第八章 探索
初投稿です。
仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー
あわただしく小春を見送った清聴は、本堂に戻ると今迄の緊張感が一気に抜け、ヘナヘナと御本尊の前に座り込んでしまった。しばらくそのままでぐったりとしていた清聴は、力なくご本尊を見上げると
”どうか、小春にご加護を!”
と心の中で叫んで手を合わせたが、その瞬間その場でバッタリ倒れてしまった。
3時間後、自然に目覚めた清聴は、あたりをいっぺん見回し、昨日の晩からの出来事は夢ではなかったことに気が付いた。
昨日までは、まさか今日から一人でお経を上げるようになるとは思いもしなかった彼女は、経典を開きながら、今日から追加のお経は蓮だけでなく小春の分もしなくてはと思うと、これからは二人とも本名を封印するのだということに気づいて苦笑した。
”あの子たちがいつか本当の自分の名前で生きていける日が来ますように。”
そう御本尊に向かって手を合わせながら、清聴の目からは大粒の涙がとめどなく流れ続けた。
~
一方、朝政が終わり、今日も小波留の見舞いに行こうとそそくさと朝堂を出ようとした皇太子:成多照挙は、突然背後から父である皇帝:成多照宗に呼び止められ、慌てて後ろを振り向いた。
何事かと驚いた表情を隠せない照挙に、照宗は「照挙よ。昨晩の火事だが焼けたのは後宮だけではない。」と言い出した。
照挙は今度は怪訝そうな顔に変わって「それは、先ほどの朝廷で報告があったではないですか。だから京陵の空地にテントを張って避難所を作るって。」と言うと、照宗はふーと息を吐いてから「今朝、宰相が欠席だっただろう?あれは宰相府も焼けたからなのだ。」と告げた。
「え?でも要人とその家族に被害はなかったと。」
「そうだ。宰相は無事だ。だが、娘が煙を吸ってな、普通ならなんら問題ないところだが、怪我で体力が落ちていただろう?だから念のためしばらく空気の良いところで療養させることになったそうだ。」
「なんですと?小波留が?どうして知らせてくれなかったのですか。」
「だから、今知らせておる。」
「空気の良いところとはどこですか?見舞いに行かなくては。」
「それが大原県の香向村でな。」
「香向村、、、そんな東南の僻地に、、、」
早馬でさえ京陵から2日はかかる地に仲邑波留が療養に行ったということは、事実上、毎朝の朝廷にでなければならない皇太子としては、彼女の見舞いに行くことは許されないということを意味していた。
照挙はオロオロしていたが、何かハッとすると「でも今だったらまだ遠くに行っていないはず、、、」と言って今にも走りださんとした。
照宗は慌てて、
「照挙、もう彼女が発って半日以上経つ。それにようやく怪我が治りかけていた時に火事にあって、その恐怖も重なって精神的にも参っているそうだ。お前が駆けつければ彼女も気を遣うだろう。今はそっとしておいてあげなさい。医者の見立てだと3か月ほど香向村で療養すれば京陵に戻ってこられるそうだ。」と言って引き留めた。
たしかに、波留は、見舞いにくる照挙に毎日申し訳ない申し訳ないと言って気を使っていた。
その場で唇を震わせ、拳を握りしめている照挙に、照宗は彼を納得・安心させるために顎でうんと言って宦官に聖旨を持たせた。宦官は恭しくそれを持つと照挙の前に行き聖旨を読み始めた。
宦官が読み終わった後、照挙は聖旨を受け取り照宗の方に向きなおして叩頭し「陛下、かしこまりました。ありがとうございます。皇帝陛下、万歳。」と叫んだ。
照宗は内心ヒヤヒヤしながらも「お前が心配すると思って昨晩備中が報告に来た時、これを備中にも渡しておる。療養から帰ってきたら婚礼だ。」と言ってダメ押しをした。
ちょうどその頃、火事を心配した劉煌が、昼休みを使って宰相府を訪ねていた。
ところが、いつものように通されることなく、留守を預かっている仲邑備中の正妻が、自ら焼けた門の所に出てくると、彼に銭の入った紅い袋を渡し、以後彼の往診は不要と言うではないか。
患者に対する責任があると劉煌が粘ると彼女は「仲邑波留殿の診察は今後皇宮医院の御典医が担います。」と宣言した。自分の娘に殿という敬称をつけた彼女に劉煌が顔をしかめると、彼女はダメ押しにこう言った。
「仲邑波留殿は3か月後に皇太子妃になられるお方、町医者が関われるようなお人ではないのです。どうぞお引き取りを。」
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