを見つけたらすぐ抹殺せよと命じていた。
政変後1週間経った時点で、先帝や劉煌縁の者達へ、劉煌からの連絡がずっと無いことがわかると、彼らも次々と行方不明になっていった。
ただ、劉操は、何故か劉煌の母である先帝の皇后だった楚玉には手を下さず、楚玉は、禁足であること以外は、以前と同じ生活を続けられていた。
しかし、政変発生10日後のこと、女官達がひそひそと、皇太子付きの宦官・女官・下男下女達が拷問を受け、秘密裏に殺され、夜な夜なその死体を山積みにして荷車で皇宮外に運び出しているという話をしているのを小耳に挟んだ劉煌の母は、万一劉煌が生きていたとしても、彼女が劉煌の足枷になることを恐れ、それを聞いた翌朝、皇后の住まいである後宮の凰乃宮で自害しているところを発見された。
それを知った劉操は怒り狂い、劉献(先帝)及び楚玉(先帝の皇后)付きの者達全員を凌遅刑にし、劉煌(元皇太子)との関わりがあった人物を洗いだしては虐殺していった。
そして、その矛先は白凛にも向けられた。
当初劉操は、劉煌が白凛に連絡してくるのではないかと泳がせていたが、全く進展が無いので彼女の一家全員を殺すつもりでこの日は小白府に来ていた。
すでに彼女の祖父と叔父一家は、先帝の重鎮だったため、劉操に殺されていた。
それ故、白家唯一の生き残り男子で秘書省副長官だった彼女の父は、以前は、自分の娘がいつの日か劉煌の皇后になることを夢見ていたが、そんなことなど、とうに忘れて、政変後すぐに劉操に忠誠を誓っていた。だが今日、劉操が怒って白家を訪れたのを見て、もう一巻の終わりと思っていた。
政変後すぐに父から話を聞いていた白凛は、今日、改めて彼女の両親と共に、劉操に忠誠を誓った。
劉操が、劉煌との関係を白凛に尋ねると、彼女は震える両親を尻目に、彼女が劉煌と親しくしていたのは、女の子に教えてくれる人がいない武術を習うためだけだったと説明した。白凛は、他に仲間がいなかったかとも聞かれたが、都の子供達に絡まれたことはあったが、劉煌と過ごしていたのは自分だけだったと、劉操に無表情で答えた。
さらに彼女は、劉操の目を見て、守る人が劉煌であろうが劉操であろうが、自分は将軍にさえなれればそれでよいと言ったので、劉操は面白いというと、白凛の言葉を信じたのか、それとも彼女をおとりにして劉煌をおびき寄せるつもりなのか、彼女を軍隊に入れると宣言して、両親と引き離した。
灯台下暗しという言葉があるように、古今東西、国を揺るがす大事件が起きているとき、大抵そのお膝元の庶民が一番、そこで本当は何が起こっているのかを知らないものだ。
西乃国の一般庶民が政変のことを知ったのは、発生後1週間も経ってからのことだった。
そのため、何も知らなかった李亮、孔羽と梁途は、政変の翌日、予定通り劉煌を秘密基地で待っていた。
ところが、彼どころか白凛もやってこなかったことで、彼らは異変を感じとっていた。
特に李亮は、10日ほど前から劉煌に関する夢見が非常に悪く、警戒していたこともあり、すぐに政変ではないかと思った。
”こんな天功があっていいものか!”
ただ、今の彼の勘では、劉煌はうまく難を逃れたような気もしていた。
それなので、李亮は、劉煌と出会う前から3人衆のリーダー格でもあったことから、孔羽、梁途の二人に、もし何か聞かれても、劉煌とは全く関りが無かったと答えるよう指示した。
しかし、孔羽と梁途は、五剣士隊の話を持ち出し、それをまっ正面から拒否した。
「お前ら本当に馬鹿だな。これはお前らを守るというよりも、太子とお凛ちゃんを守るためなんだ。いいか、お前ら拷問されても何も答えない自信あるか?ないだろう?それよりも、あいつが天意でいつか帰ってきた時、あいつの力になれるよう、準備しとくんだ。」李亮は、真剣な顔つきでそう言った。
「準備って何を?」
李亮は、手を顎に置いて「そうだな」と呟いてから辺りを見まわすと「まず、ここは封印する。」と言って、両手を広げ、秘密基地と名付けた洞窟を見渡した。
孔羽と梁途は、お互いの顔を見合わせてから怪訝そうに「どうして?」と李亮に聞くと、彼は落ち着いて、こう答えた。
「あいつが帰ってきた時、アジトが必要だろう。」
その答えがよく呑み込めなかった孔羽が、
「そうだけど、どうして僕らがいたらいけないのさ。」と聞くと、
「あいつが気を使うからだ。」と李亮はサラッと言った。
いつも寡黙だが物わかりの良い梁途が、なるほどという顔をして「ああ。そうか。」と言ったが、孔羽はその答えに納得がいっていないようだった。
そうすると李亮が珍しく凄く真面目な顔をして、彼らに、
「いいか、あいつなら、俺たちが必要な時、絶対に連絡をとってくる。それまで俺たちは、敵のことを徹底的に調べておくのさ。」と凄みのある声で言った。
「でも、どうやって?」とまたすぐ孔羽が聞いてくる。
それに対して間髪入れずに、「役人になったり、軍隊に入隊したり、、、そうだ、宦官になるのも手だな。」と李亮がサラッと言うと、二人は一斉に股間を押さえながら、絶対ヤダ!と叫んだ。
「とにかく、情報だ。何でもいい、裏切り者の情報を掴むんだ。」そう李亮が言って、左手を二人の前につき出した。孔羽、梁途も迷わずその上に左手を乗せると、「スゥ~パ~・ファイヴッ」と言って、左腕を空高く突き上げた。
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