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5.ルモンド・メイルの回想〜戦場にて〜

人によっては気分を害すかもしれませんので、その際はバックして下さい。


「団長!第三部隊は生存者不明です! また魔法部隊が先程到着しましたが、未だ抑えきれません!」

「わかった。行け」

「ハッ」

「いや、待て」


あの禍々しい場所から少し離れた場所でルモンドは悩んでいた。だが、最近婚姻した若い部下の顔を見て決断をした。




***


ドドーン

バリバリッ


血と泥に染まった大地は、もはや何色か判別がつかない。


ゴロゴロ


「──安らかに眠れ」


転がってきたモノ、それは見開いたままの部下の顔。子供が産まれたと嬉しそうに言ってきた顔が浮かんだ。そのまぶたに触れた。


バリバリッ


「団長!随分余裕じゃないですか〜?」


シャートが放った雷で化け物が裂けていくのが肩越しに見えた。


「伝達はいったはず。お前はフライト家の後継ぎだ。退け」


彼の輝くような金の髪は、いまや泥と化け物の返り血でどす黒い。


「ククッ、年寄ばかりじゃあ無理でしょ? それにこんな激しいのって滅多にないだろうし?」

「シャート・フライト」


私の変化した気配にもヘラリと笑うこの男の目は爛々としていた。その瞳が一瞬、正気に戻る。


「若いのは退避させた。残ったのは希望者だ」


周囲を改めて見渡せば地獄絵図だった。嗅覚はすぐに麻痺した。


「来ないかな、聖女さん」


彼は近づいてきた一匹に炎の塊を飛ばしながらのんびり呟いた。


そんなモノはお伽噺に過ぎない。


もし、いるのなら。


今、このように仲間の千切れた体を踏みつけながら足を進める事などなかったはずだ。


「無理せず退避しろ」

「仰せのままに」


シャートは、まるでこの場が夜会のような礼をし、次には渦中へ身を投じた。


「きりがないな」


攻撃魔法は効くが、かなりの力を込めないと効果は薄い。せめて動きを止められたら。


ふと、空を見上げた。

勿論、瘴気により淀んだ薄暗い空しかない。

聖女でも何でもいい。


コレを消してくれるなら。



「……何だ?」


なんの前触れもなく、白く光る無数の放射状の光が脇を掠めて飛んでいく。


「治って!」


まだ年若い女性の声が背後から発せられた。細い声のはずだが、何故か戦場に強く響き渡る。


「戦って!」


放射状の光は、ただの光るものではなかった。抉れていた脇腹に熱を感じれば、肉が盛り上がり跡形もなく塞がった。


「生きて!」


振り向けば、そこには、まだ少女のような女性が流れる涙を拭うこともなく体中から治癒の光を放出させていた。







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