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第八章 探索

初投稿です。

仕様等まだ慣れていない為、設定・操作ミスありましたらご容赦ください。


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるためR15としていますが、それ以外は復讐ものと言いつつ笑いネタ満載のアクションコメディー

 お陸は困ったような顔をしながらも、自慢げに呟いた。

「ほら、やっぱりおっきいお兄ちゃんだったじゃないか。」


 ”どうして李亮がここに、、?、”

 劉煌は自分でもどんどん顔の血の気が引いていっているのを感じていた。


 ゲリラの一人が、他国に逃亡しようとした同胞達が囚われている建物を見つけると、北盧国語で「ここにいた!!」と叫んだ。ゲリラ達は戦いながらその建物に集まり、同胞を解放し始めた。


 ”まずい、このやり方では結局民はみんな殺されてしまう。”


 劉煌は、四方八方へ逃げようとしている民に襲い掛かった西乃国軍の兵士達の足を狙って次々に手裏剣を打った。


 劉煌の手裏剣技は、滅多に褒めないお陸を唸らせるほどの腕前になり、その速さ正確さは勿論のこと、風と融合した彼独自の技は、音も立てなければ武術の心得がある者の動体視力でも一度彼の手から離れた手裏剣の動きは全くわからない。


 それは、こんな闇夜でも何が起こったのか相手がわからないうちに相手を倒してしまうほどだった。


 あっという間に西乃国軍の兵士達の戦闘能力は奪われ、まともに立てない者達の山がそこにできあがってしまった。


 それに乗じてゲリラは民を逃がしたが、それに留まらず一部のゲリラは匍匐で退却しようとする西乃国軍に襲いかかろうとした。


 劉煌はすぐにゲリラたちの足にも手裏剣をお見舞いしたが、今度はどこからか西乃国軍の兵士達が応援に駆けつけてきてしまった。


 彼らが足を引きずるゲリラ達を殺そうとした時、劉煌は突然木から飛び降りて李亮の背後から李亮を襲った。


 劉煌は李亮の後ろにピタリとつき、両腕を使えないように左腕を李亮の前に回して上半身を締め付け、右腕に持った短剣の月明りが反射してキラリと光る刃を背後から李亮の首元に突きつけた。


 そして劉煌は、わざと北盧国語訛りの参語で「こいつが死んでもいいのかっ!?」と西乃国軍の兵士達に向かって叫んだ。


 思わず李亮は、その声にハッとして首に短剣が突きつけられているのを忘れて後ろを振り向いてしまった。そのため李亮の首は突きつけられた短剣の刃をかすめ、その傷口から血がツーっと肩に向かって流れ落ちた。


 しかし、李亮は血が流れるほど首が傷ついたことなど気づかないくらい、自分を盾にしている相手の目に見入っていた。


 ”太子!なんでこんなところに?”


 それでも劉煌は李亮の顔を一切見ることなく、その目線は西乃国軍の兵士達の一挙手一投足に集中していた。


 西乃国軍の兵士達は李亮が人質になっていることにうろたえ、何も出来ずにいると、傷ついたゲリラたちは一斉に退散し始めた。その場に生粋の北盧国人が居なくなったことを確認すると、劉煌は頷き、その合図でお陸が眠り薬の入った大きな煙玉を西乃国軍の兵士達の目前に落とした。


 その瞬間、劉煌は李亮を抱えたまま飛び上がり、まるで重力の影響を受けていないかのようにぴょんぴょん飛び跳ねながら切り立つ山の岩肌を文字通り飛んで越えていった。


 劉煌は、国境上で李亮を解放すると李亮はその場でひれ伏し地面に頭をこすりつけながら唱えた。


「皇太子殿下、万歳!」


 李亮が劉煌を皇太子殿下と呼ぶのは、本当に皇太子だった時代を含めても初めてのことだった。


 劉煌はお陸の方をチラッと見ると、お陸は全く李亮に対して攻撃態勢に入っていなかった。


 それどころか、劉煌が李亮が叩頭をしているのをやめさせようとしていないのに呆れて「アイヤー、お嬢ちゃん、おっきいお兄ちゃんの頭をあげさせなよ。これじゃ話になんないじゃないか。」となじった。


 お陸に向かって肩をすくめて見せた劉煌は、ああと言いながら李亮の両腕を取って彼を立たせた。


 李亮の第一声は意外なものだった。

「呂磨に行かれたと聞いていたもので。」


 劉煌とお陸は顔を見合わせると、劉煌がただ「うん。」とだけ言って答えた。


 それを聞いてキランと目を光らせた李亮は、劉煌の目をジッと見ながら「呂磨で何を?」と聞いた。


 劉煌は李亮をギロっと睨むと普段は全く使わない低い声で「それよりなんでこんなところにいるんだ。梁途は(李亮が)西域との戦闘地域に行っているって言ってたぞ。」と冷ややかに言った。


