1攫い いつも通りの監禁
この作品は今日中に全て投稿し終わる予定です。
突然だが、俺には幼なじみがいる。
「ユウ君!!帰ろ~」
「ああ。そうしようか」
俺、倉川由馬をユウ君と呼ぶ彼女。名前は宇田宇佐美。長い付き合いで、小学校から高校までずっと付き合いがある。
とはいえ、俺たちの関係はずっと幼なじみのまま。どちらもそれを超えようとはしない。
「今日、泊まっていける?」
「ああ。構わないぞ」
宇佐美、おれは昔からウサと呼んでいるが、彼女は俺に家へ泊まることができるか尋ねてきた。当然俺の答えはYES。2人でどこかに泊まることも、この長い間ずっとやっていることだ。
「お邪魔します」
「い、いらっしゃい。ごゆっくり」
ウサの家に入っていく俺たち。ウサの両親は家を空けていることが多く、今日は2人で泊まることになる。
俺はメッセージが返信できなくなるかもしれないという事共に、自分の親へ泊まることを伝えておく。いつものことなので、特に気にした様子もなく「了解」とだけ返事が来た。
「はい。じゃあ、ユウ君。これ飲んで」
リビングで待っていると、水が差し出される。これもいつもの流れだ。
俺はそれを見た後、
「これ、いつものだよな?」
「うん。そうだよ」
「じゃあ、先に色々すませて良いか?」
「う、うん」
俺は支度をして(宿題をしたりトイレに行ったり)、水を飲んだ。その後は軽い雑談をしているとだんだんと意識がもうろうとしてきて、……・思考が途切れる。
「……おやすみ」
遠くに聞こえるウサの声。
次に気付いたときには、
「……ん。ここも変わらず、か」
俺は辺りを見回して、普段と変わらないことを確認する。
普段と変わらない鎖。俺の手を後ろでつなぐ手錠。多少の余裕はあるが、ほぼ移動は不可能な足かせ。そして、無理に移動しようとは思わせないための首輪。
いつもと何ら変わりはない光景だ。
そして、俺の目の前にはこれもまたいつもと変わらず、
「お、おはよう。ユウ君」
「ああ。おはようウサ。俺、どれくらい寝てた?」
特にこの状況に対しては疑問を口にすることなく、時間をウサに問いかける。ウサは少し悩んだ素振りを見せて、左手の腕時計を確認した後、
「3時間くらいじゃじゃないかな?」
と、答えた。
これはいつもより少し長いかもしれない。普段は1時間半から2時間で起きるんだが。
そんな俺の心情をくみ取ったのか、ウサは申し訳なさげな顔をして、
「ご、ごめん。いつもより睡眠薬多く入れちゃったかも」
と、謝ってくる。俺から言わせてもらえば、その程度何ら問題はない。どうせこの鎖でつながれた状況においては、1時間や2時間などほとんど違いはない時間なのだから。
「御飯作ってるけど、食べる?」
「ああ。食べる」
ウサの問いかけに俺は素直に頷く。ウサは「ちょっと待ってて」とだけ言って、部屋を出て行った。その間に、俺はいつも通り部屋を見回す。
さて、こんな状況だから分かるが、俺は今監禁されている。ウサによって。
だが、こんなのはいつものことだ。俺はウサの家に来るたびに、ウサによって監禁されている。何が原因で俺を監禁しようと思ったのかは分からないが、ウサが監禁を好んでいるのは確かだ。
……何せ、小学生の時からこの監禁は続いているのだから。
「……で、できたよぉ」
俺が小学生の頃、初めて監禁されたときのことを思い出していると、料理が入ったトレーを持ったウサが部屋に入ってくる。
こんな姿も小学生の時と変わらない。あの頃のウサと重なって見えた。ただ、昔は緊張でトレーがガタガタ震えていたけどな。今もなぜかは分からないが緊張はしているようで微かに震えてはいるが、昔ほど震えも大きくない。
トレーを俺の前に置くウサは、それから食器に入っていた料理をすくって、
「あ、あ~ん」
俺へと差し出してくる。スプーンの下にこぼれたときのために手を差し出している当たりが慣れを感じさせた。
俺も、
「あ~ん」
いつも通りそれを食べる。
モグモグと咀嚼する俺を見て、ウサは不安そうな表情を浮かべていた。料理がおいしいかどうか不安だという表情なのは、俺も付き合いが長いから分かっている。
だからこそ、
「うん。また腕を上げたんじゃないか?2ヶ月前に食べたのも美味しかったけど、更に美味しくなってる」
「ほ、本当?……良かった」
ほっと息をつくウサ。
今回出された料理は、2ヶ月前に出されたものと同じものなのだ。そこに気付くことが大事だし、成長したと褒めることも大切。……じゃないと、ウサは病んでしまうからな。濁った虚ろな目でこちらを見つめてきて怖いんだ。
「……ふぅ。おいしかった」
「そ、そう言ってくれると嬉しいな」
食べ終わり、さりげなく褒めておくとウサは機嫌良さそうに笑う。それからウサは片付けのためにまた部屋を出た。
その間に俺は尿意を感じるが、トイレを探したりしないし、歩くこともない。……そのまま、垂れ流した。
俺は監禁させられるときに着替えさせられていて、下にはおむつをはかせられている。これも少しずつ監禁されたときに説得していって完成した形だ。
とはいえ最初はおむつにやるのは心が退けたが……今では何も思わない。これだけ長く監禁されると、プライドなんて言うのもなくなる。
……それから戻ってきたウサにそれの処理をしてもらった。更に時間が過ぎて眠気が襲ってくるタイミングで、
「……ユウ君。一緒に、寝よ?」