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立花美羽

遅くなりすみません・・・仕事などでなかなか書けない状態でした。いきなり美羽ちゃんの中学時代のお話です。ぼちぼち更新していきます。

「立花さん、ずっと好きでした!僕と付き合ってください!」


 今私に告白している男の子のことはよく知らない。サッカー部のキャプテンでイケメンと友達が話していたけど、ほとんど会話したこともない。


 「ごめんなさい。好きな人がいるから」


 こうして私はいつものように断る。もちろん申し訳ない気持ちはある。現に目の前の彼はこの世の終わりみたいな顔をしている。

 何も言わずそのまま立ち去ってくれる彼はきっと良い人なのだろう。本当は好きな人なんていないのに、諦めてもらうために嘘をついているのだから、深く言及されたときが面倒くさいのだ。

 高校入試も終わり中学生としての生活も残りわずかとなった今、以前にも増して私に告白してくる男の子は多い。

 

 周りの友達はどんどん彼氏を作って、惚気話をしてくるし、適当に付き合ってみればいいじゃんなどいい加減なことを言ってくる。

 

 極めつけは幼馴染の彼と付き合わないの?だ。


 ――――沢井健太

 彼のことは嫌いじゃない。幼い頃から家族ぐるみの付き合いがあって、それは今も続いている。

 それでも恋愛対象としてみたことがあるかと言われれば、よく分からない。

 幼い頃は、結婚しようねなんて言ったこともあったような無かったような……少なくとも唯一仲が良い異性ではあるけど、本当にそれだけだ。


 「美羽!待ってたよ。一緒に帰ろう」

 

 目元が前髪で隠れてる男の子が話しかけてきた。幼馴染の健太だ。


 「ごめんなさい。遅くなっちゃった」


 「全然いいよ。何か用事でもあったの?」


 「ううん。ちょっと友達と話してたの……ほら、早くいこ?」


 最近はよく一緒に帰ろうと誘われることが多くなった。

 別に断る理由もないし、家の方向も同じだからいいんだけど、こういう行動が周りに勘違いさせるんだろう。

 だからといって突き放すのも悪いし、時間が合うときはこうして一緒に帰っている。

 

 「もうすぐ卒業だけど、美羽と同じ高校だからなんだか安心するよ」

 「ほんと、凄い偶然よね。どこ受けるか教えてなかったのに」

 「う、うん……本当に行きたい高校に行くべきだって言って教えてくれなかったもんね」

 「教えたらついてくるでしょ?いつまでも私に頼ってないで友達作らないと……それにその前髪も何とかした方がいいわよ」

 

 おそらく健太は私の進路を親経由で聞いたのだろう。それを目の前の本人に言ったところで今更だし、幼馴染離れできない健太には呆れてしまうけど。

 

 「それじゃ、また学校でね」


 道路を挟んで私たちの家は真向いに位置している。昔はお互いの家によく遊び行ったけど、今では全くそんなことはなくなった。

 寂しいとかは思わない。むしろその逆。

 最近の健太は家に遊びに来ないかとよく誘ってくるけど、幼馴染とはいえさすがに異性の家にほいほい上がろうとは思えず断っている。



 


 

 中学も無事卒業して、高校の入学式の日に私たちの関係性は変わった。


 

 入学式も終わり、健太と帰ってる途中、公園に寄ろうと言ってきた健太の提案に従いベンチに座った。


 「どうしたの?」

 「いや……美羽って中学の頃からよく告白されてきたよな……」

 「それがどうしたの?」

 「俺気付いたんだ。自分から動かないと何も変わらない……美羽も同じ気持ちだと思うんだけど、男の俺が言わないといけないんだよな」

 

 何を言っているのか。

 いきなりすぎて話についていけないんだけど……お腹減った……。


 「美羽、好きだ。僕と付き合ってほしい」

 「……」

 

 もしかして……告白された……?

