第六話「ユッケは一席2皿まで」
よし、予定通り起きれた。
開始まで走り込みだ、ぴょんと跳ねる!
水を1リットル飲んで体作りは完了。
今日も沢山戦って焼肉を食べるぞ!
「獣闘士ラヴィの今日の対戦カードは。
なんとこのコロシアムでは珍しい人間のヒート・ダモノです。
しかもただの人間じゃないぞ、いくつかの街を焼き払った極悪人。
この街以外立ち入る事の許されないお尋ね者だ!」
「お尋ね者なんてやっちまえー!」
「お前に掛けたぞ、ラヴィを倒せー!」
「接近戦で負けた事なんてないんだ。
獣人だって関係ねぇ! この炎にビビったら降参するんだな」
「ヒート・ダモノはファイターでありながら珍しくも魔法の使い手だ!
両手に炎を纏わせた、どうでる? 獣闘士ラヴィ」
「関係ないよ、蹴り倒すだけだからね!」
そうは言ったけど火傷はしたくないんだよな……。
僕が焼肉になってしまうのは避けたい。
燃えてない頭を狙おう!
脚力任せにジャンプして頭上から蹴りを食らわせた。
ヒート・ダモノは守るように両腕が動いたが僕の方が早い。
「きゃーラヴィ様ファイト―!」
「勝った方にキスを送るわー!」
「おっと!ラビィの踵落としが直撃だー!
ヒート・ダモノ、動かなくなりました」
「キスは私が送るのよ」
「私がよ、もう沢山送っちゃうわ」
美女達が僕に向かって沢山の投げキッスを送ってくれる。
その後の試合でも対戦相手を一撃で倒して賞金を貰った。
軽い運動のお陰でお腹が空いた、この後は当然焼肉だ!
炭火焼肉モウジュウ亭に行くぞ。
今日もチラミちゃんが居たけれど忙しいのか後ろ姿だけが見えた。
またスカートがめくれ上がってる、水色のフリルぱんつ……。
僕は何も見なかったことにしよう。
気を取り直して注文を決めなくちゃ。
本日のおススメは……ケルピーのユッケだって?
生肉提供! なんて攻めたメニューなんだ。
これは絶対に頼むべきだ。
「ケルピーのユッケと生ビールを1杯を下さい」
「ケルピーのユッケと生ビールですね!」
冷えたビールをまずは一口。
その次はユッケだ。
ごま油と醤油ベースの甘じょっぱいタレ。
トッピングはネギが散らされている。
真ん中には卵の黄身が乗っていた。
お肉の下には塩漬けの千切りのリンゴとキュウリ。
普通の馬肉と違いしっとりとしている。
タレがぴっとりとした独特なケルピーの肉に絡んで濃厚な味だった。
「ケルピーのユッケを10人前下さい」
「すみません、一席2皿までの限定商品なんです」
なんてことだ。
限定制限があるのか、思う存分食べたかったのに。
無いものは仕方ない、他の物を食べよう。
「じゃあケルピーのユッケ1人前。
それからテールスープと石焼きビビンバを下さい」
「ケルピーのユッケ1人前、テールスープと石焼きビビンバですね」
白濁としたテールスープ、尻尾のお肉はプルプルと柔らかく煮込まれていた。
スプーンですくう度にほぐれるお肉が最高だ。
残ったビールを飲み干して、ユッケを食べる。
石焼きビビンバはナムルが乗せられて、卵を崩して混ぜて頂く。
ゴマの風味にもやしの食感、少しお米に焦げが出来た場所が特に良い。
「牛ハラミを10人前、味噌、追加お願いします」
「牛ハラミを10人前、味噌ですね」
味噌だからちょっと焦げやすいけど。
ビビンバと一緒に食べると幸せだ。
サイドメニューが充実していて毎日でも飽きが来ない。
特製塩ラーメンも食べてみたいけどご飯ものは。
一品頼むだけでお腹が膨れてしまうのが難点だ。
「お会計11000Gでぇす」
お会計はチラミちゃんだった、今日も沢山食べたぞ。
ほろ酔い状態で寝床に戻るとオーナーが出迎えてくれた。
「お帰りラビィ君、今日の対戦相手なんだけどね。
ヒート・ダモノ君はあの後、警吏に連行されてったよ。
誰かに通報されちゃったみたいだねハハハ」
「余罪があったのかな、怖いな、もう安心ですねオーナー!」
「そうだねぇ」
本当はちょっぴり炎が怖かったけどこれで安心だ!
焼肉最高!