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第五章 変幻

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 ドクトル・コンスタンティヌスと固い握手を交わし、来年の再会を誓いあって別れたすぐ後で、劉煌は旅館にも戻らせてもらえず、そのままお陸の着物選びに付き合わされた。


「なあ、お嬢ちゃん、これがいいかい?それともこっちの方がいいかね。」

 お陸が、自分の姿に合わせて、次から次へと着物を当てて劉煌に見せて言う。


 恐ろしいことに、何でもよく似合うようになっているのだから、劉煌は、自分の前で次から次へと着物をあてている女性が、”()()”お陸であることについていけなかった。


 ただ、声と物言いが、この一見、若い女性が、この道云十年の人だと言うことを如実に伝えていた。


 劉煌は呆れて「どれも似合うからどれも買えば?今迄の着物はどうせ着れないんだし、報酬だって貰ったんだから。」と言うと、お陸は何かストンと腑に落ちたように「それもそうだ。」と珍しく劉煌の意見に賛成して、最終的に着物を8着も買った。


 旅館に戻り、早速劉煌とお揃いの淡いピンク色の着物に着替えたお陸は、全く悪びれずにおちょこで酒を飲むジェスチャーをしながら言う。


「さ、じゃあ、お嬢ちゃんのお稽古つけと私の若返り祝いに、一杯行こうかね。」


 劉煌が、お陸の脱ぎ捨てた着物を畳みながら、呆れて言う。

「師匠、いいけど、その仕草も声も言葉遣いも、それじゃ婆ちゃん丸出しよ。」

「アイヤー。変身の術も、変声の術もお嬢ちゃんに教えたのはあたしだよ。忘れたのかい?お嬢ちゃんの前まで声色変えたり、仕草を変えたりする必要ないだろう?特に変声の術は一番疲れるんだからね。さあ、遊郭に着いたらお嬢ちゃんは美蓮姐さん、さて、私の名前は何にしようかな?」


 劉煌は、鼻でため息をついて、まったく師匠ときたら・・・と思い、首を横に振ると、その拍子に彼の鼻を昔懐かしい落ち着いた香りが優しくかすめた。目の前でファッションショーを繰り広げている見た目は若い女性、本当は老婆のことを完全に忘れて、彼は手を止めると、ふと、この香りはいったいどこからやって来ているのかと思い、窓の外を見た。


 2人の部屋は、中庭に面しており、窓からは中庭にある1本の大きな木が見えた。


 どうもこの香りは中庭の木が起源のようだ。


 劉煌は、ボーっと中庭の香りの発信源の木を見ながら「白檀だわ」と呟いた。

 そして思いついたようにボソボソと独り言を言った。

「芸妓の時は、美蓮の名前は使いたくないわ。そうね、まゆみがいい。檀姐さん。」

 するとお陸が、

「それなら、私はかおりにしよう。檀の香で忘れないだろう。香姐さん。いいかい、これから芸妓の時は、今つけた名前でいくよ。私が師匠だから”不本意だけど”私の方がお嬢ちゃんの姐さんだからね。お嬢ちゃんのことは檀って呼び捨てで呼ぶよ。」


 劉煌は、お陸が何が不本意なのかさっぱりわからなかったが、うんうんと適当に返事をしながら、すっと立って、櫛を手に取りお陸の髪を梳かし始めた。そして器用に彼女の髪を結ってまとめあげると、お陸は珍しく劉煌を褒めた。


「お嬢ちゃん髪結うのうまいね。どこで覚えたんだい。」


 毎日小春の髪を結っていることを内緒にしておきたい劉煌は、

「この前情報収集で髪結い処に行った時覚えたのよ。」と言って誤魔化したが、お陸はその嘘を見抜いているに違いないと思った。


 しかし、お陸はそれにただ、「ふーん。」とだけ言って、深く追及はしなかった。


 ~


 翌朝、お陸は割れるような頭の痛さで目が覚めた。

 ふと横を見ると、劉煌が呆れた顔で旅館の朝飯を頬張っていた。


「何がお稽古つけよ。何にも教えてくれなかったじゃない。師匠として失格。」

 劉煌が不満をはっきり口にすると、

「お嬢ちゃんができていないのは、芸事じゃなくて飲酒だろう?だから付き合って飲んでいたんだよ。」

 間髪入れずそう叫んだお陸は、自分の叫び声が頭に響いて、頭を両手で抱え込んだ。


「まったく、これくらいの酒で酔うなんて、どうしちまったんだろう。」

 そのお陸の言葉に呆れかえって劉煌は思わず叫ぶ。

「一升瓶5本一人で空けといて、これくらいって。ちょっと、師匠は蟒蛇の化身かなんか?」

 その劉煌の叫びが頭を直撃して、お陸は悶絶した。

 そして悶絶しながらも、息絶え絶えに、

「ご、5本だろ?10本は軽くいけるはずなのに......」と言って、また布団を被った。


 劉煌は、箸を止めて立ち上がるとお陸の布団の所まで行き、無慈悲にガバっと勢いよく掛け布団を剥いで言う。

「もう、半月以上ここに居るんだから、もういい加減帰るからね。早く起きてご飯食べて帰り支度するのよ。」

 剝がされた布団を被りなおしてお陸は抵抗する。

「でも、お嬢ちゃんに稽古つけないと。。。」

「さっき、芸事はできてるって言ったじゃない。出来てないのは飲酒って。だけど、今朝の状況を見てよ。飲酒だって私の方ができていたじゃない。泥酔している師匠を遊郭からここまで担いできてあげたんだからね。」

「おかしい。昨晩はきっと何か魔が差したんだな。今晩しっかり稽古つけてあげるから。」

「結構よ。きっと手術の影響よ。肝に負担がかかっているのよ。前も言ったでしょ、術後1か月位飲まない方がいいって。それに帰ったら、またあのお座敷に行ってみましょうよ。きっと今度は来て来てって言われるわよ。」

 すると、お陸はソロソロと自ら布団から出てきて目を座らせると、

「お嬢ちゃん。たまにはいいこと言うねぇ。そうだよ。あの高ビーな女将達に、目に物見せてやろうじゃないか。」と言ったと思ったら、またすごすごと布団の中に潜り、こう言った。


「帰るから師匠の荷物もまとめておくように。まとまったら教えて、起きるから。」


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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