第四章 転機
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
劉煌が亀福寺から忽然と消えた時、小春は、亀福寺から見て西側にある広場に来ていた。
劉煌が毎日午後は一人で出かけることから、小春は、山羊のメイを飼い始めてから、山羊の餌やりにいつも午後は山羊を連れて、あちこちに出没していた。しかし、山羊は近場の草を食べつくしてしまったので、仕方なく毎日少しずつ草を求めて遠くに行かざるを得なくなっていた。ちりも積もれば山となるように、毎日少しずつ距離が重なって、とうとうその日は、寺から西に向かって2kmほど離れた広場まで山羊と共に草を求めてやってきていた。
小春は、山羊に草を食べさせていると、その日は珍しく遠くに人だかりが見えた。
その人たちは馬に乗り、弓を射っていた。
小春は、すぐにそれが貴族の余興としての狩りであると気づくと、その人たちに自分の山羊がターゲットにされたらかなわないと思い、すぐにまだ草を食べたそうな山羊を抱っこして、狩人たちに見つからないように彼らの後方の森を目指して歩き始めた。
小春が山羊を抱っこしてようやく森の小道に入った所で、彼女は、自分と同じ位の年頃の男の子が、大人の男に追いかけられ、必死に逃げている姿を目にした。小春はとっさに山羊を地面に降ろすと、いつも帯に挟んでいるパチンコ(スリングショット)を取り出し、片目をつむって狙いを定めると、追いかけている大人の男の目をめがけてパチンコを引いた。
小春は、本当に取り柄の無い女の子だったが、実はパチンコの腕前だけはよく、空高く飛んでいる鳥、勢いよく走っている猪、全てに対して、思い通りの場所に命中させることができた。命中率99.99%の腕前はここでも遺憾なく発揮され、見事に狙い通り大人の男に玉が当たると、大人の男はギャっと言って両手で顔を抑えながら勢いよく転び、転んだその場所でのたうち回った。そういう時であっても慈悲のかけらの一つも無い小春は、攻撃の手をいっさい緩めることなく、山羊に向かって言う。
「メイ、あの男をつついてきな。なんなら食べちゃってもいい。」
メイと呼ばれた山羊は、食事を途中で切り上げさせられたというフラストレーションもあって、不敵に目をキランと輝かせると「メエェ~」と鳴きながら、地面に倒れ込んで苦しがっている男に向かって、まるで猪の如く突進していった。
小春はその隙に、追われていた男の子に向かって走り出すと、男の子にむかって「こっちだよ、早く!」と声をかけた。男の子は藁にも縋る思いで、顔も身体も丸い子供に従って走り出すと、後ろの方で大人の男の「ギャー!!!やめろー!!!」という悲鳴と共に、山羊の「メエぇー」という鳴き声が木霊していた。慌てて振り返ろうとする男の子に小春は、「いいから、早く!」と言うと、迷わず彼の手を取って走り始めた。森の木々の合間には冬でも子供がすっぽり隠れる背丈の草が茂っていて、それを掻き分け二人は走り続けた。途中男の子に体力の限界がきて「僕もうだめ。」と言って気絶すると、小春は一切ためらうことなく男の子をエイッといって背中に担ぎ、そのまま山めがけて再び走り始めた。
そして緊急事態の小春は、一切迷うことなく劉煌との約束をいとも簡単に破ってしまった。
こともあろうに、あの洞窟に男の子を連れてきてしまったのだった。
小春は男の子を洞窟に横たえると、自分の上着を脱いで男の子にかけてあげた。その拍子に初めて男の子の顔をしっかり見た小春は、あまりの男の子の整った顔立ちに思わずみとれてしまった。首を傾けながら男の子の顔に見入っていた小春の小さな胸が、はちきれんばかりの勢いで大きくドクンドクンと鳴った。
”すごいハンサム......”
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