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第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 萬殷楼は京陵の中心を通る大通りのど真ん中にあり、ちょうど杏林堂のはす向かいにデーンとそびえる極彩色で3階建ての建物だった。その建物の裏側には小路があって母屋を出てその道を進むとちょっとした林にぶつかる。普通の人ならそこが行き止まりと思うだろうが、実はその林の中にこの遊郭の従業員でもごくわずかしか知らない小さな小屋があった。


 桃香の使いは萬殷楼に飛び込み、桃香からの使いである旨を伝えるとその建物を通り抜けて小路を通り、林の中を抜けて小さな小屋に案内された。

 この窓一つない外から見たら納屋か何かかと思う建物の中は、立派な個室になっていて、家具こそ机が一卓だけだが、部屋の至る所に燭台があり窓が無いのにとても明るい部屋だった。


 桃香の使いがそこで座って待っていると、通された出入口とは異なる奥から、全ての髪を左から右に流してまとめあげ、萬殷楼の建物と同じような極彩色の着物をまとった年配の女性が颯爽と入ってきた。


 その女性はまず机に進み、その上の茶碗を取ってからさらに前に進み、桃香の使いの前に立った。


 萬殷楼の女将は、桃香の使いをまずは足元から頭までジロリと見ると、茶と引き換えに手紙を受け取った女将は「ご苦労だったね。茶を用意したから一休みしておくれ。」と言ってから桃香の使いにくるっと背を向け机の所に戻ると、そこにサッと座って手紙を読み始めた。


 女将の目線が手紙の3行目に移った丁度その時、ううという唸り声と共に桃香の使いは真っ赤な血を吐いてその場に倒れた。それにピクリとも反応せず女将は、手紙を最後までしっかり読み終えるとその手紙を蝋燭の火にくべた。しばらく考えながら死体と共にその部屋にいた女将は、やおら部屋を出て扉の前に立っていた用心棒にひそひそ話しかけた。


「杏林堂の医者を拉致して、玄桃奴(成多桃香)の所に運んどくれ。くれぐれも誰にも見られないようにしとくれよ。」

「拉致は簡単ですが、問題はどうやって姐さんのところに運ぶかですね。」用心棒はそう言いながら扉の内側をチラッとみた。

「あれはいつものところに?」

 用心棒の問いかけに女将は、用心棒に背を向けたまま1回頷いた後、何事もなかったかのようにスタスタと母屋に帰っていった。


 萬殷楼の用心棒はすぐに杏林堂の医者拉致作戦を実行したが、この杏林堂の小高蓮という医者にはまず親蓮隊というファンの女の子達が沢山いて、彼の外出時はボディーガードになっているため、なかなか彼が一人になるという機会もなければ本人自体にも全くスキが無く、一人では埒があかず結局裏社会に助っ人を頼んだ。しかし、それでも全く太刀打ち出来ず、それどころか、逆に見事に全員劉煌に捕まってしまった。


 劉煌は、捕まえた6人を伏見村の自宅小屋に連れて行き、ワクワクドキドキしながら試作品の自白薬を時間をかけて煎じた。そしてそれを満面の笑みを浮かべながら無理やり全員に飲ませた。


 飲ませてから30分経った時、劉煌は嬉しそうに両手を合わせて顔の横でこすり、ワクワクしながらこう言った。


「さあ~、今からいろいろ聞いていくからね。まずはあなた。名前と所属先と役職名を言って。」


 まずはあなたと言われた用心棒が、焦点の合わない目をしながら何の躊躇もなく正直に答えた。


 劉煌は屋根の上にいるお陸を見上げると、瓦葺の隙間から顔を出したお陸が親指を立ててOKと返してきた。お陸は、呂磨に行って以来そのハンドサインが本当に気に入っているらしい。

 そして劉煌の実験は続き、全員が正直に答えていることを確認してから、本題の何故劉煌を拉致しようとしたのかに入ると、みんな正直に用心棒に頼まれたと答えたが、用心棒は「後宮の桃香さまの所に運ぶため。」と答えた。


