合流編Ⅸ・前
『あの場所』、『異世界』、『皆が集まる所』等々、様々な呼ばれ方をする空間に、マズルとツルギたちは呼び出される。
今回で九度目となる招集に、全員は慣れすら感じていた。
「お疲れ様で御座います皆様。それでは此度は…」
「わかってるよ。魔獣退治、だろ?」
「早く済ませましょう。その方が、誰にとってもいい」
恭しく声をかけるセタ。それをマズルとツルギは遮り、戦いの場への案内を促す。
「はい、参りましょう」
セタは反応の速さに面食らいながらも、狭魔獣の元へと先導し始めた。
「なんというか、はりきってるね、ツルギ」
普段とは違う気力を感じ取ったのか、バレッタはマジーナに耳打ちした。
「うーん、そう言われればその通りなんだけど。ちょっと色々とあってね」
「色々と…。そうなんだね」
バレッタはそれ以上、その件に触れることはしなかった。
「最近どう? 元気だった?」
ワカバに話しかけるハウ。
「うん。元気。この前、大魔王の所に行ってきたんだ」
「だだ、大魔王の? すごい所だな、そっちの世界は…」
素直に驚くハウ。そこに、クロマが補足とばかりに口を挟む。
「ですが、大魔王とは戦わなかったんです。既にいなかったといいますか…」
「奇妙な話だね。確かにそちらの世界は我々の理解を遥かに超えているだろうが、しかしながら…」
「大魔王の城ってどんなだったッスか? 詳しく聞かせてよ、クロさん」
「は、はい。えーと…」
ジェシカは強引に割り込み、エールの話を遮る。
「ふっ…大変だな。そちらも」
カサンドラはエールの肩に手を置き、苦笑いして声をかけた。
「お気遣い痛みいるよ。貴女方と同じく、我々も大きな壁を乗り越えたと言っても過言ではなかったんだ」
「ほう、それは喜ばしい。その話も聞かせてくれないか?」
「もちろんだとも。あれは数日前のことでね………」
二つの世界の人間たちは互いに親睦を深め、いつからか気兼ねなく会話をすることが容易になっていた。
その様子を確認するセタは、満足気な笑みを浮かべていた。
開かれた巨大な扉を九度くぐり抜けた後、一行は狭魔獣たちと対峙する。
今回も相手は二匹だった。鋭い牙と爪を持つ虎の如き姿の魔獣と、鋼色の翼を生やした巨大な鶏の魔獣だった。
「『カトラス・タイガー』と『アイアン・トリス』という魔獣です。ご覧の通り今回も二体おりますので、どうぞご注意を…」
「言われなくてもわかるって。さて、行くぞ………。あっ、そういえば俺の銃は…」
マズルは背負った銃に手をやり、記憶を呼び覚ます。彼の銃は前回の戦いで破損し、それ以後使う機会もなかったため壊れたことを忘れかけていた。
「まだ言ってなかったね。なんとか直してみようとしたし、こういうのに詳しい所に持っていったんだけど、ダメだったよ…」
バレッタはマズルの背中をトントンと叩き、慰めるように言った。
「…仕方ねえな。心苦しいが、今回俺は戦いに不参加だ。よろしく頼む」
「ボクたちがサポートしますから、安心してくださいよ」
「そうそう。遠距離攻撃なら、あたしたちだっているんだもん」
「が、頑張ります。マズルさんの分まで」
「あちしもいるんだよ。忘れないでよね」
「ぼくは回復くらいしかできないけど、精一杯やります」
そう言うとハウたちは、鶏の魔獣の元へと向かう。
「アニキ、あっちの方は僕らが」
「この人数でかかれば、接近戦でも対処できるだろう」
「バレッタ殿も、こちらで戦うのか?」
「そうさせてもらうよ。アタシの魂のこもった拳は、鉄にだって負けないんだから」
ツルギたちは虎の魔獣に対峙した。
「人数的には、俺もあの虎野郎に付いた方がいいのか。足手まといにはならないようにしなきゃな…」
二手に分かれた後、戦力を減らした状態で戦いの火蓋が切って落とされた。




