第四章 転機
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
お陸が、一人で言って一人で受けていたちょうどその時、百蔵は骸組(中ノ国の諜報組織)の長である万蔵頭領に呼ばれ、農具小屋の中で立っていた。
「......ということで、西乃国の諜報活動はまず千蔵に行ってもらう。千蔵わかったな?」と言われた千蔵はベテランらしく、「頭領、心得た。まずは劉操の居場所を突き止め、そこに潜伏する。百蔵がここにいるということは、連絡は百蔵にということでよろしいか。」と言った。
それを聞いて慌てた百蔵は、露骨に嫌そうな顔をして「ちょっと待ってくれ、確かにおいらは若いけど、頭領に直接呼び出される上級忍者だぜ。連絡なんてそこらへんの奴にやらせればいいじゃないか。なんでおいらなんだよ。」と不服を申し立てた。
しかし、頭領は顔をしかめて「我が国の存亡に関わる問題が潜んでいるのだ。連絡にしても抜かりがあってはならぬ。」と百蔵に雷を落とした。それでも百蔵はふだんは下っ端がやる仕事を押し付けられたことに不服で、ついうっかり「本当にうちの皇太子を狙ったのか?」とポロっと呟いてしまった。
中ノ国の皇太子が狙われたことは事実であることから、その言葉に面子を潰された万蔵も千蔵も気分を害し、この生意気な若造に一斉に「では誰を狙っていたのか?」と凄んでみせると、分が悪いと感じた百蔵は、右下や左下に目線を泳がせるとそのまま黙ってしまった。
”まさか、本当に頭領も千兄も、火口衆(西乃国の諜報組織)が躍起になって探しているのは西乃国の前の皇太子だって知らないのか?それとも俺が掴んだ情報がガセなのか?たしかに、政変から1年半近く経って今更前の皇太子を探しているっていうのも妙な話だしな。”
頭領は苦虫を嚙み潰したような顔をしながら「万一照挙殿下を狙っていなかったにせよ、西の間者がこの国に入り込んで堂々と人さらいをしているのは事実だ。これはただ事ではない。劉操が西域を侵略しているのはお前も知っているだろう?いつ矛先がこの国に向かうかわからないではないか。とにかく劉操の動向をしっかり掴んで、その情報を仲邑備中殿に伝えるんだ。」と吐き捨てた。
骸組の中でも一番頭が切れる百蔵は、この一言で、この案件の主が我が皇帝ではないとわかり驚愕したが、顔色一つ変えることなく、万蔵頭領に向かって「御意。」とだけ言い、千蔵には「じゃあ千兄。」とだけ言うとその場でどろんと消えた。
どろんと消えた百蔵はその小屋の屋根の上に現れ、そこに仰向けに寝転がると、雲一つない大きな空を見上げながら、声には出さず心の中で大きな大きなため息をついた。
今日も中ノ国の空は、地上での喧噪とは裏腹に青く澄み渡り、太陽はその光を燦燦と地上に送り続けている。
彼は、直観的に、この国は外からの攻撃の可能性だけではなく、国内の政変の可能性もあり、確率的には、劉操からの侵略よりも、むしろ仲邑備中による下剋上の方がよっぽど高いと思った。
”やれやれ、この国の平和も千年で終了か。”
お読みいただきありがとうございました!
またのお越しを心よりお待ちしております!