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隣人に溶かされる  作者: たんたん
3/8

3.やめどき

一年以上ぶりに更新しました。

結構書き溜めも作ったので、読んでいただけるとありがたいです。


「はあー…」

陰鬱な気持ちだった。

現在は、朝の10時。

昼からアルバイトがあるので、そろそろ準備をしなければならない時間帯だ。

昨日はアルバイトが無かったので、青井さんに謝罪した後、ネットサーフィンをしながら寝た。

中学校を卒業してからは、一人暮らしを始め、アルバイトで、なんとかこんな生活を続けている。

もっとも、どうしょうもなく仕事のできない僕は、いままでいくつかのアルバイト先を転々とし、現在、某牛丼チェーンで働いている。

ひどく人手不足な店は、僕のような人間でも必要らしく、一応半年ほどは、続けられている。

「どーせ、今日も怒られるんだろうなぁ」

行きたくないし、働きたくない。でも、生活を続けるためには、やるしかないのだ。

やるしかない。

そう自分に言い聞かせ、荷物を鞄に詰め始めた。



------------------



牛丼を置きに行く席を間違える。

「違う!こっち!」

パートで働いている主婦の大きな声。


トッピングを間違える。おそらく、7,8回目のミス。

「何回言ったらわかるんですか….」

大学生の先輩の心底うんざりしたような声。


僕は何回も謝る。

「す、す、すみません」

その声は小さい。




------------------


また、いつものように怒られた。

帰路を歩きながら、溜息をつく。

お昼時の牛丼チェーンは、戦場のように慌ただしく、殺伐とした状況になる。

僕だって、色々覚えようとか、考えて立ち回ろうとか、自分なりに頑張っているつもりだ。

でも、いざ仕事が始まると、情報が多すぎて、パニックになって、ミスを連発してしまう。


なんだか、情けない気持ちになってきて、涙ができそうになる。

でも、溢れそうな涙を、頑張ってこらえる。

泣いてしまうと、心が折れてしまう気がするからだ。

今日も、お酒を飲もう。

お酒は、嫌なこと忘れられるし、感情が解放できる感じが、心地良い。



もう日が沈み、あたりが暗くなったころ、自宅に到着した。

つまみになるようなものが家にないことを思い出した僕は、荷物だけを家に置いて、コンビニに行くために、エレベーターのボタンを押す。

スナック菓子を買おうか、好物のアメリカンドックを買おうか、あるいは、両方かってしまおうかと、うきうきとした気分で、エレベーターが来るのを待つ。


エレベーターから出てきたのは、新しい隣人の青井さんだった。


「こんばんは」

青井さんは、柔らかな笑みで、僕に挨拶をした。

透き通るような声だ。

「こっ、こんばんは」

僕は、どもりながらも、挨拶を返す。

目を見ようと思ったけれど、できなくて、うつむいてしまう。

青井さんは、僕の横をゆっくりと歩き去り、家の中に入っていった。


昨日のこともあり、挨拶しただけでも緊張した。

手汗が、止まらなくなっている。


「あ」

僕は、あることに気が付き、声が漏れ出た。

「そういや、お酒飲んじゃダメじゃん」

昨日は見逃してもらったが、今日騒ぐとどうなるかわからない。

僕は、お酒を飲むとおそらく自分が制御できないことを自覚していた。


お酒をやめるきっかけがなかったが、隣人の入居は、おそらく神様が僕に与えたきっかけなのだ。

つまり、今日からがやめ時だ。

そう自分に言い聞かせ、踵を返し、僕も家へと戻った。


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