念願のハーレムを手に入れたけど、誰も俺の事を好きじゃない
思い付き短編です。
「いいぜ、お前がハーレムを望むって言うなら、その幻想をぶち殺す!」的な内容です。
異世界ハーレム好きな方はご注意ください。
「はぁ……」
城の廊下を歩く足取りが重い。
俺は勇者としてこの異世界に召喚され、この世界を滅ぼそうとする魔王を倒した。
そして俺を召喚した国王に望みを言えって言われたから、男の夢としてハーレムを頼んだ。
そうしたら冒険した仲間を含め、美女揃いのハーレムになったんだけど……。
「ハーレムだなんて汚らわしい! 王様の命令だから仕方なく入るけど!」
仲間であった拳法家の言葉に打ちのめされ、
「……神よ、お許しください……」
僧侶の涙に胸を絞られ、
「国費で魔法の研究するためよ。まぁたまには義務は果たしてあげる」
魔法使いのドライさに膝を折った。
その他にも魔王討伐の道すがら、助けた町や国からも女の子が来たのだが……。
「……今話しかけないでもらえますか? 本を読むのに忙しいので」
本の虫で『王都の図書館が使えるなら』という理由で来た眼鏡っ娘は俺を無視するし……。
「猫族は本当に好きな相手以外には絶対に身体を許さないにゃ! それをゆめゆめ忘れるなにゃ!」
猫耳美少女は威嚇するし……。
「勇者様は状態異常にある程度耐性があるのよねぇ。じゃあお薬強めにしても良いかしらぁ?」
お色気たっぷりの薬師は怖い事言うし……。
「飯の保証をしてくれるなら何してもいいぞ! で、早速腹が減ったんだが!」
女戦士族の族長の娘は、多分色々わかってないし……。
極め付けはこの国のお姫様だ。
「勇者でなければ触れる事も許されない玉体……。その意味をよくお考えになってくださいませ」
国王の命令で嫌々という感じがありありと伝わる!
はぁ、こんなんじゃ命を賭けて魔王と戦うんじゃなかったなぁ……。
もういっそハーレムを捨てて、どこかの村で本当の愛を見つけた方がいいのかな……。
勇者は知らない。
このハーレムが、凄まじい競争率を勝ち抜いたガチ勢だけで構成されている事を……。
(カイタがハーレムを望むなんて……! 旅の中ではそんな素振りなかったのに……! でも何とかハーレムに入れたんだから、カイタの一番になってみせる……!)
(神よ……! 貴方よりもカイタ様を愛した事をお許しください……! そしてカイタ様のために、こ、子を成す行為を禁じた戒律を破る事をお許しください……!)
(『義務は果たしてあげる』ってやっぱりいやらしい感じだったかな!? でもその方がカイタの負担も少ないだろうし……。ま、毎日とかだと私壊れちゃうし……)
(勇者様に尽くすために、この男女の営みについての本を全て読破しないと……! え、う、うわ、こんな事もするの……!? ど、どんな感じなんだろう……)
(あ、あれだけしっかり言ったんだから、ボクが浮気を絶対しないってわかったはずにゃ! 猫族は気が多い、みたいな印象は打破しないといけないにゃ!)
(うふふ、この感度三千倍にする薬なら、勇者様の耐性があっても通じるはず……! そうすれば私が初めてでもきっと互角に、その、あれを、できるわぁ……!)
(一生飯の心配をさせない! それは女戦士族において夫の一番の甲斐性! つまり子どもを何人産んでも大丈夫! 勇者殿! 子を十は作ろうな!)
(あ、あそこまで言えば、私と、その、あれこれする事を特別と感じてくださいますよね……? 正妻だなんて烏滸がましい事は言いませんから、せめて……!)
この後に勇者が迎えるのは天国か地獄か。
それは誰にもわからない……。
読了ありがとうございます。
勇者が逃げるのが先か、ハーレムのデレが明らかになるのが先か……。
……勇者が逃げた後をハーレム総出で半狂乱になって追いかける様しか思い付かない?
ですよねー。
お楽しみいただけましたら幸いです。