第三章 隠密
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
そんな、外の喧噪を知らず、中ノ国の皇宮内では、東之国皇帝:簫翠考が去年と同じように、娘の皇女:簫翠蘭と彼女の世話係のお久と共に受付を済ませ、その場で他国の皇帝一家がやってくるのを呑気に待っていた。
今年は粗相なく出席できる運びとなった中ノ国の皇太子:成多照挙と共にその場にやってきた中ノ国皇帝:成多照宗の下に、宰相の仲邑備中が飛んでくると、挨拶もそこそこに宦官まで下がらせ、中ノ国皇帝の耳元で、西乃国は三か国の祭典に出席しない旨を囁いた。
仲邑備中が下がった後、明らかに顔色の悪くなった中ノ国皇帝に、東之国皇帝が視線を合わせると、中ノ国皇帝は、「西乃国の皇帝がボイコットした。」とポツリと呟いた。
それを聞いた東之国皇帝もサーっと顔から血の気が引き、「劉操はいったい何を考えているんだ。初年度から欠席とは。」と唸った。
「全くだ。いい噂は一つもない上に、さらに悪い事実を一つ目の当たりにした。」
中ノ国皇帝は、顔をしかめながらそう言うと、ため息をついてホストの自分の役割に頭を抱えた。
「あれは3人いないとできない。仕方ない、我が皇太子を代わりにするしかない。照挙、やれるな?」中ノ国皇帝は、息子に向かって暗い声でそう言った。
「・・・・・・」
中ノ国皇太子の成多照挙は、8歳にしては目鼻立ちが整った美形で、背がひょろひょろと高かったが、青白い皮膚をしていて傍から見ても元気な子供には到底思えなかった。
照挙は、物心ついた時から覇気のない皇太子で、将来皇帝の座を継ぎたくなく、このような皇室関連行事は、何かと理由をつけてサボってきた。
ところが、サボりネタが尽き、今回渋々出席した初めての3か国の祭典で、東之国の皇女を一目見るや否や、その可憐な美しさに目を奪われ、文字通り夢中になってしまった。
そして今も、皇帝の一歩後ろに控えて立っている美しい簫翠蘭に目が釘付けになっていて、照挙は、全く父の話を聞いていなかった。
「照挙、おい、聞いているのか?」そう言われながら、父から小突かれてようやく照挙は、父が何か自分に話しかけていたことに気づいた。
仕方なく父を見上げて照挙は、「何?」と面倒くさそうに聞いた。
中ノ国皇帝は、息子とは言え、公の席で皇帝にそんな無礼な応答をしてきた照挙をぶっ叩いて喝入れしたい衝動をグッと抑えながら、
「だから、お前が西乃国の皇帝の代わりに儀式にでるのだよ。」と歯ぎしりしながら言った。
照挙は、それに「えっ?」と言ったまま、そこで完全に固まっていた。
実は、皇帝達が儀式に行っている間に、簫翠蘭に話しかけようと狙っていた照挙は、その計画が頓挫することに困惑していたのだった。
しかし、父である中ノ国皇帝は、息子の「えっ?」を、3か国の祭典にデビュー早々いきなり大役の代わりを務めることへのプレッシャーと困惑と、どこの親でもしてしまう見当違いな解釈をし、
「息子よ。大丈夫だ。去年は9歳の西乃国の皇太子が、誰の助けもかりず、完璧に儀式を遂行できた。もっとも、彼ももうこの世にはいないがな。全く皇族だからといっても、何が起こるかわからないものだ。」
と言って大きなため息をついた。
それを聞いていた東之国皇帝も、まさか、彼が本当は生きていて、先ほど皇宮門前で自分たちを目で見送っていたとは露にも思わず、中ノ国皇帝に大きな相槌をうって、
「まさに......。良い後継者に恵まれて羨ましいと口にした矢先に、その子が事もあろうに実の叔父に殺されるとは、、、」と顔をしかめながら吐き捨てた。
照挙は、大人たちが何を話しているのか全くわからなかったし、興味すらなかったので、簫翠蘭の方を向いて、自分史上最高の微笑みを投げかけたが、彼女は照挙の方を一度も見ることなく、彼女の父の言葉を聞いた瞬間、酷く悲しそうな顔をして俯いた。
その簫翠蘭の何とも形容しがたい憂いを帯びた表情を見た時、中ノ国皇太子:成多照挙は心に固く誓った。
”あなたを二度とこんな顔にさせやしない!”
”私が皇帝となってあなたをお守りする!”
覇気のまるでなかった中ノ国皇太子:成多照挙の体内で、先祖代々から受け継がれてきた皇帝直系のDNAが、簫翠蘭というシグナルを受けて動き出した瞬間だった。
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