 すると李亮はまず左の口角だけ上げてニヤリと笑い「お言葉ですが、なんでこんなところには私のセリフです。」と言い始めた途端、今度は怒涛のように北盧国による西乃国侵攻から今迄のことを話し始めた。


「北盧国の皇宮にどうやって侵入したんだ?」


 劉煌のその問いかけに、李亮はちょっとだけどのように答えようかと考えた。


 ”太子ならカッチーニ会のことも知っているかもしれない。”

 ”でもこのことを話せば下手をすれば殺されるかもしれない。。。”

 ”でも、もしこれで太子に殺されるなら本望だ。”


 ここで李亮は賭けに出た。

「私がカッチーニ会のシンボルを持っていて......」


 途端に劉煌は目をひん剥いて大声で叫んだ。「なんだと?!」


 ”まさか李亮はカッチーニ会員なのか?それで平民の出でいきなり参謀になれたのか?”

 劉煌のガードは一気に固くなり、体からメラメラと殺気を出して李亮を睨みつけた。


 そこに今迄外野だったお陸が参戦し、その場の雰囲気とは打って変わって気軽に「ねえ、おっきいお兄ちゃんさー、あんたどうやってそれ手に入れたんだい。」と聞いた。


 李亮はまたニヤリと笑い「やっぱりカッチーニ会のことを知っていたんだ!」と呟くと、得意気に武器商とカッチーニ会のシンボルを手に入れた経緯を話した。


「そもそも永世中立を誓っていた国が、直接攻撃を受けたわけでもないのに他国に侵攻するなんて、おかしいでしょう。国のトップが攻撃的な存在に変わったとしか思えない。案の定北盧国皇宮でカッチーニ会のシンボルを見せたらどこもかしこもスルーでした。」


 劉煌は眉間に深く皺を寄せて「ということは、北盧国はカッチーニ会に支配されていたってことか?」と呟くと、横からお陸が入り「それでおっきいお兄ちゃん達が北盧国のカッチーニ会を潰した。。。」としめた。


 腕を組んで難しい顔をしている劉煌を横目にお陸は李亮に向かって「実はさ、おっきいお兄ちゃん、あたしらが呂磨でカッチーニ会本部は綺麗にお掃除してきたんだよ。」と鼻高々に言った。


 それを聞いた瞬間李亮は飛び上がって喜んだ。


「やっぱりそうだったんだ!太子が大量破壊兵器の国内流入を阻止したって孔羽から聞いていたんで、呂磨に行ったと聞いた時、カッチーニ会と戦うつもりなんじゃないかと思っていました。」


「しかし、奇遇だね。何も示し合わせていないのに、よりによって同じ日に同じ敵と戦っていたなんて。」嬉しそうにお陸はそう言った。


 しかし、喜んだのも束の間、李亮は顔を曇らせると、

「ただどっかの誰かはカッチーニ会よりも質が悪くて。」とボヤいた。

 先ほど小耳に挟んだのに劉煌は、改めて李亮に尋ねた。

「民の虐殺命令が出たのか?」

 李亮はもっと暗い顔になると「お聞きでしたか。」と小さい声で答えた。


 劉煌はポーカーフェイスで「それで李亮はどうしたいの?」と聞いたあと、それに付け加えて「北盧国の民を殺したいのか、殺したくないのか。」と最後は鋭いまなざしを李亮に送りながら尋ねた。


 李亮は、ガックリと肩を落とすとため息交じりに「殺したくない。何の罪もないのに。ゲリラ相手だって殺したくない。ゲリラになる気持ちもわかるし。でも言われた対策をしないと俺が殺られる。それで民が助かるならいいが、今の状態では犬死にになるだけだ。俺の後釜が引き継ぐだけだから。とにかく今は時間を稼いで対策を練ろうと、、、」とこぼした。


 ここで劉煌とお陸は2人で顔を見合わすとお互いに頷き合った。

「大丈夫だ。うまい方法がある。」


 そう言った劉煌の目つきは先ほどとは全く異なり、慈愛に満ちていた。


 ようやく波長がしっかりと合った2人を見てホッとしたお陸は「じゃあ、あたしは取ってくるよ。」と言うと難民収容キャンプの方に飛んで行った。


 2人っきりになった後、劉煌は、小枝を集めて火をつけた。


 薪の中の木の水分が火によって蒸発するパチパチという弾けるような音が鳴る中、劉煌は、李亮に呂磨で知り合った蔵家の当主の話をしはじめた。


「まったくゲリラが出てこなければ北盧国に反乱分子が無いと考えて、劉操はさらに北盧国への支配を強めるだろうし、また西域への侵攻を始めるだろう。だからこれ以上不毛な殺生を防ぐために、私の友人の蔵論(ゾゥロン)と密約をかわすんだ。ゲリラは時々各所で出没するが、お互い殺生は無しにして、難民は集団移動だと目につきやすいから、少しずつ目立たないように国境を渡らせるが見て見ぬふりをしろ。大丈夫だ。北盧国人なら蔵論(ゾゥロン)に従う。今となっては、彼が北盧国の唯一の希望の星なのだから。」


