第九章 転回
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
「劉操、お前の悪運もこれまでだ!覚悟しろ!」
そう言われた劉操は、思わず我が耳を疑った。
”この声は、皇兄?ばかな。奴は朕が殺したではないか。”
劉操は、倒された瞬間気を失って自分はいつもの悪夢を見ているのだと思った。
それならば目を覚まそうと、首を振っていると目の前に立っている若者の顔がチラッと見えた。その瞬間、劉操はそれが夢でも空耳でもないことに気づいてしまった。
「おのれ。劉煌め、生きていたのか!!」
劉操がそう叫ぶと、中ノ国の皇族だけでなく劉操にこびへつらってきた西乃国の宦官や将校らも驚愕し思わず手に持つ武器を降ろしてしまった。
劉煌の頭上には、西乃国の金龍が劉煌を守るように飛んでいて、劉操以外はそれにも圧倒されていた。
しかし、劉操はその龍を捕まえる為にここにやってきたはずなのに、全く龍を無視していた。いや、それは正確な表現ではない。劉操には何故かあんなに渇望していたのに、西乃国の龍の姿が見えなかったのである。
劉操は配下が戦意喪失しているのを見ると、すぐに隣にいた西乃国の禁衛軍統領に向かって「この役立たずめ!」と叫ぶや否や、その場で彼の首をあっという間にはねた。
それを目の前で目撃した西乃国の兵士たちは、慌てて下げていた武器を持つ手を上げ、中ノ国の皇后は目の前で起こった無残な殺戮に恐怖のあまり悲鳴をあげた。
劉操がその血のべったりと付いた剣をさらに振り回そうとした瞬間、劉煌は目にもとまらぬ速さでパッとクナイを打った。劉煌のクナイは劉操の剣を握っていた手に命中し、劉操はギャーッという声を上げて剣を落とし、右手を押さえた。
劉操は怒り心頭で周りに叫んだ。
「白凛はまだか!ええい、もう誰でもいい、劉煌を殺せ!」
しかし、西乃国の軍の誰一人として武器を持てなくなった劉操に従う気配はなく、手に武器は持っているものの、どんどんと後ずさりしていた。劉煌が龍に劉操を捕まえさせようとした瞬間、更に西乃国軍がどんどんと皇帝楼に侵入してきた。その中には梁途と白凛もいた。そしてあろうことか白凛の前には、人質になった唐妃と照子の身代わりになった小春がいた。
白凛は皇帝楼の入口で声を上げて叫んだ。
「陛下!唐揺とその娘を見つけました!」
「娘など要らぬ。唐揺、龍は、朕の龍はどこにいる!」
劉操のこの発言に、その場にいた全員が呆気に取られ、困惑している中、劉煌は一人感慨深げに口を開いた。
「なるほど、お前にはこの西乃国の龍が見えないのだな。つまり豚に真珠ってことだ。」
その声を聞いた瞬間、白凛はそこに劉煌がいるのだとわかった。
咄嗟に白凛は、唐妃の耳元で囁いた。
「私の命は太子殿下のものです。大丈夫です。あなたたちは必ず助けます。少しの間芝居に付き合ってください。」
唐妃は驚いて小声で聞いた。
「あなた、照挙殿下の?」
それを横で聞いていた小春は、白凛の焦りまくった違いますという否定の囁きが耳に入らず、いきなり「何?」と叫んで真っ赤になって怒ると、その体を武器にして突然白凛に思いっきり体当たりしてきた。
白凛は、今あなたたちの味方ですと言ったのに、敵対して縛られる時もおとなしかった、この太めの女が、あろうことか味方なのに捨て身の体当たりをしてきたことに、頭も体もついていけなかった。
そのため、白凛は生まれて始めて隙をつかれ、相手が自分の上を馬乗りすることを許してしまった。
その隙に唐妃は、走って皇后の元へ行き、二人は文字通りお互いを支え合った。
両腕を縛られながらも、怒り狂って「絶対許さない!」と叫びながら白凛の腕の防具に噛みついてくる獰猛な動物もとい人間、、、しかもうら若き女性に、圧倒されてタジタジになっている周囲の隙をついて、劉操は小春を白凛から引き離し、彼女の喉元に左手に持った短剣を突きつけた。
それを見た瞬間、劉煌と照挙は焦り、二人とも同時に「小春!」と叫び腕を伸ばした。
「なるほど、劉煌。なんとお前の泣き所がまだあったとは。さあ、龍を渡せ。」
劉操は、さらに短剣を小春の首に近づけて劉煌に迫った。
その瞬間備中が、丸腰で突然劉煌の前にガバっと躍り出て劉操の足元で懇願した。
「私が身代わりになる!どうか娘を放してくれ!」
「備中殿、いけない!」
この12年半、劉操という生き物の生態を学んできた劉煌は、備中の行動が藪蛇にしかならないことに気づいていた。
劉煌の懸念通り、その備中の悲痛な叫びが終わるか終わらないかのうちに、劉操の腰巾着:石欣が、何の躊躇もなくグサッと備中の首を槍で突いた。
「備中殿!」
「備中!」
まさか、どっぷりと肥えた年配の装飾品をつけまくった宦官にこんな素早い動きができるとは思わなかった中ノ国側は、全員宰相の名前を悲痛な面持ちで叫ぶとそこで固まってしまった。
備中の首からは、ドビューッと真っ赤な血潮が噴水のように噴き出し、彼はそのままその場に崩れ落ちた。
この光景を目撃した中ノ国の皇后も唐妃も、悲鳴を上げる余裕もなくその場で失神した。
首を動かせず自分の足元で何が起こったのか見えなかった小春は、ただ自分に真っ赤な液体がかかったことから、狸親父が刺されたのかもしれないとは思っていた。
すっかり戦意喪失してしまった中ノ国側の前で一人、劉煌だけがさらに復讐の炎を燃やしていた。
やがて白凛が立ち上がり劉操の背後にやって来ると、白凛は真正面を向いて劉煌らを睨んだ。
”お凛ちゃんを怒らせちゃったからな~。小春はこのままでは命はない。龍を渡して小春が無事に戻るなら構わないが、何しろ見えない相手に渡しても、貰っていないと因縁つけられて小春が殺されるのがオチだ。これは困った。”
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