一対の扉から
時同じくして、謎の神殿内、大広間の両端にある二つの扉がゆっくりと開く。
そこから入ってきたのは、先頭に全く同一の顔をした優男が一人ずつ。その後ろには、剣を持つ男率いる一組と、銃を持つ男率いる一組がいた。
「あ、アニキ……?」
「お前、ツルギか……?」
ツルギとマズルはほぼ同時に声をあげた。
「マジーナ? なんでアンタらがここに?」
「あたしたちだってわかんないわよ、バレ姉。逆にこっちが聞きたいくらいで……」
バレッタとマジーナも頭の整理をしつつ、駆け寄ってお互いの姿を確かめた。
「や、やぁワカバ君。また会えたね……」
「うん。もう会えなくなったら嫌だと思ってたよ、ハウさん」
ハウとワカバは照れくさそうに声をかけ合い、互いの手を握った。
「確かに神殿の中に入り、セタ君に続いて扉をくぐったはずだが……。クロマ君たちの世界の常識でも説明はつかないのかな?」
「空間転移の魔法などはありますが……。でも、そのような魔法が使われた気配は感じられませんでした、先生」
エールとクロマは状況を訝しみながらも、再会を喜び合った。
「……元気だったか? ジェシカ?」
「まーね。そっちも相変わらずみたいで」
他の面々に比べて素っ気ない挨拶を交わすジェシカとカサンドラ。ジェシカは挨拶が済むと、マジーナやクロマの元へと行ってしまった。
「つーか、一体何なんだお前……いや、お前らはよ?」
「そうそう。セタさんたち、もしかして双子なの?」
思い出したように、マズルとマジーナは問いかける。
「ふふ、私どもはご存知の通りのセタで御座いますよ」
「少しばかり特殊な力を使っていますがね。では、通常の姿に戻しましょうか」
二人のセタはハイタッチの要領で、互いの手と手を合わせた。すると、二人の身体は吸い込まれるように重なり、一人のセタだけが残された。
「うえっ? どどど、どういうことですか?」
目の前で起こったことが信じられないと言わんばかりに、ハウは丸くした目を擦った。
「私の能力『分身』とでも言いましょうか。身体を二つに分け、双方で見聞きしたものを共有することができます。スピルシティとハルトダム王国で仕事をしていたのも、実はこの力を使ってのことでして」
セタが話し終えると、得も言われぬ空気が漂う。
しばらくして、マズルはハッと我に返った。
「……それはわかったが、話をするってのはどうなった? 俺たちはそう聞いてここに来たはずだ」
「ご安心ください。もちろん、これから説明いたしますよ。こちらへおいでくださいませ」
セタは手招きし、広間奥の階段を上った。
それに倣い、十人も階段を上る。全員を確認したセタは、その先にある大きな扉に手をかざす。すると、扉は大きな音を立てながら開いた。
そこには、光輝く何かがあった。
否、それは確かに、人の形を成している。
「お話の前にご紹介をさせてください。こちらのお方は我が主"コスモ・ステラノバ"様であらせられます」
「はじめまして、人の仔たち。私こそ双の世界を創りし神、コスモです。早く、皆さんにお会いしたかったですよ」
セタの言う神、コスモは全員に頭を垂れて言った。




