【アルビン】VSフェンリル④
「はじめ」
ブルエモンの冒険者ギルドは保護が厚すぎる。
個人の決闘に、一方がEランクってだけでソレナっていうギルド職員が出てきた。あいつは僕を嫌ってる。この町で僕を嫌ってないやつもいないけど。
嫌ってなくても、ただ、利用したいってそれだけで。
僕と相棒は、この味方のいない町に閉じ込められてる。
それにしても。
フェンは警戒しているようだけど。どう考えても、買い被り……。
みたことない武器だし、魔術がかかっている。でも、五つも使いこなせると思えない。実際に二つしか使ってないも同然。
三つは防御に使っているだけ。それも、なぜか上ががら空き。
人間がフェンに勝てるわけがない。一撃だって入れれるはずがない。
そんな、はずがない。
フェンが押されてる。
そんな、はずがない。
ケンゴの二つのみたことのない武器が、フェンを押してる。
この武器は、とても不思議だ。三本の棍棒が連結している。その連結部分からどんな角度にも棍棒が曲がる。
しかも、魔術で動いている。人が振るえば支点が固定されるが、それがない。
元から、その支点をわかりにくくするための武器なんだろう。繋がれてはいると言え、その三本の棍棒が自由自在に回ってフェンを襲ってる。
目を狙って繰り出された一端を避けたら、その鼻先にもう一端が迫る。と思ったら、全体がぐるりと回転して、フェンが後ろに飛び跳ねて避けた。
もう一つの武器が、着地しようとしたフェンの後ろ足に絡もうとした。フェンは前へ体重を乗せた。そのまま、方向をかえて後ろへ退く。
二つの武器はフェンとケンゴの間に入り込んで、フェンが彼へ飛びかかる道を塞ぐ。
フェンが、押されるはずがない。
「前出るな。危ない」
ソレナに肩を叩かれた。
いつの間にか、足が前に出ていた。
彼女に肩を叩かれる。その隙を与えた自分が恥ずかしかった。
彼女の得手は絞め技だ。肩も首も対して違いはない。
「しんじろ」
上から丸いのが降ってきた。
丸いのは、跳ねながら転がって行こうとした。
つい、そのテイマーがしていたように、拾って胸に抱く。
「……」
ソレナが息を呑んで、距離をとる。
どうしたの? これ、危ないの?
フェンとケンゴの動きが止まった。
「キーやんお前、手ェ出すんじゃねぇぞぉ!?」
ケンゴ……が、話してるはずなんだけど。戦いになったらちょっと性格が変わるタイプなのかな。
「はーい。あたりまえじゃん」
う、なんか、丸いのが振るえた。気持ち悪い。
「あ、ほら。アタシが預かっておく」
ソレナは両手だけをこちらに差し出しながら言う。
「いや……」
いざというときに何かの足しになるかもしれないし。
実際、ケンゴはこっちを気にしてる。多少でも彼の注意を引いて……。
ぎゅっと抱きしめたら、弾力が返ってきた。
この感触、ゼリーに似てる。
懐かしいなあ。あの頃は、楽しかった。
ぷにっと、指を押しつけた。
「おいしくないよ?」
ふふ。この丸いの意外と可愛いかも。




