1.依存
「くそがっ」
ゴール目前で妨害をくらい、最下位でゴールを迎えた僕は、イラついてコントローラーを床に叩きつけた。
「おもしろくないんだよ、このクソゲーム!!」
日に日に下がっていくランクポイントを見て思わず叫ぶ。
そして、その怒りのままに机の上のチューハイを飲み干す。
「はあー、うま」
ほんとに、お酒は美味しくて仕方がない。
ここずっと、お酒を飲まない日は無い。
特に、嫌なことがあった日はたくさん飲む。
今日は、バイトで行動が遅いって同じ部署のばばあに怒られた。
「あのくそばばあがっ!」
怒られたことを思い出すと、イライラが止まらなくなり、大声を出すと同時に、拳で机を殴りつける。
そしてまた、新しいチューハイを開けて、勢いよく飲む。
時計を見ると、深夜の3時になっていた。
寝る前にもう一回だけ、あのゲームをやってやろうと思い、投げつけたコントローラーを拾う。
イライラするゲームだが、勝利の時の快感を味わいたくて、惰性でやってしまうのだ。
今まで何回も投げつけてきたコントローラーは、かなりぼろぼろで、今回もボタンが外れかけていた。
上手くはめ直せば何とかなるので、おぼつかない手元でなんとか直そうと試みる。
なかなかうまくいかなくて、イライラしながら悪戦苦闘していると、
ピンポーンとインターホンが鳴った。
こんな深夜に一体なんだろうか。
イライラしている僕は、こんな時間にインターホンを鳴らす非常識者を説教してやるという気持ちで、フラフラとする足で玄関に向い、勢いよくドアを開く、
お酒で狭くなった視線の先には、長髪で細身の若い女が立っていた。
「今何時だと思っているんですか?暴れたり大声出さないでください。近所迷惑ですよ」
僕より身長の高い女は、冷たい目で僕を見下ろしながら、そう口にした。
イライラしている僕は、
「うるせえ!こんな時間にピンポンしてくんじゃねぇよ!」
と大声で言い返す。
「はぁ、あなたがうるさいから、こうやって注意しにきたんでしょう。酒臭いし、酔っ払ってるんですか?見た感じまだ成人してないように見えますけど」
女はため息をついて、相変わらず冷たい目でそう言ってくる。
事実、僕はまだお酒を飲んでいい年齢じゃない。
「うるせえ!お前には関係ないだろうが!」
「とにかく、静かにしてくれればいいんです。こんな時間に大声出すなんて迷惑なのくらいわからないんですかね」
「うるさい!うるさい!ばーか!!」
自身の非を認めたくないが、ろくな反論が思いつかないので、精一杯に言い返し、女を睨みつける。
女はまた深く溜息をつき、僕をゴミを見るような目で見たあとに、
「話が通じないみたいですね。もういいです。大家さんに相談させてもらいます。」
と冷淡な口調でそう言い残して、去っていく。
僕を見下してるみたいで、ムカつく女だ。
僕は女の背中を睨みつけながら、
「くそ女!ばーーーーーか!」
と言ってやったが、女はこちらを一瞥することなく隣の部屋に入っていった。
「.........あいつ、隣人かよ」
隣の部屋はずっと空き部屋だったはずだが、最近入居したのだろうか。
そんなことをイライラする頭で考えながら、僕も部屋に戻った。
「ムカつく、ムカつく」
くそ女にイライラしながら、缶に残っているチューハイを飲み干す。
眠気がマックスに来ていたので、今日はこれ以上ゲームはしないことにし、そのまま布団に寝転がる。
薄々、あの女の言っていたことの方が正しいんじゃないかとか思ってしまったが、ムカつくので認めたくない。
そんなことを思いながら、眠りに落ちていった。




