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第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 それから数か月で元北盧国ゲリラの動きはあってもさほど激しくなくすぐに鎮圧でき、目立つような人の流出もなくなった。


 そして、中ノ国の宰相の娘、仲邑波留の意識もすっかり戻った。


 しかし、まだ床から出られるわけではなく座るのが精一杯だったが、皇帝が朝政に完全復帰したため皇帝代行の重責から解放された皇太子の照挙が、毎日午後になると宰相府を尋ねていた。


 このひと月、照挙は献身的に波留を看病した。

 劉煌は、医師として、仲邑波留の回復が早かったのは照挙の影響が大きいと思っている。

 照挙は、まだ波留の意識が混濁している状態の時から枕もとにずっと寄り添い本の読み聞かせをしていた。


 二度目に仲邑波留の意識が戻った時、照挙は両手で彼女の手をしっかり握っていた。


 彼女は目覚めると不思議そうな目で照挙を見つめた。

 そしてあたりを見回し、自分の部屋であることを確認すると波留は「殿下、どうしてここに?」と聞いた。

 照挙は泣きながら「良かった。目覚めて良かった。小波留。私の小波留。」と言って握っている彼女の手を自分の頬につけてから何度もその手に接吻をした。そして自分の手の親指から翡翠の指輪を外すと、彼女の親指にそれをつけた。


 彼女の意識が戻ってからは、照挙は、本の読み聞かせに加えて茶や薬を飲ませたり、時に食事を食べさせることまでするようになった。勿論一国の皇太子にこんなことをさせてはと備中が床に頭をこすりつけて止めるよう懇願したり、皇帝に進言して止めさせようとしたが、照挙は首を縦に振らず、以前昏睡だった自分を救ってくれたのは小波留だったからと、皇帝まで納得させて、それはそれは献身的に彼女の看病をした。


 一度往診時にこの姿を見た劉煌は、ますます照挙への好感度があがり、自分と小春も彼らのような関係になりたいと心から願ったものだった。


 その日も照挙は、献上された茶葉を失敬して宰相府を尋ね、波留の部屋に入る前に下女に茶葉を渡し、これで茶を入れて持ってくるよう伝えた。

 そして波留の部屋に一歩足を踏み入れた時、照挙は思わずあっと言ってその場で立ちすくんでしまった。


 波留はベッドに座っており、顔の包帯が取れていたのだ。


 照挙は、きっと近くで見たら顔にいっぱい傷跡が残っているだろうと心を痛めながら、ゆっくりと彼女に近づいた。


 ところが、ベッドの目の前に立って波留の顔を恐る恐る見た照挙は、ゴクリとつばを飲み込んで目を見張った。なんと波留の顔にあれほど沢山あった傷は、まったく跡を残さず消え、しかもお肌は赤ちゃんのようにつるつるぴちぴちにバージョンアップしていたのだ。


 波留は照挙が驚いていることに気づかず、彼に向かって「殿下、小高先生の見立てでは明日から歩行練習してよいとのことです。」と嬉しそうに語った。


 照挙は、それよりもぴちぴち肌の方に意識が行ってしまい顔の造作は以前と変わらないものの「顔もきれいだ。」と思わず呟いてしまった。


 波留は何しろ父親に瓜二つなので、顔がきれいなどと言われたことが生まれてこの方一度も無い。波留は真っ赤になって照れながら「小高先生は美容で評判らしいのです。それでお肌を綺麗に治せたのだと思います。」と恥ずかしそうに囁いた。


 確かに小高蓮という医者は、高い美容技術を持っているともっぱらの噂で、その評判は皇宮内にも響き、特に後宮の唐妃は彼に興味津々でなんとか杏林堂に行けないものかと皇宮内で画策しているのは有名な話だった。


 本来であれば、彼女の顔の傷よりも彼女の身体の大怪我をここまで回復させた彼の総合医としての力量こそ大いに称賛されるべきなのだが、古今東西、医学の心得の無い者からみると、医者という者は、どんなに瀕死の状態でも命を救えて当たり前という誤った固定観念が根強く、本当はそれは奇跡と言っても過言ではないことを心底理解できている者は少ない。


 劉煌が、西乃国とドクトル・コンスタンティヌスの医療技術を駆使して奇跡的に仲邑波留の命を救い回復へと導いていることも、当初は喝采されたものの同じ時に受傷した第二皇子:照明がまだ昏睡状態であるにも関わらず、今ではすっかり別に医者なんだから当たり前のことになってしまっていた。


 それにしても第二皇子照明の怪我は深刻だった。

 まず頭の外傷は治ったものの、未だ全く目覚める気配が見られなかった。


 鷹狩までは、頼りない皇太子を廃太子とし、第二皇子の照明を皇太子にという声が日に日に強くなっていたのに、この鷹狩とその後の朝廷で意外に皇太子がしっかり皇帝の代行をできたこともあるが、なにしろ第二皇子自身の再起の見通しが全く立たないことから、第二皇子派はどんどん皇太子派に寝返っていった。


 鷹狩までは、更なる追い風を待って一気に皇太子を追いつめる作戦でいた第二皇子の生母:成多桃香にとって、これは全く想定外のことだった。桃香は情報通なので仲邑波留が当初御典医達に匙を投げられたのに、一介の町医者、しかも飛び切り若く開業したての者が回復させているという噂もしっかりと聞きつけていた。


 いつまでたっても目覚めぬ我が息子に対して、毎日首をかしげるだけの御典医達に苛立ちを隠せなくなった桃香は、とうとう遊郭:萬殷楼と今後一切の接触を絶つという後宮に入宮する際の誓約を破り、こっそりと下女に文を持たせ萬殷楼に送った。



お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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