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第五章 変幻

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 それから半年経った。


 劉煌は、15歳になっていた。


 案の定、彼は変声期に入り、声が出しづらかったが、既にお陸から変声の術を修めていた劉煌にとって、変声期の声については問題はなかった。


 問題だったのは、喉ぼとけだった。


 女のはずなのに、()()()()()()()()()()()、、、いや本当は生物学的に男なのだから当たり前だし、他の男に比べれば殆ど目立たないのだが、劉煌はこれが気になって気になって仕方がなかった。


 以前自分を美女と思い込ませるため1分置きに鏡で顔を見ていたが、今では1分置きに自分の喉元を鏡に写して、心の中で”ひっこめ、ひっこめ。出るな、出るな。”と言うようになった。


 それでも気になる劉煌は、ある日自分の着物を作った時貰った供布を、長さ1mほどの細長い長方形に切り、長辺はほつれないよう処理し、2辺の短辺は切ったままで横糸を5cmほど取って縦糸だけにし、縦糸を10本ずつこよりのように寄って、その長い布を首に巻いてお座敷に向かった。


 すると、劉煌と同じ位か、少し年上の芸妓達がそれを見て羨ましがり、次々に自分たちも”檀姐さんが首に巻いている物”が欲しいと言いだしたのだ。


 それだけではない。


 芸妓達に評判が良かったので、巻いたままお座敷に出たところ、親父たちにもえらく気に入られた。どれくらい気に入られたかというと、彼らはそれを 鼻血もの と言い、チップも弾まれたが、芸だけで春は売らない(本当は売れない)約束の劉煌の操が危うかったほどだった。


 これは金になると確信した劉煌は、翌朝畑をほったらかしにして中ノ国の首都:京陵までやってくると、そこら中の呉服屋を回っていらない着物の切れ端をかき集めた。そして寺に戻ると、手の器用な清聴と柊に設計図を渡し、小さい端切れはパッチワークで小銭入れなどの小物に、大きな布は首巻き用にした。


「こんな物が本当に売れるのかね。」

懐疑的に清聴が聞くと、劉煌は自信たっぷりに任せてと言い、パッチワークの布の組み合わせを指示し始めた。


「いいこと?これは単なるつぎはぎじゃないのよ。例えば、これとあれ、これとそれ、ほらご覧なさいよ、ダサいのと、ソフィスティケートなのとで、断然そっちの組み合わせの方がお洒落でしょ。」と劉煌が小指を立てながら、布の切れ端を合わせて二人にレクチャーした。


 柊は劉煌が言ったソフィなんとかの意味はわからなかったが「たしかに、美蓮の言う通り、組み合わせで印象が全然変わるね。」と感心すると、清聴も「いやー、こんな上等だけど、何の役にも立ちそうにない布の切れっパシがねぇ。」と不思議がりながら、劉煌の言う通り縫っていった。


 端切れを大きさで片っ端から仕分けていた劉煌は、小物入れには大きく、さりとて首巻きには長さが足りない中途半端な大きさの布を、突如パッチワークの裏布にすることを思いつき、表はパッチワーク、がま口を開けると中は一枚布の小銭入れを試作品で作った。


 劉煌は清聴と柊にどう?という顔をして試作品を見せると、二人はまず目を丸くし、次に鼻息を粗くして、何と仁義なき試作品の取り合いを始めてしまったではないか。


 清聴が、全く大人げなく僧侶という聖職者である自分の身分も忘れて、12歳の子供相手に一歩も譲らず

「あんた銭も持っていないのに、必要ないでしょ。」と言うと、柊も負けずに、

「私は耳飾りをこれに入れておきたいの。」と言って清聴の手からそれを取ろうとした。


 それを見ていた劉煌は、また閃くと、「そうよ、耳飾りや髪飾りを入れておく箱の外側もこのパッチワークでデコれば、人気が出そうね。」と言うと、机に向かって設計図を書き始めた。


 それに気を取られた柊の一瞬の隙をついて、清聴が小銭入れを自分の物にすると、「柊は美蓮に箱を作ってもらいな。」と言って、小銭入れを自分の懐にさっさとしまった。


 そこへ山羊の散歩から帰ってきた小春が乱入し、おびただしい数の布と、清聴と柊が布を縫っているのを見て案の定自分もやりたいと言いだした。


 劉煌は、小春が縫うと売り物にならないことがわかっていたので、小春には首巻きの短辺の横糸を5cm取る作業をさせることにし、作業について一通り小春に説明すると、小春は、

「美蓮、これは何なの?」と聞いてきた。


 劉煌は、しばらくその首巻きの名前を考えていたが、最終的にはお洒落な響きがする西域の言葉を採用して「柄紗布えしゃーぷよ。首にお洒落に巻くの。」と言って顎を上げて、小春に自分の首元を見せた。


 小春は劉煌の首元に巻いてあるのを見て、「確かに、えしゃーぷって感じだね。」と言ったので、劉煌は眉をしかめて、小春が麩卵素語を知っている訳が無いのにと思い「どこが?」と聞くと、小春は「なんとなく。」と答えた。


 小春は一生懸命横糸を取る作業をしていたが、開始5分で全員の予想通り舟をこぎだした。


 清聴は、それを見て大きなため息をつくと、縫っていた手を休めて「この子だけは、15はおろか16になっても、それどころか何歳になっても、奉公先は見つからないだろうね。実の娘だから手元に置いておくのはやぶさかではないけれど、坊さんになるのだって無理だろうし、さあ、どうしたらよいものかねぇ。」と愚痴った。柊はそれにうんうんと頷きながら縫う手は休めずどんどん縫っていたが、劉煌は小春の横に来て彼女の手から優しく布を取ると「まま、小春を部屋に連れて行くわ。」と言って小春を担いだ。


 小春を担いで廊下を歩いていた劉煌は、清聴に向かって心の中で叫んでいた。

 ”まま、小春のことは心配いらないよ。僕が一生面倒を見るから。安心して。”


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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