第七章 迂回
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
それから1か月後、劉煌とお陸の姿は西域の呂磨という所で見られた。
呂磨は、東域とは何もかもが全く異なる場所で、住んでいる人種も異なれば、食べる物も食べるための道具も、服も家も文化も、何もかも、、、歩く道さえ違った。
呂磨の道は全て石畳で、路面は激しく凸凹していた。それ故足を取られないように、当初お陸は殆ど路面に足をつかない方法で歩くしかなかった。また、家の外壁も皆屈強な石造りで、木や土のぬくもりに慣れていた劉煌とお陸には、家も道もとても無機質で冷たい印象を受けた。
しかし、それとは正反対に呂磨の人々はとても陽気で、外で日の光を浴びること、お喋りをすること、食べることが大好き、そしていつでも情熱的な歌を口ずさんでいた。
劉煌と初めて会った時から、実は劉煌を男と見破っていたドクトル・コンスタンティヌスは、劉煌が西域に行きたいという話をした時、てっきり性転換をしたいと思っていると誤解していた。
その話が劉煌から出た時、ドクトル・コンスタンティヌスは大きく頷いて「誰でも自分の国ではしたがらないものさ。」と謎の言葉を劉煌に投げかけたが、友達の裏切りに遭い深く傷ついていた劉煌は、その意味がよくわからなかったものの、なんとなく頷きその言葉の意味を深くは考えていなかった。
ドクトル・コンスタンティヌスのこの珍回答の意味が全くわからなかっただけではなく、そんなことを言われたこともすっかり忘れていた劉煌は、呂磨に着いた時、居候が決まったドクトル・コンスタンティヌスの家で「で、いつにする?」と彼から聞かれた時、劉煌は医学研修のつもりで「いつからでも。」と回答してしまった。
すると、ドクトル・コンスタンティヌスは眉を潜めながら「この手術を難しいと思っている人は多いが、実はそうでもない。君の国の宦官もやっているだろう?何日にも渡ってするものじゃない。」と言ったので、ようやく事態を理解した劉煌は、目をひん剥き真っ青になりながら「私はあなたの医学を習いたいのよ。あなたの手術を受けたい訳じゃない。」と言うと、ドクトル・コンスタンティヌスは明らかにがっかりしながら「なんだ、ようやく性転換手術をする気になったのかと思ったのに。」と残念感満載でそう呟いた。
劉煌は、今度は一転、真っ赤になって「全然違うわよ!」と慌てて吠えたが、ドクトル・コンスタンティヌスは本当に劉煌の性転換手術をやる気満々だったので「それでは、なんでいつも女の恰好をしているのだい?」と不思議そうに聞いてきた。
”なぜって......”
まさか身元がバレないようにと本当の事も言えず、劉煌は返答に困り果て、苦肉の策、急場しのぎで
「わ、わ、、、私は、、、私は女装が趣味なのよ!」
と思わず叫んでしまった。
そのため、西域ではようやく堂々と男として暮らせると思っていたのに、ここでも劉煌は、毎日化粧をし、コルセットなる胸から下の上半身を強烈に締め上げる、まるで拷問用具のような鎧を着せられ、その結果殆ど呼吸ができないような状態で、まるで溺れている人のようにアップアップ呼吸をしながら毎日暮らす羽目になった。
ただ、この年の呂磨は、首周りにピラピラのフリルのついたブラウスが大流行りで、劉煌が去年から気にしている喉ぼとけは露出しないので、その点だけは気楽だった。
だが、楽だったのは本当にその点だけだった。
西域の女装で、コルセットよりも何よりも劉煌を悩ませたのは、ハイヒールであった。
ここ呂磨の女性は、東域の女性に比べて遥かに背が高く、皆劉煌並みの背の高さだったため、彼女らがハイヒールを履くなら必然的に劉煌もハイヒールを履かなければならなかった。初めてその有り得ない位身体構造やバランスを無視した靴を履いた時、劉煌は自分が普段どうやって歩いていたのかを忘れてしまい、ハイヒールは履いたものの履いた時の状態でそのままずっと固まってしまったほどだった。
劉煌は改めて思った。
”西も東も、女でいることは本当に大変......”
呂磨で暮らし始めて一月経ち、ようやくハイヒールでなんとか歩けるようになったものの、劉煌は毎晩足のケアに時間を割かなければならなくなり、毎晩ベッドでヒーヒー言いながら自分の足をもんだ。
ある日ドクトル・コンスタンティヌスは、劉煌に強い香りの油の入った瓶を渡した。
臭いを嗅いだ劉煌が、「これはローズマリーか?」と聞くと、ドクトル・コンスタンティヌスは嬉しそうに答える。「そうだ。ローズマリーの芳香植物油だ。これをこのオリーブ油で薄めて足に塗るといい。慣れないハイヒールで足が痛むのだろう?ハイヒールの流行で実は足の美容整形手術も増えている。私のおすすめはこの家の中ではハイヒールを履かないことだ。肉体的にはハイヒールは害だらけだからな。」
それに劉煌は困ったような顔をして「でも、ハイヒール以外の女性ものの靴ってあるのか?」と聞くと、ドクトル・コンスタンティヌスから思いがけない返事が戻ってきた。
「君は男なんだから別に女ものの靴じゃなくたっていいだろう?」
「!」
”たしかに!裾を引きずるドレスなんだから足元は見えないな。私としたことが、うかつであった。”
そうやって、劉煌は、日中は男と女を器用に使い分けしながらドクトル・コンスタンティヌスの下で医学を学んでいき、すぐにその実力をドクトル・コンスタンティヌスに認められると、毎日ドクトル・コンスタンティヌスの指導下で外来診察をし、時には患者の執刀もするようになった。
そして羅天語のできないお陸はというと、、、呂磨見物とかこつけて毎日出歩き、毎晩行う劉煌のくノ一実地訓練の下見を行っていた。
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