 確かに健太は一番仲の良い異性だ。でもそれは幼馴染としてだし、恋愛対象に見れるかと言われたら申し訳ないけど無理だ。

 健太とキスをする姿とか想像できないし。でも、周りで彼氏がいたことないのは私だけ……いつか好きになった人とお付き合いしたいと思うのは遅れてるのだろうか。


 「ごめんなさい。健太とは友達でいたいかな」

 「え!?待って待って……つまり付き合えないってこと……?」


 健太は断られると思ってなかったのか驚いた表情で私に迫ってくる。


 「ごめんね……?」

 「そんな……実は僕、家族に少し前から美羽と付き合ってるって言っちゃったんだよね……」

 「……はぁ!?なんでそんな嘘ついたの!?」

 「いつになったら美羽と付き合うんだって言われてついムキになっちゃって……」


 頭が痛くなってきた。


 「しょうがないわね……それなら家に帰った後でちゃんと説明することね」

 「いや……その……今日発表されたクラスで美羽のこと可愛いって言ってた男子にも、僕が彼氏だって言っちゃって……どうしよう」

 「……」


 どうしようなのはこっちよ。

 なんでこんなことに……ただでさえ友達を作るのが苦手な健太の嘘がバレれば高校生活は孤立してしまうだろう。

 幼馴染としては放っておけないし……。


 「それなら、付き合ってるフリをすればいい?」

 「えっいいの!?」

 「別に好きな人もいないし、男除けにもなるからいいわよ」

 「よかったー!美羽の彼氏として頑張るよ!」


 なんなのよコイツ……それに彼氏じゃないし……。

 


 

 この時の私は実質的には今までと関係は変わらないと思っていた。あくまで付き合ってるフリ。

 でもその考えは甘かった。どうしてこの時、断らなかったのか。

 私はおそらく人を見る目が無いのだろう……だって、長年付き合いのある幼馴染の性格にすら気付けなかったのだから。






 それから1年間は地獄だった。

 

 私と健太は周りから完全に付き合ってると思われていた。

 さすがにキスまでは許さなかったけど、手を繋いで下校は当たり前だった。

 既に私の両親にも健太と付き合ってることがバレていたし、やっと付き合ったか、お前らは学生結婚でもしそうだなとか言ってくる……。


 私と健太の家は家族ぐるみで付き合いがあり、親同士も仲が良い、私たちのことで盛り上がっている親たちに、実は嘘と言い難く……なんだか外堀を埋められている気はしていた。


「なぁ、美羽。毎朝部屋まで起こしにきてくれないか?」

「嫌よ……朝は少しでもゆっくりしていたいの」


 その時は断ったけど、後で親から「あんた健太くんのこと毎朝起こしに行くことになったんだって?仲いいわね~」などと言われてしまった。

 結局私は毎朝、いつもより少し早い時間に起きて健太の家のインターホンを押し、部屋まで起こしに行っている。


 


 


 「ねぇ、私たち別れたことにしない?変な別れ方しなければ大丈夫だと思うんだけど……」

 「またそんなこと言って、美羽は恥ずかしがり屋さんだね。僕の気を引くためにそういうこと言うのかな」


 以前にも付き合ってるフリはもう終わりにしようと言ったことがあったけど、いつもこうしてはぐらかされる。

 当初は好きでもない健太のためにあくまで付き合ってるフリだとお互い納得していたと思ったのに……今の健太は私が自分のことを好きだと信じて疑っていないのかしら。

 最近はやたらとボディタッチが多いし……大事な幼馴染と思っていたけど、今では下心が見え透いていて、以前の健太とはまるで違う。

 いや、私が気づかなっただけか。



 






  2年生に上がってのクラス替え、そこで私は健太と同じクラスになった。

 それだけでも倒れそうなくらい頭が痛くなったのに、クラス名簿にもう一人、鬼塚英二、という名前を見つけたときは最悪だった。


 「不登校になりたい気分ね」


 鬼塚英二、彼のことは噂でよく耳にしていたし、前のクラスでもよく話題にあがっていた。

 実際のところ噂が本当なのかは知らないけど、あの強面だと少し近寄りがたいし、何より今は日々の生活でのストレスで面倒ごとはなるべく避けたかった。


 

 まぁ、関わる事もない……この時はそう思っていた。


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