 そう劉煌が李亮を説得している時、ゾロンが鳥かごを持ったお陸に連れられてやってきた。

 ”さすが師匠。”


 劉煌はゾロンに羅天語で李亮を紹介した。


 ゾロンは、李亮が西乃国の軍師将軍で北盧国皇宮を占拠している人物であることを知ると、突然劉煌に食ってかかった。

「ドクトル・レン。正気なのか?我々の敵なんだぞ!」

「ゾロン、一見そう見えるかもしれないが勘違いしないでくれ。彼のことは、そうだな敵陣にいる味方と捉えてくれ。確かに表向き西乃国の重鎮だが、私の親友で、彼こそが北盧国皇宮を占拠して皇帝の座を乗っ取っていたカッチーニ会を潰した人物なんだ。その後彼も上から命じられたことに心を痛めている。ゲリラになる気持ちもわかるってね。」

「それで私にどうしろと?西乃国に屈しろとでも?」

「そういうつもりなら君に李亮を紹介しないよ。実は2人ともどうしたいのかが一致してるし、我々3人の敵も一致している。」

「我々3人の敵?」

「そうだ。我々全員の敵は、前にも言ったが、先帝を殺して西乃国を乗っ取り、漁夫の利で北盧国も乗っ取った劉操という奴だ。」


 そう言った劉煌からは激しい怒りがどす黒い渦となって、全身をまるで蜷局のように巻いているようにゾロンからは見えた。


 ”いったいドクトル・レンは何者なんだろう?”


 ゾロンは、今度は参語で李亮と話し始めた劉煌を見ながら、呂磨で北盧国の現状を知り、落ち込むばかりの彼の背中を押してくれた時から思っていた、この劉煌への疑念が再燃し、じっと劉煌を見つめた。


 お陸はそんなゾロンに珍しく優しく北盧国語で話しかけた。

「安心おし。お嬢ちゃんのことはあたしが保証する。それからお嬢ちゃんは、おっきいお兄ちゃんのことを親友って言ってるけど、おっきいお兄ちゃんの方はお嬢ちゃんのことを親友以上に思っている。お嬢ちゃんの言うことには絶対服従だから安心おし。」


 ”!?”

 ”西乃国の重鎮がドクトル・レンに絶対服従?しかもドクトル・レンは西乃国の皇帝が彼の敵だと言った。。。いったいどういうことだ?”


 お陸の説明でますます混乱してしまったゾロンは、ぼーっとしてそこに突っ立っていた。


 そんなゾロンに李亮は、うろ覚えのつたない羅天語で「一緒に戦いましょう。」と言って手を差し出した。


 それに驚いたのはゾロンではなく劉煌だった。「李亮、羅天語がわかるのか?」


 李亮が肩をすくめて答える。

「参謀本部にいた時勉強させられて。。。西域の武器商と会った時、紹介役より羅天語がうまかったから気に入られてカッチーニ会のシンボルをゲットできた。」


 劉煌は頷きながら今度はゾロンの両肩に手を置いて羅天語で語る。

「李亮が西乃国軍の警備の薄い地域を教えてくれるそうだ。西乃国軍に死傷者が出るとゲリラ狩りに発展して逆効果だから、ゲリラ達には過激になり過ぎないよう、あくまでも威嚇行為にしてすぐに撤退するように説得してくれ。1年前に呂磨でも宣言したが、2年以内に君の国が戻るように私も全力を尽くす。それまでゲリラにも難民にも希望を捨てず命をないがしろにしないように、君が北盧国の民を説得してくれ。これは君にしかできないことだ。」


 ゾロンはドクトル・レンがどうしてこんなに説得力があるのかわからなかったが、なぜか彼に従っていれば間違いないと、彼の本能は確信していた。


 ”これを本物のカリスマと言うのか......”


 いつの間にか真っ黒だった空が紺色に変わり、あたり全体が白んできた。


「そろそろお開きにしよう。李亮、また連絡する。夜が明けると基地の眠り薬の効果も切れるだろうからそれまでに君を送るよ。」


 劉煌は、伝書鳩の籠と李亮を担いで先ほどの西乃国国軍の基地の皆が倒れて寝ている所へ降り立った。彼は、伝書鳩の籠を李亮に渡すと、これでこれから連絡するようにと告げて、すぐにその場から立ち去り、お陸とゾロンと共に中ノ国にある蔵家が造った内緒の難民収容所に向かった。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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