【アルダ】平穏の闖入者
例の魔物が出た、と報告があったのは、ちょうど兵士たちの薄手になる昼を避けて、早くも私がパンを喉へ押し込んでいる最中だった。
なんとかパンと生唾を飲み込んだ。
都合の悪く、第十一部隊は町外部で要人警護の任についているため、今非番であるのは第二部隊と第六部隊である。しかし、街中の治安を朝から第十二部隊のみで守っているため、そろそろ動き出そうとする悪党がいるかもしれない。
ともかく。
昨晩から任についた我々第五部隊が解放されるのは当分先になりそうだった。
マジックキューブをはじめ、一切異変はない。それがより事態を混迷させていた。
警戒を続けるしかない我々に、ついに報告がきた。
表で光信号に気を払っていた第十部隊の兵士が駆け込んできた。
「アルマ隊長、例の魔物との接触地点、そこにまたやつが出ました」
出た、という言葉に引っかかる。
だが、ともかく、その疑問の解明よりも命じなければいけないことがあった。
「アントニオ、東門の業務を一時停止し、各員の安全を確保せよ」
「はっ。業務を停止し、安全確保にうつります」
頼もしい右腕はすぐに駆け出していった。
「タイラーに上からの観測と支援を」
「観測と支援、タイラー副隊長に伝令します」
事前に用意していた伝令役が走る。
「第十部隊の前衛を進展させよ。その後ろに第十部隊と第五部隊の魔術師を配置。ケル隊長の指示に従え」
「前衛を進展の後、魔術師を配置します。現地判断はケル隊長のものとします」
駆け込んできた兵士が、同じように駆け出していく。
一人になった臨時の対応本部で、私は一人、ため息をついた。
これで、終わってくれるといいのだが。