 それだけで劉煌は全てピーンときてしまい、これ以上の情報は不要と判断するやいなや、彼らに別の丸薬を飲ませると彼らはすぐに首をカクンとして寝てしまった。


 それを見たお陸は、瓦葺の屋根を直してから飛び降りて扉を開け劉煌の家に入ると、劉煌の手を取って外の切り株テーブルの所に連れてきた。


「西乃国は絡んでなさそうで良かったけど、なんでこの国の後宮がお嬢ちゃんを拉致しようってのかね?」お陸は、切り株テーブルの上に胡坐をかきながらそう聞いてきた。

「第二皇子が御典医たちじゃ埒があかないからよ。」劉煌はため息まじりにこう呟いた。


「それにしたって正式にお嬢ちゃんを皇宮に呼び寄せればいいだけじゃないか。」

「桃香の身分では呼び寄せられないのよ。それより師匠、私の自白剤、初めて使ってみたけどバッチリだったわね。今はまだ試作品だったから煎じたけど、今度は持ち運べるように丸薬を作ってみるわ。ああ、丸薬ができたらまた実験台が欲しい♡」


 劉煌は、自分の身に起きている危機より、世界でまだ誰も作れたことのない自白剤を初挑戦で成功させたことに有頂天になり、ルンルンしながらそう言った。


 完全に劉煌が本題から外れているのを心配してお陸は彼に釘をさした。


「それより、桃ちゃんはきっとまたお嬢ちゃんを狙ってくるよ。」

「桃香は元No1芸妓よ。馬鹿じゃないわ。萬殷楼の女将に依頼して成功しないなら、この手は誰に頼んでも無理だとすぐ気づくはずよ。」


 こんなやり取りをしながらも、劉煌はこれもまたピンチだがチャンスかもしれないと感じていた。


 劉煌の中ノ国に滞在している目的はただ一つ、中ノ国皇宮のどこかに隠されている西乃国の龍を手に入れることだ。だから、桃香をうまく利用して皇宮内に入れさえすれば龍の手がかりをつかめるかもしれないと思ったのだった。


 劉煌の推察どおり、桃香は小高蓮の拉致をすぐに断念し、考えた次の作戦は小高蓮を御典医にしようということだった。


 勿論身分の卑しい桃香が、どこの馬の骨かわからない小高蓮を御典医にすることなどできない。


 まずは、後宮で一番小高蓮に診て貰いたがっていた唐妃に、小高蓮が御典医だったらよかったのにですねと言って唐妃を巻き込むと、唐妃はすぐにはりきって仲の良い皇后にお顔のエステの話をした。

 皇后は桃香や唐妃より一回り年上で、いつも彼女たちを見て自身のお肌の衰えを嘆いていたので、彼女も是非小高蓮に診て貰いたいと言いだした。


 こうやって小高蓮を御典医にするという後宮内の陰謀同盟が結成され、それぞれの寝屋に皇帝が来るたびに、それぞれが京陵の町医者:杏林堂の小高蓮を御典医にとプッシュした。しかし、後宮に行くたびにどこでも小高蓮を推す声を聞かされると、皇帝の中の天邪鬼気質がメラメラと現れ、後宮同盟の小高蓮御典医計画はすぐに頓挫してしまった。


 しかし頓挫した頃には、下半身不随で記憶が少し曖昧なところがあるものの第二皇子も目覚めていたので、それほど小高蓮が必要ではなくなっていた桃香は、もっと大胆な陰謀を計画し始めた。


 世の中というもの、自分が登るよりも他人を蹴落とした方が早くて簡単だ。


 それは、すなわち、照挙を皇太子の座から引きずり落とすことだった。


 勿論皇宮内はおろか皇宮外でも皇太子を直接狙うなどの自殺行為はできない。


 桃香が考えたのは他でもない間接的に照挙を追い込むこと。


 すなわち仲邑波留を抹殺することだった。


 年に1度しか会えない相手を失った悲しみで昏睡になったほどの情の深い皇太子である。そんな相手とは比較にならないほど親密だった恋人を失えば、あわよくばショック死するかもしれない。


 しかし、これは以前の小高蓮の拉致のように失敗は絶対に許されない。

 必ず成功させなければならないことゆえ、桃香は慎重に計画を練り始めた。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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