1.穏やかな日々のなかで
「今日も起きれなかった」
隣にあるベッドは綺麗に整っていて使用したのが分からないくらいだ。
「なんか寂しいって思うのは贅沢だよね」
結婚して約三ヶ月、旦那さんのルモンドさんとは最近会話をしていない。
仲は正直悪くないと思うけれど、彼は大人だしなぁ。職業柄顔に出さないのは得意だろうし。
「私は、私のできる事をしないと」
異世界でヒヨッコの私には何ができるのだろうかといまだ模索中だ。
***
「陛下、私は彼女を巻き込みたくないのですが」
「わかっている」
「ならば」
「だが、ここで断わればどうなる? 確かに些細な事だが小さな物事が積み重なればどうなるかお前も分かるだろう」
先程から彼は、この国の王に殺気に近いモノを出し続けていたが長い沈黙後、折れたのは彼だった。
「ならば、条件をつけさせて頂きます」
お互いがそれぞれの相違に深いため息をついたが、共通している事が一つだけある。
もう戦はこりごりだという思いだ。
「彼女には私から伝えさせて下さい」
「ああ。口外せぬよう強いておく」
礼をとり王から背を向けた彼は、もう、いつもの無表情に戻っていた。
***
「おはようございます。今日も良い天気ですね」
「チドリ様、おはようございます。今日は外で学びましょうか」
「はい。賛成です!」
「レイリアは、お菓子のほうが楽しみなのでしょう?」
「ジャスミンったら失礼ね。でも、この屋敷で出される料理とお菓子は格別よね」
相変わらずポンポンとはずむ会話に千鳥は笑顔になる。
この後、新たな変化が起こる事など彼女は全く気づいていなかった。