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第七章 迂回

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 一方、五剣士隊のうち科挙に受かった孔羽は、その後すぐにいきなり中央省の役人に抜擢された。

 ビリでの科挙合格の場合、通常は僻地の地方官吏なのに、こんなことは前代未聞だった。なんでも皇帝直々に名指しで孔羽を中央省に入省させよとのことだったらしかった。


 孔羽は、夢見心地で鼻息を粗くして初出勤したものの、彼に与えられたのはメールボーイ役で、ひたすら役人達の書いた(ふみ)を各部署の担当者に渡すだけの仕事だった。


 いくら李亮の山勘のおかげでビリ合格したとはいえ、これでもなかなか合格者のでない科挙に合格したというプライドもあった孔羽は、心の中でこんな仕事に科挙合格者を当てる中央省の上官達の考えが読めなかった。


 中央省の上官達は上官達で彼らの頭の中では、皇帝から直々お達しのあった者=皇帝への内通者という方程式が完全に出来上がっており、自分たちの仕事ぶりを直接皇帝に報告されるのではという疑念で戦々恐々として孔羽を迎え入れ、当たり障りのない、自分たちの仕事が全く見えない部署に送り込んだ訳だった。


 孔羽がメールボーイを始めて1週間が経ち、彼は梁途と共に、出征する李亮の見送りに彼の家を訪ねると、すぐに自分に当てがわれた仕事に対する愚痴を2人に伝えた。


 これを聞いた李亮は間髪入れずに嘆く。「お前、本当にバカだなぁ。」

 それを聞いた孔羽は日頃のストレスも相まって李亮に珍しく突っかかった。

「バカじゃないよ!亮兄の山勘的中とはいえ、僕は科挙に最年少で合格したんだもん!」

 李亮はこりゃあかんという顔をして、諭すように話し始めた。

「おいお前、あてがわれた仕事が滅茶苦茶アイツのために役立つって、まだ気づかないのか?どこか一部門の仕事だけじゃない。役所全部の仕事内容がこちらから頼みもしないのにやってくる部署じゃないか。お前が届ける文は全部盗み読みしてメモっておけよ。」


 孔羽はそれ以来文書を盗み読みしては西乃国の行政の現状を一つ一つ覚え、半年も経つと、西乃国の3つの中央省とその配下の9つの司の全ての情報を網羅し、西乃国一番の役所情報通になっていた。


 しかし、孔羽はそれをおくびにも見せず自分だけの情報として温めていたので、中央省の役人たちはまさか孔羽が全てを把握しているとは露にも思わず、毎日彼を呼び出しては文を当該部署に届けるよう渡し続けた。


 一方、李亮は、西域への侵攻部隊の基地に出征するはずだったのが、これまた皇帝の鶴の一声で軍の参謀本部に配属され、西乃国の第二の都市中安の軍事本部にやってきた。皮肉にも李亮が出征するはずだった西域への侵攻部隊の基地には、当時、彼が心底再会を願っている白凛が校尉として配属されていたのだが、そんなことなど露ほども知らない李亮は、前線基地への出征から、前線とは物理的な距離だけでなく、精神的にも肉体の死からも離れきっている軍本部の、その中でも実戦とは無縁の参謀本部に到着した時は、自分は本当についていると思ったのだった。


 そしてもう一人の五剣士隊の梁途はと言うと、、、彼は劉操から見ても影が薄かったらしく、梁途だけ皇帝からの口利きはもらえなかった。


 彼は李亮を見送った1週間後に禁衛軍に入軍したが、縁故組でないノンキャリア組として、新人訓練に入った。そしてその中には何故か後宮の蔵のお掃除というものまで含まれていた。それも軍の蔵であれば納得がいくものの、軍とは全く関係の無い蔵を、これまた軍とは関係の無い下っ端宦官からお掃除を命じられた梁途は、納得がいかず思わず口を開いた。

「これは本当に禁衛軍の仕事なんですか?後宮付きの宮女の仕事では、、、」と言い終わらないうちに宦官は梁途に向かって棒を振り上げた。

 武術・剣術は、小さい頃に劉煌からしっかり基礎を固められていた梁途にとって、一後宮の宦官の動きなど、スローモーションにしか見えないため、宦官の棒は梁途をかすめることもなく地面に叩きつけられた。その衝撃で宦官が思わず棒を手放し両手の痛みに悲鳴をあげていると、かなり光沢のあるいかにも高価な着物で、腕にも指にも無数に金銀財宝を付けまくっている宦官と禁衛軍の第10衛隊長がやってきた。


 梁途を棒で叩こうとした宦官は、この時とばかりに地面にひれ伏し第10衛隊長と共にやってきたキラキラ宦官に梁途のことを訴えた。


「こやつが歯向かいました。」


 梁途はそれは聞き捨てならぬと思い、すぐにお辞儀をしながら「私はただ後宮蔵の清掃は禁衛軍の仕事なのかを確認しただけです。」と言うと、間髪を入れずに第10衛隊長と一緒にいるキラキラ宦官が甲高い声で「そうじゃないけど、そうなのよ。」と言った。


 その回答に梁途が狐につままれたような顔をして顔を上げるとその宦官は高笑いをしながら「禁衛軍の仕事ではないけれど、あなたの仕事。さあ、さっさと無駄口叩いていないで蔵の掃除をなさい。」と言った。梁途は心の中でムッとしながら第10衛隊長の方を見ると、第10衛隊長は彼と目線を合わせるのをさけ、あっちを向いてしまった。それを見ていたあの大変偉そうなキラキラ宦官は、今度は梁途の方に視線を向けると、彼の頭のてっぺんからつま先まで舐めるように見てから「いい機会だから、あなたにいいことを教えてあげましょう。あなたはただ言われたことを言われた通りにやればいいのよ。ここでは変に頭を使うと命が幾つあっても足りなくなるわよ。ホホホ。」と言って、梁途の肩をポンポンと叩いた。


 梁途は仕方なく再度お辞儀をすると、一人蜘蛛の巣にまみれた蔵の中に入っていった。


 このように五剣士隊がまたもやバラバラになってそれぞれの道を歩み始めた時、劉煌は、遠く離れた異国の地:呂磨で、日中は医師として、そして夜になると、お陸と共に呂磨の街の暗闇に溶け込んだ。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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